カジノちょっと

ちょっと君

第2話 カジノ誘致

アジアのN国では、カジノゲーム法案が国会を通過した。

これを受けて、主要大都市が参入に手をあげて、早速誘致作戦が全国的に展開。

首都に近いY市は、市長自らがカジノ誘致による経済的メリットなどを熱烈に説いて回る。


すると、市の港の業者代表が大反対を表明。「カジノは家庭崩壊をもたらすだけだ。命がけで阻止する。俺を殺すか、カジノ取りやめにするかのどちらかだ」と息まいた。

翌年、その代表は、急死してしまった。反対運動の急先鋒として、町中で猛暑の日に辻説法していた最中の事だった。 


数年後、Y市には、全国に先駆けてカジノがオープンした。

海外からの観光客らは、競ってカジノに駆け込む。いかにも、金持ちか、成金という風体だ。

負けても、生活には困らない連中に違いない。


一方、N国人らは、顔色が冴えない。

その一人に聞いてみた。

「ちょっと、つかの間の夢を見たかったが、結局すっちゃったンだ」と落ち込みきっている中年男性。

「ちょっとのつもりが、一度バカ勝ちしたもんだから、はまってしまった。ズルズルと通ううちに、ツキが回らず、それでもやめられずに、妻には愛想尽かされ、子供にもソッポ向かれ、ついに一家離散というわけさ」。 


◆最後に、『ちょっと君』にインタビューしてみた。

「昨日、某有名場外馬券売り場近くの二階の喫茶店から通行人を眺めていたが、同じような風体の中年男性らが、ゾロゾロとうつむきながら地下鉄駅に向かう。吸い込まれていくようにも見えた。

誰一人、晴れ晴れとした表情はしていない。彼らは、タスキがけのヨレヨレカバンから、スポーツ紙が顔を出している。一人ぐらい、上機嫌な人がいてもいいのに、、、そうか〜勝ってたら、地下鉄なんか乗らないで、さっとタクシーに乗って遊びに行ってるか〜アハハ」。


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カジノちょっと ちょっと君 @konpeki7

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