第六章十一節 迎撃
「回避しろ!」
シュランメルトが叫ぶと同時に、3台の
アレスの
シュランメルトの
「ふむ、
シュランメルトは光弾が雨あられと来るのにも怯まず、冷静に話していた。
無数の光弾が通り過ぎた後、3台は同様に反撃を開始する。
アレスの
残る
そして左腰部にある
「貴様らが“ヴォルフホイル”というのであれば、容赦する道理は微塵も無いな」
短い、しかしはっきりとした確殺宣言。
低く押し殺したような声で告げたシュランメルトは、真正面にいる1台の
そして距離を十分に詰め切った時、剣と剣が交差し――
「次だ」
シュランメルトは再び、
---
「次は誰だ!」
アレスの
「我が
シュナイゼルの
---
「次だ!」
味方の2台が奮戦している間に、
さらに離脱の遅れた4台目の
「そろそろ逃げておくのが賢明だと思うが?」
……と、敵機が妙な動きを見せた。
「む?」
指揮官機である
「……考えたな。常に3対1であるならば、押し切れるという事か?」
そう。
いかにシュランメルト達が奮戦しているとはいえ、現状の戦力は3対12。彼我の戦力差は、4倍もあった。
そして1対1では、圧倒的に力が劣る。ならば数を頼みに圧し潰そうという考えに移るのは、狼のマーキングを持った者達にとっては自然なのだ。
じりじりと迫る、3個の小隊。
計9台が、圧力をかけてくる。
元よりただの遠距離攻撃では決定打にならないのは、初撃を耐えきった事で実証済みだ。
狼のマーキングを持った者達も、それは十分に理解している。
ならば距離を詰めて袋叩きにしてしまえば良いだけの話だ。
「……ふぅ」
ただ、彼らは見誤っていた。
シュランメルトとパトリツィアが乗る、
「アレス、シュナイゼル。このまま真後ろに下がり続けろ」
シュランメルトが、一案を思い付く。
「シュランメルト殿? 何をなさるおつもりで?」
「
「承知しました。シュナイゼル殿も、構いませんかな?」
「ああ」
3台が、じりじりと後退を始める。
それに気づいた敵機は、
「まだだ、まだ下がり続けろ」
アレスとシュナイゼルにギリギリ聞こえる声量で、シュランメルトは指示を下す。
「もう少しだ」
さらに下がり続ける事、1分。
敵機はまだ攻撃せず、けれども確実に距離を詰めていた。
……しかし、敵は気づくべきであった。
シュランメルト達が、わざわざ騎士教練学校の防壁へと下がっている――すなわち、敵機を誘導している事に。
(そろそろ頃合いだな……)
そう判断したシュランメルトは、パトリツィアに指示を飛ばす。
「パトリツィア」
「なに?」
「大剣の先端から撃つアレの準備を頼む」
「
パトリツィアが
魔力が大剣に流入し、その影響を受けて刀身がわずかに輝いた。
そして、さらにアレスの
「今だ。行くぞ、
次の瞬間。
どれも一撃で、機体を完膚なきまでに破壊していた。
フレームを失い、主もまた喪った
「流石だねー。シュランメルト、全部一撃で仕留めちゃった」
「油断するなよ、パトリツィア。まだ3台残っているぞ」
「分かってるよ。残りもちゃんと、潰すからさ」
パトリツィアがさらに魔力を刀身に流し込んだ。
刀身が幅広く、そして長くなる。
全身から魔力を溢れさせ、輝いて見える
その頭部が、カメラアイが、残存している
「まだやるつもりか?」
狼のマーキングを持つ3台は、シュランメルトの言葉にたじろいだ。
まさか16台というシュランメルト達の5倍強もの戦力で襲撃したにも関わらず、いつの間にか、仲間がわずか3台にまで減らされていたのだから。
「シュランメルト殿、少しお待ちを!」
と、そこにアレスの声が響いた。
遅れて、
「何だ、アレス?」
「シュナイゼル殿からのお話です。生きて捕らえるべきかと」
「何故だ?」
「襲撃の理由を聞くためです」
それを聞いたシュランメルトは、少しだけ
しかし、即座に決断した。
「良し、ならば従おう。パトリツィア、もう
「りょーかーい」
パトリツィアの軽い返事と共に、
しかし刀身は拡大されたままであり、それはパトリツィアの、そしてシュランメルトの容赦の無さを、端的に表していた。
「覚悟しろ。戦闘能力の全てを、奪い去ってみせる」
シュランメルトはそれだけ告げると、高く跳躍する。
常軌を逸した跳躍に対応出来たのは、
バランスを失った
「……ッ!」
残された
一拍遅れて、
したたかに正面を打ち据え、起き上がるのもままならぬ
そして頸部と両肩を切断し、逃走能力を奪い去った。
「残るは、1台か」
「逃げるよ?」
「逃がすか。
「りょーかーい!
パトリツィアが思念を送ると、
“リッター・フリューゲ”と称される専用の飛翔機構は、次の瞬間には膨大な魔力を噴射していた。
「覚悟しろ……!」
両肩と両足、そして頭部を瞬く間に両断した。
そして推力を失い、落下する胴体部を両腕で抱え、地上に軟着陸したのであった。
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