第十二章八節 打合

「済まない。待たせたな」

「話は終わりました。わたくしも、戦場いくさばへと参ります」


 シュランメルトとシャインハイルが詫びながら、グロスレーベ達の元へと戻る。

 それを見たグロスレーベは、安堵しながら続けた。


「かしこまりました。シャインハイル、御子みこ様をよく支えよ」

「もちろんですわ、お父様」


 一同が揃ったところで、グロスレーベが切り出す。


「今回は突入要員、並びに指揮官として、招へいした者がいる。入れ!」


 グロスレーベが促すと、二つの足音が響いた。


「失礼致します、陛下」

「失礼致します!」


 シュランメルトは、足音の主達の顔に見覚えがあった。


「アレス……それに、シュナイゼルか!」


 そう。

 シュランメルトとかつて一度は剣を交えた、二人であった。


「グロスレーベが呼んだのだろうが……何ゆえ、ここに?」

「それは私から説明しましょう。作戦の指揮官、及び王族の直掩ちょくえんのためでございます」

「王族……フィーレとシャインハイルか」


 シュナイゼルの性格からして、優先するのはフィーレである。その行動原理を、シュランメルトは把握していた。


「となると、シュナイゼルはやはり適任だろうな」

「ありがとうございます、御子みこ様」

「それはそれとして、作戦会議はどこで行うのだ?」


 話をグロスレーベに振り直す。回答はすぐに来た。


「私の私室で行います。重要な出来事ゆえ、誰にも立ち入れない場所でなくては」

「承知した」


 一向はグロスレーベの私室へ向かう運びとなった。


     *


 その後の作戦会議は、すんなりと終わった。

 概要としては以下の通りである。


---


 まず、先遣隊としてアレス率いる一般部隊が敵の数を減らす。

 次に、敵の減少によって開いた穴から、シュランメルト達が属する少数精鋭部隊が浸透し、拠点入り口へ向かう。

 拠点到着後は敵を発見次第撃滅しつつ(投降した場合は魔導騎士ベルムバンツェのみ壊す)、“将軍”ことアルフレイドを捜索。発見した場合は拘束、またはを行う(ただし、グロスレーベの請願により、「なるべく拘束する」事が告げられた)。

 アルフレイドの死亡または投降を以て作戦終了を宣言する。


---


 概要だけ見ればシンプルな作戦だが、敵は“ヴォルフホイル”の本拠地である。

「動員される魔導騎士ベルムバンツェは150台にも上るであろう」という言葉が、グロスレーベの口から伝えられた。


 そんな中、シュランメルトは、自身の記憶について思考していた。


(アルフレイド・リッテ・ゴットゼーゲン……。貴様は何者だ?)


 そうしている間に、グロスレーベより8時間の準備時間が与えられる。

 シュランメルトは作戦会議が終わるや否や、休息のために自室へ向かったのであった。

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