第8話 カワラナイミライ
人の未来はなぜか決まっている。自分の知らない間にそれは来て、過ぎて、そうした中を生きていて、そして朽ちて死んでいくんだ。私はそんな世界を見ていても、救いたいとは思わない。神様は残酷な人だから、この世界は『平和』と言う偽りの概念で〈守られている〉。正確には〈閉じ込められている〉のだ。
「神様、貴方は私に何をして欲しいんだ?」
〜西側の階段。そこにはある噂がある。いつからそんな噂がされるようになったのか、それは誰も知らない。けれど、みんな知っている。4段目に立つ人影。その者は言う。
「どうか私の相談事を解決してください、史奈さん」
西側の階段にほど近い壁に一人の少女がもたれかかるように立っている。どうやら、その人影の話を聞こうとしているらしい。その少女の名前は幽ヶ岡 椎名。普通の人には見ることが抱かない〈幽霊〉という存在を見ることができる者。椎名はとある事情によりこの学校で噂されている『階段の史奈さん』のお手伝いをすることになった。これはそれの一環である。
「私は1ヶ月ほど前にここに転入してきました。だけど、友達ができません。前の学校でもそうでした。私はどうしたら良いのでしょうか?」
その人影は人間関係に悩んでいるようである。一通り言ってみたものの、階段は何も変わらない。変わったとすれば少し時間が進んだくらいだ。その人影は諦めたようにその場から去っていった。
少ししてから椎名は階段前へとおどり出る。
「ちょっとは反応ぐらいしてあげても良いのではないでしょうか…史奈さん?」
椎名は呆れたような表情を浮かべながら、『階段の史奈さん』に問いかける。その史奈さんはというと、階段の手すりの上に立って遊んでいる。まるで人の話を聞こうとしない。
「…だってさ、解決するのは椎名、君だからね」
そんな自己中な主張をされた椎名はため息をついて、何かを言おうとしたが諦めたように肩を落とす。
椎名は知っているのだ。
すでに死んでしまっていてこの世でもういない存在とされるこの存在は、生きている者の事などどうでもいいことを。何を言っても無駄なのは、言ってももう意味を持たないからだ。
「ところでどうするの?あの女の子」
史奈さんはフヨフヨしながらどうでも良さそうに質問する。
「……食堂でよく一人でご飯を食べている子だった。今日声をかけてみる」
「ふ〜ん……
上手くいくといいね」
階段の史奈さんは相談される 芥庭 深乱 @akutabamiran
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