第九章二節 拠点
ガレスベルの案内を受けた一行は、ベルグレイアへと向かっていた。
正確には、“ベルリール城より少し北”へ、である。
「ベルリール城が目的地では無いが……。近い、な?」
シュランメルトが、ぽつりと呟く。
それを聞いたパトリツィアが、シュランメルトに呼び掛けた。
「ねーねー、シュランメルト」
「何だ?」
「ボクさー……。どこに行くか、心当たりがあるよ?」
「何っ!?」
驚愕するシュランメルトをよそに、パトリツィアが続ける。
「多分ねー、その時にキミが
「“
「そーそー。それに“神殿騎士団”だからさー、どこ行くかは簡単に分かるよねー」
「そうか、
「せいかーい」
シュランメルトの言葉を聞いて、パトリツィアがパチパチと拍手する。
「そーゆーワケだからー、もう一回
「“眠る”と聞いたが……」
「息子のキミが来たら飛び起きる……と、思うよー?」
「それでいいのか、
シュランメルトが嘆息する。
まさか
「おっと、そろそろかなー?」
と、パトリツィアが前を指さす。
そこにはベルリール城の裏手にある、ささやかな高さの山があった。
一拍遅れて、ガレスベルの声が響く。
「間もなく到着致します。ご準備を」
「はーい!」
「承知した」
程なくして、山のふもとにある平原へと、4台の
「こちらです」
ガレスベルの搭乗した
と、
「ここに証を立てる。我らが正しき盾である事、しかと見届けよ」
わずかな時間ののち、うろから轟音が響き渡る。
シュランメルトは
「開きました。御子様、ご案内致します」
「承知した。後は任せるぞ」
そして
直後に轟音が響き、入り口が閉じられたのであった。
*
「こちらが格納庫でございます」
「承知した。遠慮なく使わせてもらおう」
すると、サリールとアサギが
そして透き通った声で、サリールが呼びかける。
「オティーリエ。少々手荒ですが、連行させていただきます」
「ちょっとだけ我慢してね? オティーリエ」
外部からの操作――
そののち、オティーリエが両手を上げて降りてきた。
「……処分は、覚悟しています。何なりと」
「では、遠慮なく拘束させてもらいます。ご安心を、後できっちり外しますので」
サリールがオティーリエの腕を取ると、何かを手首に取り付けた。
ヒンジを中心に展開した手錠が、オティーリエの左手首に、そして右手首に掛けられる。
「手錠です。手に持った経験がある以上どのようなものかはご存知のはずですが、まさか外せるなどとはお思いにならぬように」
「はい」
後ろ手に拘束されたオティーリエを連れて、サリールとアサギがガレスベルの元へと向かう。
「団長、連れて参りました。御子様と“変わり身”様も、こちらに」
「うむ、よくやった。では御子様に“変わり身”様、ただいまより拠点の内部をご案内致します」
「頼むぞ。
「もちろんでございます、御子様」
ガレスベルがサリールとアサギに向き直り、短い言葉で命令する。
「サリール、アサギ。お前達は先に、オティーリエを反省房に連れていけ」
「かしこまりました。行きましょう、オティーリエ」
「はい、副団長……」
そして、3人がシュランメルト達から離れていく。
それを見届けたガレスベルは、シュランメルトとパトリツィアに向き直った。
「では、我らが守護神である
(そうか、再び……か。
かくして、ガレスベルは、そしてシュランメルトとパトリツィアは、
---
3人が歩いて数分。
青色の巨大な
「我ら神殿騎士団、ただいま帰還して参りました」
しかし、シュランメルトにだけは別であった。
『お帰りなさい、シュランメルト』
「ぐっ……ああ、ただいま」
シュランメルトが突然話し出したのを聞いて、ガレスベルが振り向く。
しかし“変わり身”のパトリツィアは、微動だにしていなかった。
「ふーん……。シュランメルトにだけは話せるんだ、
パトリツィアはそう短く呟くと、シュランメルトと
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