第六章九節 不穏
「陛下、騎士教練学校より書状が届いて参りました」
「ご苦労。下がって良いぞ」
「はっ!」
グロスレーベが使いの者を下がらせると、シュランメルトとパトリツィア、そしてシュナイゼルに向き直った。
「御子様、並びにパトリツィア様、そしてシュナイゼル。騎士教練学校の使用許可が降りました」
「承知した。
「かしこまりました。では、
「構わないが……馬車はいいのか?
予想だにしていない移動方法を聞いたシュランメルトは、多少驚愕する。
しかしすぐに冷静さを取り戻すと、シュナイゼルへと耳を傾けた。
「良いではありませんか。『いざ、決闘』という感覚が湧くでしょう?」
シュナイゼルは意外な事に、精神的な事柄を話し出した。
「それにこちらとしても安全には配慮します。王都の道も
それだけにとどまらず、シュナイゼルはいくらかのベルグレイアの構造、あるいは住民達にまつわる話をした。
その話を聞いたシュランメルトは、胸をなでおろす。
「ならば安心だな。では、行くか」
「ええ」
シュランメルトとパトリツィアは王城の正門前までは生身で、シュナイゼルは玉座の間まで来た時と同様に
それから数分後、シュランメルトとパトリツィアは、
正門を出てからは
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と、そこに一人の従者が駆けてくる。
「陛下、緊急の伝達事項がございます!」
「何だ? 手短にな」
「はっ。先ほど、軍を脱走した者達の情報が掴めました。そやつらは、騎士教練学校に向かっているようです」
「何だと……!? 分かった、すぐに対策を講じる!」
グロスレーベは血相を変えて、執務室へ戻っていったのであった……。
*
ベルリール城を出てから数分後。
騎士教練学校の砂地では、
立会人として、アレスの搭乗した
「私の名前は、シュナイゼル・ベルリ・ヘルト。そして我が
剣を捧げるように構え、そして正面へ切っ先を向ける。
それを受けたシュランメルトは、同様に名乗りを上げた。
「
同様にして、
そして沈黙が場を満たした、その刹那。
「始め!」
アレスが声を張り上げ、
*
最初に仕掛けたのは、
「はぁっ!」
大剣は大盾に食い込み――しかし、シュランメルトとパトリツィアにとって予想外の事態が起こる。
(両断出来ていない! 何て
声にこそ出さなかったものの、
「ちょっと、何コレ!? シュランメルト、刀身を消して!」
「承知!」
急いで大剣の刀身を消し、距離を取る。
そして再び魔力を結晶化させて刀身を形成すると、シュランメルトは
「何っ!?」
しかし、動揺したのはシュランメルトだけではなかった。
シュナイゼルもまた、
(何という、膂力……! まさかこの
無理もない。
かつて戦ったあの
それがまさか、ただの“剣の一振り”で半分まで切られようとは、夢にも思っていなかったのである。
シュナイゼルにとって幸いだったのは、
「流石に一撃では断ち切れないと、下がってくれましたか……。しかし、油断はなりませんね。我が
そう。
「ベルグリーズ最高峰の盾」と称される
強化された装甲、そしてそれを支える“結界魔術”、加えて筋肉増加に伴う膂力と機動性の底上げこそあるにはあるが、
改造元である
「でしたらば、致し方ありませんか……!」
しかしすぐに盾を構えた
「参る!」
しかしシュナイゼルは、光弾攻撃がさしたる効果を上げずとも、気に留めていなかった。
剣を構え、大盾を全面に押し出しながら、
「ふむ、シールドバッシュか」
「どうする、シュランメルト? あのでっかい盾ごと、撃っちゃう?」
「馬鹿を言え、実行すればシュナイゼルも死ぬぞ。流石にやり過ぎと言うものだ」
「じゃあどうすんのさ?」
「こうしようか」
シュランメルトは言うが早いか、
「
「えっ、ちょっ、シュランメルト!?」
叫ぶパトリツィアを気にもかけず、シュランメルトは次の指示を送る。
「この私に、盾で挑むのですか……! ならば、受けて立ちましょう!」
そんな
「私の盾と貴方がたの盾……。どちらが上か、はっきりさせましょう!」
2台の
決闘はいつの間にか、“どちらの盾が上か”という勝負に成り代わっていたのであった。
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