第十章三節 撃退
「消えなさい!」
リラの叫びと同時に、
20を上回る数を誇るそれは、現れるのとほぼ同時に、
「かなりの数ですね……。大丈夫ですか、フィーレ姫、グスタフ?」
「大丈夫ですわ、師匠」
フィーレの
「僕も大丈夫です!」
グスタフの
「これで、だいぶ仕留めたはずですけど……」
「グスタフ、後ろですわ!」
「えっ!?」
乱戦の外にいた1台の
装甲の薄い
「戻って正解だったな」
「大丈夫か、グスタフ?」
「お兄さん……」
その光景に、グスタフ……いや、リラやフィーレも、そして敵達すらも呆然としていた。
熱にすらも通常の金属を上回る耐性を誇る
「まだ続けるか?」
襲撃者達の動揺を感じ取ったシュランメルトは、拡声機を起動して呼び掛ける。
「これ以上
「『みんなまとめて殺す』って意味だからー、さっさと逃げとくのがいいよー?」
パトリツィアの一言を聞いて、襲撃者達に動きが起きる。
大半が、この場から離脱しようとしていた。
「そうだ。素直に逃げれば、何もしない」
と、どこかから光球が、
シュランメルトは慌てず、光球を大盾で防ぐ。
「その行動、『殺してくれ』と受け取ろう」
光球を放ったのは、残った
いや、それだけではない。
「意地でも屋敷を壊す気か……?」
遠くに、1台だけ、水色の遠距離攻撃用機体――
先ほどまで、散々屋敷を攻撃した
「承知した。ならば
自身に眠る怒りをあらわにしたシュランメルトは、
「目障りだ」
それよりも早く、
と、
しかし、堅牢な
「不愉快なものだな。よくもリラの屋敷を……」
「無駄だ」
「捉えたぞ」
全てが弾かれ、
「さらばだ」
構えた剣ごと、水色の機体が両断される。
そして、上半身がゆっくりと、胸部を滑り落ち――大地と接吻した。
「パトリツィア」
「なに?」
「リラの屋敷を襲った
「多分ね。もう攻撃してくる様子は見えない。近くでこっそり隠れてるヤツには気を付けるけど、そもそもそーゆー気配も感じられないし」
「承知した。その言葉、信じよう」
「ボクがシュランメルトにウソつくワケ、ないでしょ」
「そう言えば、そうだったな」
かくして、その場の残敵を排除し終えた
---
「ひとまずは終わった。しかしどうなるか分からん以上、
「承知しました、シュランメルト。私も手伝いましょう」
「いいのか、リラ?」
「ええ。その前に……」
「フィーレ姫、グスタフ。貴方達は、お眠りなさい」
『師匠!?』
『ええっ、何で!?』
即座に抗議が飛んでくる。
が、リラは涼しい顔で返した。
「貴方達は、よく頑張ってくれました。ここからは、私達が請け負います。それに」
一度言葉を切り、たっぷり息を吸ってから、リラが続ける。
「寝る子は育つ。貴方達は、まだまだ大きくなる存在です。既に成長期を終えた私とは違って」
その言葉を聞いたフィーレとグスタフが、納得した表情を浮かべる。
『分かりました、師匠。では、お先に失礼いたします』
『おやすみ、ししょー、お兄さん!』
そして、
「では、警戒を始める」
「ええ。しっかり見張っておきます」
こうして、屋敷の見張りが始まったのである。
*
その頃。
ベルリール城の一室では、シャインハイルが寝息を立てて眠っていた。
「すぅ、すぅ……」
そこに、人影が一つ現れる。
影は針金らしきものを取り出すと、窓の鍵を開け、部屋に侵入した。
「姫殿下、お許しください。これも我が息子の、記憶の為です」
影はシャインハイルを静かに抱えると、そのままどこかへと連れ去っていった……。
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