(解説有)第十二章十一節 吐露

「以上だ。準備を整え、そして死力を尽くして戦え」


 アルフレイドは作戦会議を終えると、私室へと向かう。

 部屋の扉を閉め終えた途端、脱力した。


「ふう……。オティーリエが暴走した理由も、少しは分かるというものだな」


 そのままドアにもたれかかりそうになるのを何とかこらえ、ベッドで横になる。

 靴も脱ぐ気力すら、アルフレイドには無かった。


「貴方にしてはだらしがないですわね?」


 と、銀髪の女性が靴を脱がした。


「だらしなく……いや、力も抜きたくなるさ……。自ら決めたとはいえ、何人もの部下を死なせるのだから、やり切れんでな……」

「いよいよ……なのですね。ついに、決着を付ける時が……」

「ああ。あの子が私にもたらす死を以て、全てに終止符を打つ」

「1時間経ったら起こします。今は少しでも、体を休めてください」

「助かるな」


 アルフレイドは銀髪の女性の言葉に甘え、体を休めた。


     *


 1時間後。


「時間ですわ」

「ああ……。今起きた。む、この気配は……」


 アルフレイドが、周囲を見渡す。

 そこには、神殿騎士団全員が集まっていた。


「そうか、来てくれたのか」

「もちろんです。最後の最後まで、お供致します」

「助かる。だがな、この上頼みをするのは、無礼かもしれんが……」

「何でも、望むままに」


 ガレスベルに促されたアルフレイドは、自らの素直な心情を告げた。




「生きてくれ。生きて、あの子に仕えてくれ。それが、私からの最期の頼みだ」




「かしこまりました」


 騎士団員の全員が、一歩下がる。

 アルフレイドはベッドから立ち上がると、格納庫へと向かった。


     *


「私専用のBerfieldベルフィールドは用意出来ているか?」

「既に整っております」

「そうか。……これが最後の整備だな」

「そうですね。自分としては、まだまだ役に立ちたかったのですが」

「生きていれば、いずれ、心から望む誰かの役に立てる日は来る。くれぐれも命を大事にな」

「はい。軍に投降致します」

「良い心がけだ」


 整備士との対話を終えたアルフレイドは、自らの魔導騎士ベルムバンツェに搭乗し、起動させる。

 起動完了後、ただちに拡声機をオンにして、告げた。


「諸君! ……時は来た」


 間を置き、残った全員が意識を向くであろうタイミングを計るアルフレイド。

 4秒経ったのち、話を続けた。


「この“ヴォルフホイル”の存亡をかけた戦いは、今、起きた。しかし私は、もはや“ヴォルフホイル”の存続には興味がない。命が惜しければ、今からでも、軍の元へ向かって投降せよ。新たなる“ヴォルフホイル”設立を望むのであれば、私の“ヴォルフホイル”に別れを告げて新天地へ向かえ。それでも私の元で命を使うのであれば、最後まで引くな。これは最後の選択だ」


 アルフレイドの言葉への返答は無い。

 何分経っても、誰も何も、離脱するそぶりさえ見せなかった。


「あくまでも私の元に留まるを良しとするか。ならば最後まで、おのれにとって悔いの無きよう生きろ」


 その一言に呼応するかのように、他の魔導騎士ベルムバンツェ達が足音を響かせ、アルフレイドの後に続いた。

 アルフレイドは拡声機を切ると、呟いた。




「さあ、シュランメルト……いや、ゲルハルト。私を殺してみせろ。引き換えに、お前の記憶の全てを明かす」



       ――解説欄――



Berfieldベルフィールド(アルフレイド専用機)


 頭頂高:11.8m

  全高:12.5m

  重量:48.0t(装備重量)

装甲材質:Adimesアディメス結晶

 動力源:魔力/魔力増幅装置(補助動力)

 機体タイプ:指揮官機



〈概要〉


 朱色を基調とした機体(アルフレイドが塗装した)。

 魔力で稼働する。


 筋力量の増加や各種パーツの大幅改造により、通常のベルフィールドを軽く凌駕する力を有している。

 流石にシュヴァルツェスリッター・アズリオンには劣るものの、オラケルとなら互角に戦う事すら可能である。


 また、上記にとどまらず、ある加護を有しているため、総合性能はアルフレイドの技量と合わさって、神殿騎士団のAsrifelアズリフェルにも匹敵する。


 飛行可能。

 持続時間は、驚異の12時間。



〈武装・装備〉


●剣×1


 全長7.0m、刃渡り4.8mの剣。鞘は付いている。

 接近戦で用いる。


 実はつか以外は魔力の結晶体(Asrionアズリオンの大剣の刀身と同じ)。


●盾×1


 全高8.5m、全幅7.0m、装甲厚250mmの手持ち式の長方形盾。

 必要に応じ、装備(または投棄)出来る。

 ベルフィールド専用の規格。


 実は持ち手以外は魔力の結晶体(Asrionアズリオンの大盾の装甲と同じ)。


●現出装置×27


 機体のクリアパーツとして配置された、青紫色の宝石。通常の現出装置よりも遥かに強化されている。

 魔力増幅機能がある。


 機体内部に設定された魔術式により、

「遠距離攻撃用の光弾」

「防御用の障壁」

 の2つを使用可能になる。


●フリューゲ・ツヴァイ(アルフレイドカスタム)×4


 機体腰部と背面部にそれぞれ2基ずつ取り付けられた筒状の物体。

 増幅した魔力をここから噴射することによって、飛行可能である。

 最高速度は2,400km/時。

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