(解説有)第八章四節 脱走

「済まない。少々手間取った」


 無事に収監房から脱出したオティーリエは、待機していた部下達を連れて郊外の森まで駆ける。

 いかに深夜とはいえ、遠からず捜査網が敷かれるベルグレイアには、もう留まっている意味は無かった。


「行くぞ。郊外の森までの辛抱だ、走れ!」


 そしてオティーリエ達は、森へと向かった。


---


「ここまで逃げれば、もう安心だな」


 深夜という事もあり、一部の繁華街を除いてほとんど無人と化していたベルグレイアを抜け出すのは、彼女たち4人にとっては容易な事であった。

 郊外の森に辿り着き、少々の獣道を分け入れば、目的のものが彼女を待ち受ける。


「待たせたな。“Asrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガ”」


 Asrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガ

 そう呼ばれた山吹色の魔導騎士ベルムバンツェは片膝を地に着け、主であるオティーリエをずっと待ち構えていたのだ。


「お前達、私はこの子を起動させる。起動したら手の上に乗れ」

「「はい!」」


 部下の返事を待ってから、オティーリエは胸部の操縦席に飛び乗った。


「一つ、働いてもらうぞ。Asrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガ


 そして剣の柄から、ピスに似た小さな金属棒を取り出す。

 それを操縦席のすぐ前にある装置の穴に差し込むと、Asrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガの目元が光った。

 少しして、胸部の装甲が閉じる。そして腕を動かしたAsrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガは、三人の部下達を自らの手のひらの上に乗せた。


「出すぞ。掴まっていろ!」


 拡声機より発せられたその言葉と同時に、Asrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガが飛翔した。




 それから30分後。

 Asrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガはシュレーネの街の郊外に、その身を大地に立たせていた。

 片膝を地面に着け、部下達を乗せた右の手のひらを降ろす。


「ここまでくればもう安全だ。行け!」


 やっとの思いで、オティーリエは部下達を逃がす事に成功したのである。

 そして自らも何食わぬ顔で、機体を格納しようとしたとき――


「動くな」

「何っ!? ッ、貴様は漆黒の……!」




 大剣と大盾を構えたAsrionアズリオンが、Asrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガの目の前に立ちふさがっていたのであった。



       ――解説欄――



Asrifelアズリフェル・_Gelbelgaゲルベルガ


 頭頂高:13.2m

  全高:14.5m

  重量:60.3t(装備重量)

装甲材質:古代の特殊金属(駆動系にはAdimesアディメス結晶を併用)

 動力源:魔力/魔力増幅装置(補助動力)

 機体タイプ:少数生産機



〈概要〉


 “神殿騎士団”に所属する者が搭乗する専用機。

 山吹色を基調とした機体。


 魔力で稼働する。

 搭乗時には“認証鍵”と呼ばれる、特殊な鍵を差し込む必要がある。


 本機はある機体をスペックダウンしたものである(外見も元の機体に準じている)。

 しかし性能は依然として、グローリア・フォン・ベルグリーズを軽々と上回っている。


 飛行可能。

 持続時間は72時間程度。



〈武装・装備〉


●アズリフェル・シュヴェルト×2


 全長3mの剣のつか

 使用時には魔力を結晶化した刀身(全長12.0m)とY字状の護拳(下の棒が刀身と並行な状態である)を形成する。


 この“魔力の結晶体”には、二つの特徴がある。

 一つ、Adimesアディメス結晶とは別物である事。

 一つ、Adimesアディメス結晶を上回る硬度(最も硬い状態となったAdimesアディメス結晶すら上回る)および剛性、そして靭性を有する事。


 普段は一振りのみ用いる。


●アズリフェル・シルト×2


 対角線が2.5mのひし形の盾。

 使用時には魔力を結晶化し、防御範囲を延長する。


 普段は前腕部に副腕で固定されているが、使用時には取り外して用いる。


 全長10m、全幅5mのたこ型になる。


 結晶体の高硬度により、盾による打突はもちろん、斬撃、刺突にも転用可能。


●アズリフェル・フリューゲ×5


 機体背部に1基、腰部に2基、後ろふくらはぎに2基取り付けられた筒状の物体。

 増幅した魔力を噴射することにより、飛行可能である。

 最高速度は3,000km/時。




 この他にも装備があるのだが、現状詳細は不明である。

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