第六章十節 襲来
2台の
「はあぁっ!」
「せやあっ!」
シュランメルトとシュナイゼルが掛け声を上げると同時に、2台が凄まじい音を響かせて激突した。
2台とも、微動だにしない。
しばしの間を置いて、ゆっくりと離れた。
「何ッ!?」
ズシィンという音を響かせ、大盾を取り落とす。
「しまった、盾を……ッ!」
シュナイゼルは覚悟を決める。
大盾を取り落とすという明確な隙を見せた以上、半分とはいえ切り裂いてみせた
その、はずだった。
「むっ?」
何故か
それどころか、大剣の刀身を霧散させ、
「何だ、何が目的で……」
と、
同時に、シュランメルトの声が響いた。
「その盾を拾え。お前が盾を拾った瞬間、
「何でしょうか、それは?」
「
シュナイゼルは、シュランメルトの思考を、真意を理解出来ていない。
それゆえ、呆けた顔で固まっていたのである。
が、シュランメルトは依然として、攻撃の代わりに言葉をかけ続けた。
「お前の盾は、その程度で捨てられる程度の、軽いものだと言うのか?」
「何です、先程から何を……」
「落とした盾を拾うんだ、シュナイゼルッ!」
ついに、シュランメルトが怒鳴りだした。
シュナイゼルは理解が追いつかないながらも、何とか
「それで
シュランメルトは満足そうに、そう呟いたのである。
---
「ねーねー」
「あんな硬い盾をわざわざ拾わせるなんてさー……。シュランメルト、どんな目的でそうさせたの?」
パトリツィアの疑問も道理である。
わざわざ敵に態勢を整えさせるのは、理解に苦しんだ。
「目的、か」
しかしシュランメルトには、自分なりの考えがあった。
「シュナイゼルの誇りであるあの大盾を両断すれば、奴も戦意を喪失するだろうな」
それを聞いたパトリツィアは一転して、意地の悪い笑みを浮かべる。
「ふーん……。シュランメルト、キミも存外、えげつない考えを持つんだねー?」
「どうだろうか。
そう言いながらシュランメルトは、態勢の整った
---
シュランメルトによる意図的に生み出された
「盾は拾ったな。では、今度は
その言葉と同時に、シュランメルトが
「なっ、何を……!?」
シュナイゼルが叫ぶも、
慌てて
「振りが甘いな。自慢の盾に頼り過ぎだ!」
シュランメルトがそう言うや否や、
盾の
「しまった、剣が……!?」
近距離での主な反撃手段である剣を失った
その隙を突き、
「自慢の盾、両断させてもらおうか!」
外側に腕を思い切り振り抜き、
元々“半分”切り込みが入っていた大盾だが、僅かな切れ目に盾が入り込み、
「なっ――」
シュナイゼルが目の前の事実を見て、さらに動揺する。
そして同時に、シュランメルトの意図を思い知ったのだ。
一つ。自慢の盾を両断する事で、シュナイゼルの戦意を完膚なきまでにへし折る事。
一つ。「盾とは身を守るものだけにあらず」という事柄を、突きつける事。
短い時間で全てを察したシュナイゼルは、しかしズズゥンという切断された大盾の一部が地面に落ちた音を聞いて、自信と気力を失ったのであった。
そこへダメ押しとばかりに、シュランメルトの声が響く。
「どうする、シュナイゼル? お前の盾は両断されたぞ」
「ッ……」
しらじらしいにも程がある。シュランメルトの言った事は、挑発に他ならない。
しかし事実として、シュランメルトは、
どう弁解しようが、落下した盾の一部がひとりでにくっつく事など無い。
全てを諦めたシュナイゼルは、絞り出すような声で、何とか自らの意思を告げた。
「分かり、ました……。この決闘は、私の……負け、です」
その言葉を聞いたアレスは、立会人としてただちに裁定を下した。
「そこまで! 勝者、シュランメルト殿!」
アレスの声が砂場一帯に響くのを、シュナイゼルは黙って聞いていたのであった……。
「おや、妙だな?」
と、シュランメルトが何かに気づいた。
「あの
「いえ、全く心当たりはありません。ここに来るという話も、聞いておりませんゆえ」
「では、いったい何なのだろうな?」
シュランメルトが話題にしたのは、接近してくる
数にして16台。内訳としては現行機にして標準機である
「……待て」
と、シュランメルトが何かを呟く。
「あの左肩の紋様……見覚えがあるぞ?」
シュランメルトが、アレスが、そして意気消沈していたシュナイゼルまでもが、向かってくる機体の左肩を見る。
そこには、右側を向いた狼のマークがペイントされていた。
「あれは、
シュランメルトが叫ぶが、遅きに失していた。
16台の
シュランメルト達へ向けて、光弾を無数に放ったのであった。
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