第十一章三節 夜明

 翌朝。

 シュランメルトはむくりと起きると、隣で眠っているシャインハイルに、布団を掛けた。


「冷え込むぞ。起きるまでそばにいるが、なるべく早く起きて服を着ろ」


 一度布団から出て、服を着るシュランメルト。

 上下キッチリ着終えると、シャインハイルの隣で、再び横になった。


「貴女の寝顔は可愛いものだな……。普段も穏やかで可愛いが、それとはまた別の可愛さがある。ふふ」


 シュランメルトはそっと、シャインハイルの頭を撫でる。


「んっ……」


 と、シャインハイルの目が覚めた。


「起こしてしまったか……。おはよう、シャインハイル」

「おはようございます、シュランメルト。早起きですのね」

「ああ」


 軽く談笑する二人。

 不意に、シャインハイルがシュランメルトに頼み込む。


「シュランメルト。お願いがあります」

「何だ?」

「それは……チュッ❤」

「んっ」


 不意打ちのキスだ。

 しかし、もうシュランメルトは恐れたり、拒絶したりしない。

 何故なら、最早キスの段階では済まないコトをしていたからである。


「……ぷはぁ。ごちそうさまでしたわ、シュランメルト」

「朝食の代わりか。まあいい。こちらこそ、ごちそうさま、だ」

「うふふ」


 こうして、朝のキスを終えた二人。

 シュランメルトはシャインハイルがドレスを整えるのを待ってから、一緒に食堂へと向かったのであった。


     *


「おっはよー、シュランメルトー。昨日の夜はー、散々楽しんでたみたいだねー? ふふふ」


 食堂に到着して早々、パトリツィアが凄まじい爆弾発言を飛ばしてきた。


「…………」

「あぅ……」


 シュランメルトはAdimesアディメス結晶の如く固まり、シャインハイルは真っ赤に染まった顔に両手を当ててうつむいていた。


 それを聞いたグロスレーベは、ホクホク顔である。


「そうか、シャインハイル……。お前は御子みこ様と、ついに……!」

「やめろグロスレーベ!」


 シュランメルトは恥ずかしさのあまり、脊髄反射でグロスレーベに怒鳴る。

 が、直後に「おっと、すまん……」と謝った。


「いえいえ、御子みこ様。私もつい、調子に乗り過ぎました」

「けど~、分かるよグロスレーベ~? 愛娘が大好きな男の子と結ばれたら、しかもそれが親公認の仲だったら、喜んで当然だよね~」


 パトリツィアはからかうように、けれど本心では喜んで、二人を祝福していた。


「さーて、ボクは一足先にいただくかなー」


 そしてニヤニヤ笑いながら、食事を始めたのである。


「ならば、おれ達も頂くか」

「そうしましょう……ふえぇ……」


 この後、シュランメルトとシャインハイルは、いつもの半分の速度で食事をしたのであった。


     *


「ごちそうさまでした」


 シュランメルト達が食事を終える。

 それと同時に、シャインハイルが切り出した。


「シュランメルト。今日はずっと、一緒にいてくださいますか?」

「ああ。貴女からの頼みであれば、是非もない」


 二人きりで、楽しく過ごす約束である。

 それを見ていたパトリツィアは、二人に聞こえないように言った。


「あっついねー、アッツアツだねー。だからこそ、ボクも応援してた甲斐があるんだけどさ。それでも、シュランメルトと一緒にいられるってのは、すんごい羨ましいかなー」


 二人はパトリツィアをはじめとした他の者に一切構わず、シャインハイルの部屋へと向かったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る