第3話 "人魚"のお客様
朝ごはんを食べ終え、歯も磨き、顔も洗い、
服も着替えた僕達は、closed(閉店)の看板
をopened(開店)に変え、お客様が来るのを
待った。今の僕の服装はいつもの青ズボンに
牛皮ベルトに黒のシャツにお気に入りの
茶色ジャケットだ。ライアの方はゆったり
したフードつきのパーカーに緑のスカート、
頭には赤のヘアピンが二本、キレイな銀色の髪についている。うん、可愛い。彼女が僕の店に来た時にプレゼントした服だ。あの時の
彼女はボロ布を着たみすぼらしい姿で、当然
どこの不動産屋も彼女の姿を見て文無しだと
分かり、一つ残らず門前払いしたらしい。
どんなに良い土地があってもお金がなければ
住めない。そんな当たり前の事さえ
気づけないほど彼女は弱りきっていた。
そして最後にはうちの前で倒れていた。
なんとか癒者のお陰で一命をとりとめたが、
こんなに弱っても気にも止めなかった他の
不動産屋共を心の中で呪いつつ、彼女に
似合いそうな服を探した。今も彼女はその
服を大事に着ている。
♪カランカラン♪
おっと、昔の事を思い出していたら
お客様がいらっしゃった。
二人「「いらっしゃいませ!!
"スイト不動産"へ!!」」
今回のお客様は"人魚"だ。
名前は"ミスティー・フィンテール"、
女性。タイヤつきの巨大水槽に入り、
なぜか男性の半魚人をつれている。
ギョイトス「ドンモ。オラハ"ギョイトス"
ッテモンダ。オラハミスティーチャンノ
"オサナナジミ"ダ。ミスティーチャンハ
ニンゲンノコトバヲハナセナイ。デモ、
オラハハナセル。ダカラ、キタ。」
スイト「どのような物件をお探しで?」
ミスティーは水槽越しにギョイトスに
耳打ち(?)した。
ギョイトス「ミスティーチャン、コウ
イッテル。『貝の家が欲しい』。」
スミヤ「うーん、4番地の『貝の家』
ですか,,,あそこは大人気で価格が高騰して
いまして,,,。」
ギョイトスは僕の言葉を人魚語にして
ミスティーに伝えた。すると彼女は
ギョイトスに次の言葉を伝えた。
ギョイトス「『はい、わかっています。
何処の店も高くてとても手が出せる
ような代物ではありませんでした。でも
この店ならきっと見つかるかも
しれないと他の店の人から聞きました。』」
あ~、そんな事を言う奴は2ブロック離れた
店の"バレン"しかいないなと思いながら
言葉を続けた。(僕の学校のクラスメイト
だった奴。昔はよく冗談を言われたものだ)
スミヤ「そーですね~。やはり安いもの
だと古いものになりますけどそれでも
良いですか?」
ミスティーは少しショックを受けた顔を
した。最後の希望がついえたからだろうか。
ボソボソとゆう感じでギョイトスに言葉を
伝えた。
ギョイトス「『安いならそれでも
良いです。手持ちのお金が
少ないもので。』」
通訳するギョイトスの顔もなんだか落ち込んで見えた。あ~、ダメだ。また僕のお人好しが出てしまいそうだ。この"商売"という世界ではお人好しは生き残れない。でもお客様のニーズに応えるのが僕らの仕事だ。僕は決心し、ある一つの"提案"を告げた。
スミヤ「あ、あの、よろしければ、
"我々"が新品同様にリフォームして差し上げますよ。」
ミスティー、ギョイトス「「キョトン」」
ライア「キョトン」
ああ、言ってしまった。恐らくまたバレンに
からかわれるだろう。だが今はそんなことは
気にしていられない。目の前に困っている
お客がいれば救いの手をさしのべる。これも
商売だ。
ギョイトス「『良いんですか?本当に?』
オラモホントウカドウカキニナル。」
スミヤ「ええ!もちろん!
男に二言はありません!」
ライア「ちょっとー!?ココに女が
いるんですけどー!!」
ライアがズボンを
引っ張りながら小声で訴えた。
スミヤ「ではここに名前や住所、
その他個人情報をお願いします。」
防水の用紙を渡し、ギョイトスがそれを
水槽に入れた。
スミヤ「はい!手続きは以上です!では
また1デーイ(日)後にこの
場所に来て下さい!」
ギョイトス「『本当にありがとう
ございます!ではまた1デーイ後に
来ます!感謝してもしきれません!』
オラカラモカンシャスル。アリガトウ、
デハマタ。」
ギョイトスはお礼を言った後、ミスティーの
水槽を押して帰っていった。
二人が帰った後,,,,,
ライア「,,,,,良いんですか、店長さん?
勝手にリフォームなんか受け入れて。
他のお客が来たらどうするんです?」
スミヤ「今さらそんな事言っても
仕方ないだろ?それにウチはあんまり
お客さん来ないし。さあ、地主に許可
貰ってリフォームし行こう。」
ライア「は~い,,,ハァ,,,。」
箒、雑巾、ゴミ袋、その他諸々を大きな
バッグに入れ、看板を"出張中"に変え、僕達は自転車に乗った。(ライアはカゴに)
スミヤ「よし!出発!」
ライア「お~,,,。(テンション↓)」
俺は思いきりペダルをこぎ、町に
くり出した。そういえば自転車に乗るのは
久しぶりだ。頬をきり、髪をたびかせる風、
ペダルをこぎ、前に進む感覚、何もかも
久しぶりだ。これも「テンセイシャ」が
考えてくれた乗り物だ。とても快適なのに
13番地の住民は「町の雰囲気に合わない」と言って使っている人は少ない。こんな
素敵なものを考えてくれるなんて、一度で
良いから会ってみたいなぁ。
「テンセイシャ」。今は確か自分の城に
いるんだっけ。
しばらく自転車に乗っていると、
向こうから見知った顔が4つ近づいて来た。
???「おーい!スミヤ!ま~たそんなの
乗ってるのか?」
スミヤ「何だ『タイトス』。やけにご機嫌
じゃねーか。やっとマシな剣さばきが
出来るようになったのか?」
タイトス「ちげーよ!久しぶりにクエスト
クリアしたんだよ!」
???「まぁ、落とし物を探して来る
だけのクエストですけどねぇ~。」
タイトス「おい『ミーク』!
ばらすんじゃねーよ!」
ミーク「はいはぁ~い、すみませぇ~ん。」
???「おい、妹をせめるな。
そもそもなぜクエストの内容を隠す。」
???「そうよ!ミークちゃんが可哀想
じゃない!」
タイトス「『ケインズ』、『アステロイカ』。お前らもか,,,,,。(汗)」
4人の正体は落ちこぼれパーティ
「メニースピーシーズ」だった。
リーダーで"戦士"の『タイトス』、
狐獣人の"魔法使い"の『ミーク』、
ミークの兄で"射撃主"の『ケインズ』、
エルフの"騎士"『アステロイカ』。
4人共ステータス、性格に難があり、
ギルドではどれも他のパーティの残りカスの様なクエストばかりまわされる。
スミヤ「おい、仲間同士で
もめるのはよせ。」
ミーク「それでぇ~、お二人はこれから
何処へ行くんですかぁ~?」
ライア「4番地へ泳ぎに!」
スミヤ「はい嘘つかない。お客の新しい
家のリフォームに。」
タイトス「お前らがするのか?
なーるほど、お人好しのスミヤらしいや。」
スミヤ「お人好しは余計だ。そっちは?」
タイトス「金が貯まったから新しい武器を
買いにいくところだ。もっと軽い剣が
あると良いんだがな~。」
スミヤ「あると良いな。なんせお前、
非力だから。」
タイトス「そうそう、剣振り回すとすぐに
肩が痛くなってね,,,,,,って誰が
非力だー!!そっちこそ余計な事を!」
スミヤ「これでお互い様ってことで、
じゃあな~!」
ライア「さよ~なら~。」
タイトス「コラ~!待てー
スミヤ!ライア!」
怒るタイトスを尻目に再び自転車を
こぎ始め、4番地へ向かった。
~4番地~
ここは"プロスペリタース"で唯一海に面した場所だ。心地良い潮風の匂いやカモメと
ウミネコの鳴き声。キレイな景色に美味しい
海鮮料理に活気に溢れる人達。そういう訳で
ここの土地はとっても人気が高い。ここの
土地を売ることが出来ればしばらくは困ら
ないとも言われている。無事地主から
清掃許可をもらい、僕達はあの家に
向かっている途中だった。
???「おーいスミヤ!久しぶりだなぁ!」
急に後ろから声をかけられ、
反射的に後ろを振り返り
ブレーキをかける。
スミヤ「おー、"ネイレ"さん、
お久しぶりです。」
声をかけたのは4番地の不動産屋、
"ネイレ"さんだった。彼女は僕にとって
先輩にあたる。彼女はその美しさと活発な
性格のお陰で4番地の人気不動産屋になった
のである。彼女の燃える様な赤い髪に、褐色にやけた肌、ビキニの上からジャケットを
羽織りホットパンツを身につけた姿に、
まるで頼れる姉貴分の様なサバサバとした
性格に惚れるなと言われる方が無理だと
言われたこともあった。
ネイレ「お前、あのボロ屋に行くつもり
なんだろ~。」
スミヤ「えぇ!?な、何故それを?」
ネイレ「"バレン"の奴がな、タイトスから
聞いたらしくてな。貴重な
『ワープスフィア』まで使ってウチにしらせに来たんだよ。」
ぐぬぬ、バレンめ。憧れのネイレさんに
ばらした挙げ句高価な『ワープスフィア』
まで使って何気に"儲かってますアピール"
しやがって。
ネイレ「それで、あのボロ屋の事
なんだがな、何でわざわざあのボロ屋に
行くんだ、スミヤ。」
スミヤ「え、あ、はい!」
こめかみが痙攣するほど怒っているのが
ばれないように言葉を返す。
スミヤ「人魚の"ミスティー"さんが
『貝の家』をご希望でしたのですが、
生憎どこも高くてあの家しか無かったん
ですよ。」
ネイレ「え、お前あの家売ったのか!?」
スミヤ「あ、ハイ。何故そんなに驚くの
ですか?」
ネイレ「いや~、やっぱりあんなトコ
売るのはお前ぐらいだと思ってたんだよ
あたし!」
スミヤ「え、それってどういう,,,,,」
ネイレ「お前同じ不動産屋なら分かる
だろ!この"4番地"の土地が高い事!」
スミヤ「は、ハイ。」
ネイレ「そのせいでここの土地を売ろうと
する奴のほとんどは面の皮のはった
奴らだ。そういう奴はただただ儲ける事
しか頭にないから、あんな儲けにならない
ボロ屋には目もくれない。あたしもあまり
お金がないお客に勧めた事があるけど、
売る方が売る方なら買う方も買う方だ。
一目見た途端に急に怒りだして帰って
いったよ。掃除したりすればまだ住める
っていうのにな。だからな、お前みたいな
欲の無い"お人好し"ならきっと売って
くれるって思ったんだよ。」
スミヤ「ガーン、ね、ネイレさんまで,,,,,」
白目をむいて倒れる。
ライア「て、店長さん!」
ネイレ「す、スミヤ!?」
ポフッ
ん、なんだこれ。地面,,,な訳ないもんな。
こんなに柔らかいし。良い匂いだし。
じゃあこれって,,,
ネイレ「スミヤ!なあスミヤったら!
しっかりしろよ!」
上からネイレさんの声がする。すると
もしやコレは
そう、僕はネイレさんの胸に頭を乗せて
いたのだ。あの男なら誰もが一度はチラ見
しそうな彼女の胸にだ。どうやら彼女は
倒れる僕の体を支えてくれたようだが、
その時偶然にも僕の頭が胸に乗ってしまったようだ。しかし本人は全く気にするような
素振りを見せなかった。それどころじゃない
のか、単に彼女が鈍感なだけなのか。
そんな事を考えていたら、急に頭に強い衝撃
を受け、今度こそ本物の地面に倒れた。
ネイレ「ちょっ、ライアちゃん!?
そんなに強く叩いて大丈夫なのか!?」
ライア「良いんです!おバカな店長さん
にはこの方法がピッタリです!(怒)」
声を聞く限り叩いたのはライアのようだ。
危うく本当に気絶するところだった。
スミヤ「う~ん,,,,,」
いかにも今目を覚ましたかの様に、
割れたんじゃないかと思うぐらい痛い頭を
さすりながら立ち上がる。スゴく痛いが
もし手加減せずに殴られていたら今頃
僕の頭は棒で叩かれたウォメロ(スイカ)
みたいになっていただろうと思うとゾッと
する。
スミヤ「ん~。何かあったのか?」
ネイレ「ハ~、よかった~。気がついて。」
ライア「,,,,,何も覚えて
ないようですね。(怒)」
スミヤ「え?やっぱり何か
あったのか?(とぼけ)」
ネイレ「何もなさそうなら大丈夫だな!
さっ!早く行きなよ。こっちの道行けば
近道だからな。」
スミヤ「はい、そうします。
それではまた。」
ネイレ「おう!しっかりやってきな!」
ライア「さよ~なら~。」
ネイレさんと別れてしばらく自転車を
こいでいると、ライアが急に口を開いた。
ライア「あの~、店長さん?」
スミヤ「ん、どうしたんだライア?」
ライア「,,,なんだか,,,あの家に自分と同じ
様な『何か』を感じるんです,,,。」
彼女はボロボロで誰にも見向きもされない
貝の家と昔のみすぼらしい自分を
重ねあわせていた。
スミヤ「,,,,,そうだな。それじゃぁ、
これから見違えるくらいキレイに
しようか。
僕がライアにしてあげたみたいに。」
ライア「! は、ハイ‼店長さん!」
ライアと話して3ミヌートも経たない内に
目的地に到着した。例の貝の家は、写真で
見るよりも酷い有り様だった。屋根には
海鳥のフンだらけだったし、海藻は
巻き付くわ、フジツボはビッシリだわで
本来後ろに広がる海の様にキレイな青だったであろう壁もすっかり薄汚れてしまって
いる。恐らくあの写真は数年前に撮られた
写真だろう。写真の家はこんなに汚れては
いない。
スミヤ「写真も更新されない程ほっとかれていたのか,,,,,。」
そんな事を呟き、ブラシを手に取る。
ライアはハンマーとナイフで壁のフジツボを剥がしている。どのくらい時間がかかる
のかはわからないが、そんな事を気にする
間も無く外側の掃除は終わった。
スミヤ「よし、休憩したら
次は中の掃除だな!」
ライア「ハイ!」
弁当を食べた後、僕達は
ついに家の中に入った。
外側が汚れていれば当然内側も汚れていた。
海鳥のフンや羽、魚やカニの死骸が散乱し、悪臭を放つ。その匂いにつられて大量の
フナムシも集まっている。さっきドアを
開けた時全部逃げてしまったが。(ライアが
悲鳴をあげたのは言うまでもない。)
ひたすら箒でゴミを掃き、ブラシでこびり
ついた汚れを落とし、仕上げにライアが
水魔法で洗い流し、乾拭きをして終わった。
ライア「ハァ,,,ハァ,,,。
もう動けませ~ん。」
それもそのはず。気付くと外は暗くなり
始めていた。本来体力のあるドワーフ族
だが、彼女は育ちのせいか体力不足で
非力であった。
スミヤ「うん、僕も疲れたよ。すっかり
キレイになったしもう帰ろうか。」
ライア「ハ~イ、店長さん。」
僕はライアを抱き抱えて、
(まるでぬいぐるみの様だった。)
自転車のカゴにのせ、荷物をまとめて
自分も自転車に乗り、帰路についた。
スミヤ「ライア、寝ちゃダメ。
もうついたよ。」
ライア「ん~、やっとですかぁ~。」
帰る途中こっくりこっくりと頭を揺らし、
今にも寝そうだったライアを寝かさない
ようにしながら、やっとのことで
『スイト不動産』についた。
外はもう真っ暗だ。
スミヤ「眠いんだなライア。」
ライア「そんなの,,,見たら分かる,,,
じゃない,,,ですかぁ,,,。」
スミヤ「ご飯食べられるか?」
ライア「ん~、食べます,,,。」
料理する時間がないので簡単に作れる
『いんすたんと』のラーメンを作ること
にした。『どんぶり』に乾燥した麺を
入れ、お湯を入れるだけで完成。
僕達みたいな魔法が苦手だったり使えない
人達にとって『いんすたんと』はまさに魔法の様な食品だ。本当に『テンセイシャ』には
感謝してもしきれないなぁ。そうだ、
ライアのは大好物の具を乗せてあげよう。
スーコン(とうもろこし)の粒、
ボアボア(猪+蛇のモンスター)の薄切り肉、
そしてグリーオニー(ネギ)の輪切り。
"大好物"と言っているが、実は家の前で
倒れていた時に食べさせてあげたものだ。
スミヤ「おーい!ライア!
ラーメンできたぞ,,,って。」
僕がラーメンを運ぶと、そこにはテーブルに
突っ伏して寝ているライアがいた。
スミヤ「ハァ,,,しょうがないなあ。」
僕はラーメンを彼女の近くに置いた。
ラーメンの良い匂いがライアまで
漂ってきた。
ガバッ‼
ライア「クンクン、この匂いは
間違いなくラーメンですね!しかも
私の大好物がのってますね!」
ライアは匂いで飛び起きた。彼女を
起こす方法は一つじゃないのだ。
ライア「いただきまーす!
フ~、フ~、ズズズ~。」
スミヤ「おいおい、詰まらせるなよ。」
ライア「むぐぐっ、水、水、早く,,,。」
スミヤ「言わんこっちゃない!」
食べ終わった後に食器を洗っていると、
お風呂と歯磨きを済ませ青と緑のパジャマを
着て髪をポニーテールにしたライアが
お休みを言いに来た。
ライア「お休みなさ~い、店長さん。」
スミヤ「お休み、ライア。今日はゆっくり
休んでね。」
ライア「ハイ!あの~、
ところで店長さん?」
スミヤ「どうしたの、ライア?」
ライア「,,,あの家、気に入って貰えると
良いですね。」
スミヤ「そうだな、僕もそう思ってるよ。」
それを聞くと、ライアはニッコリと笑って
自室へと向かっていった。僕は最後の
洗い物を置いて、自分の寝る準備を始めた。
~次の日~
ライア「起きてください!店長さん!
ねえ!」
ん,,,今日は僕が起こされる番か。ライアが
こんなに早起きするなんて。
ライア「早く起きてください!
もう昨日のお客様が来てるんですよ!」
それを聞いて僕はベッドから跳ね起きた。
『トケイ』を見るといつも起きる時間を
オーバーしていた。ライアが早起き
した訳では無く、僕が寝過ごして
しまったようだ。急いで着替えて1階に
降りると,,,
誰もいない。
スミヤ「ライア,,,お前な~!!」
ライア「フッフッフ~。引っ掛かり
ましたね~。でも遅刻したのは
本当ですよ。」
そんな事を話していると、今度こそ本当に
ミスティーとギョイトスが来た。
ギョイトス「オハヨウゴザイマス。」
ミスティー ペコリ
スミヤ「おはようございます。
リフォームはうまくいきましたよ。」
ギョイトス「『見せてください。』」
スミヤ「どうぞ、リフォーム後の
写真です。」
僕は写真を二人に渡した。
二人共びっくりして目を見開いていた。
(見開くも何も二人共目を閉じれない
のだが。)
ギョイトス「スゴイ、スゴイ。
ホカノイエヲミテルミタイダ。」
感動した彼女は、巨大水槽からお金を
渡した。しかし僕は持ってみて分かった。
渡されたお金が値段よりも多いのだ。
スミヤ「あの,,,少しお代が多いよう
なのですが。」
ギョイトス「『それは、"リフォーム代"
です。少ないですが苦労して
集めました。』」
僕は少し考え、余分なお金を抜き、
ミスティーに返した。二人共またびっくり
した顔をした。少しの静寂が店の中を漂い、
それを切り裂く様に僕は言った。
スミヤ「失礼かもしれませんが、
リフォーム代は必要ありません。
お気持ちだけで結構です。お客様の幸せは
私達の幸せですから。それに、こちらが
勝手に提案したものですので。」
その時僕の左足に軽い痛みを感じた。
ライアが僕の左足を蹴ったのだ。
そしてヒソヒソと僕に話しかけた。
ライア「ちょっと店長さん!何カッコ
つけてんですか!ウチはただでさえ稼ぎが
少ないのに!」ヒソヒソ
スミヤ「カッコつけてるだって!?一番の
幸せはお客様の幸せ!こうでもしないと
ビジネスは出来ないの!」ヒソヒソ
ライア「でもでもぉ!」ヒソヒソ
僕達がヒソヒソ話していると、ギョイトスが
その特徴的な低音ボイスを響かせた。
ギョイトス「『ほ、本当にいらないの
ですか?他の店では何をするにもお金を
払わせられそうになりました。』」
ギョイトス「オラ、ニンゲンハ"ゴブリン"
ヨリカネニキタナイトオモッテタ。
デモ、スミヤサンハチガウ。」
二人共目に涙を浮かべながら僕達に何度も
お礼を言った。
その後、色々な手続きを受けてもらい、
ついにカギを渡す時が来た。
スミヤ「さあ、家のカギです。これを
受け取った瞬間からあの家はあなたの
ものです。」
ミスティーはギョイトスからまるでカギが
壊れやすい素材で出来ているかの如く慎重に
受け取り、大事そうに握った。
ギョイトス「セワニナッタ。ココマデ
ツクシテクレルニンゲンハハジメテダ。」
スミヤ「ハイ!ご来店ありがとう
ございました!二人共もお元気で!」
ライア「ありがとうございました!」
ギョイトスが巨大水槽を押して帰ろうとした
その時、ミスティーがギョイトスに
コッソリと話しかけた。するとギョイトスは
本日3回目のびっくり顔をした。しかし
今度は膝から崩れ落ちてしまった。
僕達は慌てて駆け寄る。
スミヤ「大丈夫ですか⁉ギョイトスさん!」
ギョイトス「ミ、ミスティーチャンガ、
『欲の無いスミヤさんに惚れちゃった』
ッテ,,,。」
スミヤ、ライア「「な、何イイィイイイ~~~~~~~~!!!!!!!!!」」
水槽の中ではミスティーが顔を赤くし、
両手を前に組んで尾びれを振り、艶めかしい
目つきで僕を見ていた。
ライア「こンの魚女!"私の"店長さんに
手を出すんじゃあない!」
スミヤ「待てライア!話をこじらせるな!
それとお前さりげなく"私の"って
言ったな!」
ギョイトス「オラ,,,モシカシテステラレタ
ノカ,,,オラタチチイサイコロカライッショ
ダッタノニ,,,。」
怒るドワーフ、巨大水槽の中で悲鳴をあげる
人魚、床へ涙をたらす半魚人、みなを
落ち着かせようとする人間。
こんなにカオスな状況でも、この世界
では日常茶飯事。今日も色んな種族が
笑い、泣き、喧嘩し、幸せを共にする。
僕はこの街に産まれてこれて本当に幸せ
だったと思う。僕達はこれからも家を
通じて皆を幸せにしていきたい。
それが"不動産屋"だ。
[キャラクター紹介その3]
・名前:タイトス
・種族:人間
・性別:男性
・身長:184㎝
・体重:72㎏(甲冑抜き)
・年齢:17才
・血液型:AB
・髪型:金髪 短髪
・目:赤
・誕生日:5月5日(牡牛座)
・武器:片手剣(非力なので命中率ほぼ0)
・性格:気に入った奴は誰でも"親友"と
呼ぶが、暑苦しいので本当の友達は片手で
数えられるぐらいしかいない。だが仲間思い
で約束を破るのが大嫌いで口も固いので
信用があつい。だから最年少なのに
チームリーダーなのである。
~あとがき~
どうも皆さんこんにちは。作者です。
私の小説、気に入ってもらえました
でしょうか。今までノートに小説を書いて
きましたが、スマホを使って小説を書くのは
始めてです。読みづらかったり
わかりづらかったところがあれば、
すみません。この小説は、僕が好きな
ほのぼのファンタジーものにしていこうと
思っています。これからも頑張っていきますのでご評価、コメントをお願い致します!
それでは、また!
異世界不動産~プロスペリタース13番地店~ @crustacean40
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