第十三章五節 未来

 その後、夕食や入浴などを全て済ませたシュランメルトとパトリツィアは、ベルリール城の部屋にいた。言わずもがな、シュランメルトにあてがわれた部屋である。


 そこで二人は、濃厚なキスをしていた。


「んちゅ、ちゅぅ……❤」

「ちゅっ、ぴちゅ……❤」


 パトリツィアは元より、シュランメルトは、自ら唇を積極的に重ねる。

 舌と舌とを絡め合わせたり解いたりして、二人は目の前の相手の熱を、存分に味わっていた。


「ぷはっ❤」


 やがて、どちらからともなく唇を離す。


「ねぇ、シュランメルト……❤」


 最初に切り出したのは、パトリツィアだった。


「何だ?」

「ボクの服、脱がしてほしいな……」


 シュランメルトはわずかに頷くと、パトリツィアの服に手を掛ける。


「んっ……❤ やっと、やっとボクの願いが……❤」

「ああ、今、叶えてやる」

「ありがと……❤ ちゃんと、ボクを大人にしてね……❤」

「もちろんだ」


 と、扉が開け放たれる。


「誰だ!?」

わたくしですわ、ゲルハルト。あら、お楽しみの真っ最中だったかしら?」

「ボクはまざってくれても構わないけどねー❤」

「なっ!?」


 意外過ぎるパトリツィアの提案を、シャインハイルは笑顔で承諾する。


「かしこまりました。では、今宵は三人でたっぷり……ふふふ❤」


 シャインハイルはドレスを脱ぎながら、部屋の灯りを落としたのであった。


     *


 翌朝。


「おはよう……いや、まだ寝ているな、シャインハイル、パトリツィア」


 シュランメルトはそっと、シャインハイルとパトリツィアの頭を撫で続ける。


「まったく、二人ともどうして、こんなに可愛い寝顔なんだ……? 普段の奔放さからは想像もつかんな」


 いまだ眠っているシャインハイルとパトリツィアを見て、シュランメルトは珍しく、イタズラ心が湧きだした。


(キスして起こしてみるか……。日頃からかわれた仕返しだ、まずはパトリツィアから)


 と、タイミング良くパトリツィアが寝返りを打った。


「ちゅっ」


 それに合わせ、シュランメルトが口づける。

 が、パトリツィアに起きる気配は無い。


「んん……❤」


 代わりに、パトリツィアは眠ったまま無意識に、シュランメルトに反応を返した。

 それを見たシュランメルトは、思わず生唾を飲み込む。


(まずいな。普段翻弄してくるパトリツィアがここまで可愛いと、逆襲したくなる……! それに、おれはパトリツィアに助けられたし、もしかしたら本気で好きなのかもしれん……!❤)


 と、パトリツィアはさらに寝言を呟いた。


「ねぇ、きて……?❤ シュランメルト……❤」

「ッ、もう我慢せんぞパトリツィア! おれを助けてくれたお前が、大好きだ!❤」

「ふえっ、シュランメルト? ひゃっ、だめっ、寝起きなのにぃっ……あぁん❤」


 シュランメルトは思うまま、パトリツィアに日頃のをした。

 途中で起きたシャインハイルも、存分に味わったのである。


---


「もぉ、ひどいよシュランメルトぉ……❤」

「ふふ、ゲルハルトったら……もう❤」


 それから三時間後。

 シャインハイルとパトリツィアはシュランメルトに軽く抗議しながら、服を着ていた。


「日頃さんざんもてあそばれたのだ、これくらい受け流せ」

「出来ないよぉ……気持ち良すぎて❤」

「たまにはわたくしがもてあそびたいですわ❤」


 三人は遅めの朝食を取りに、食堂へ向かった。


 それから朝食を終え、部屋に戻ると、パトリツィアがシュランメルトに尋ねる。


「ねぇ、シュランメルト」

「何だ?」

「これから、どうするの?」

「未来の話か……」


 シュランメルトはしばし考える。

 と、シャインハイルが何かを見つけた。


「シュランメルト。手紙がありますわ」

「手紙だと? 渡された覚えは無いが……」


 手紙を受け取り、すぐに開封して読む。

 そこには、このように書かれていた。


---


 シュランメルトへ


 Asrionアズリオンの研究をしたいので、都合の良い日に工房へ来てください。


 リラより


 追伸:貴方は私の立派な弟子です。これからも、よろしくお願いします。


---


「リラ……」


 手紙を読んだシュランメルトは、すぐに外へ向かう。


「どこ行くの?」

「決まっている。リラの工房だ!」

「決断、早いねー」

「当たり前だ! 他にもしたい事はいろいろあるが、まずは世話になった者への恩返しからだろう!」


 シュランメルトはまっすぐ正門まで向かい、パトリツィアもそれに続く。


---


 その様子を、一人残ったシャインハイルが見ていた。


「ふふっ、ゲルハルト。これからもよろしくお願いしますわね。わたくしの、大切な人として」


 飛び立つAsrionアズリオンを見ながら、シャインハイルはかすかにほほ笑んでいたのであった……。

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