(解説有)第六章二節 真剣

 アレス専用のBispeerldビースペールト_Kapitänmodelカピテーンモデルまで到着したAsrionアズリオン

 その中では、パトリツィアが次の動作を指示していた。


「“つか”を出して」

「剣の柄だな? 承知した」


 一拍置いて、Asrionアズリオンが腰部に搭載していた金色の柄を握りしめる。

 それは瞬く間に黒色の結晶を刃状に生じる。


「出たみたいだね。それじゃ、アレスに用意してもらった標的を、剣先で指し示して」

「こうだな」


 どうにも理解が追いつかない指示を、しかしシュランメルトは的確にこなしていく。

 と、彼の視界に違和感のあるものが混じった。


「むっ、何だこれは?」


 彼の視界に映ったもの――それは円だった。

 内に十字の刻まれた、いわゆる照準円レティクルと呼べるものである。


「その十字の重なりに標的を捉えて。捉えたら、『撃て』とAsrionアズリオンに命じて」

「やってみるさ。……撃て、アズリオン」


 パトリツィアの指示した手順をこなしてから、シュランメルトはAsrionアズリオンに命じる。

 その、次の瞬間。




 Asrionアズリオンは掲げた剣の先端から、一条の光線ビームを放った。

 光線ビームは標的を貫通し、膨大な熱量で標的を爆発させる。それに続いて、砂が吹き荒れた。




「……何だ、今のは?」


 光線ビームのあまりの威力に、シュランメルトはただ茫然としていた。


「これがAsrionアズリオンに眠っていた力だよ」


 パトリツィアは淡々と、シュランメルトに話した。


「それじゃあ同じように、手前の1つを残して全部撃って」


 指示を聞き取ったシュランメルトは、同様の手順で全ての標的を消し飛ばした。

 砂が飛び散るが、Asrionアズリオンにとって大した事ではない。


「終わったね。それじゃ、剣を構えて」


 指示通りに大剣を構えたAsrionアズリオン


「いくよ」


 すると、大剣の護拳が展開して、


「何だ!?」

「ボクが本気を引き出させたからだよ。それじゃ、残した標的を切ってね」

「あ、ああ!」


 いまだ見ぬ機能に驚愕を抑えきれないシュランメルトは、しかし的確に標的を切断する。

 と、またも感覚に違和感を覚えた。


(何だこれは……。“切れすぎて”いる?)


 最初にBladブラドを切断した時よりも、明らかに切れ味が変わっていた。

 普段と全く同じ威力で大剣を振ったにもかかわらず、手ごたえが弱くなっている。


「なあ、パトリツィア」

「なに?」

「あの標的の材質は?」

Adimesアディメス結晶だよ? アレスの説明では、だけどね」

「嘘だろう……」


 そう。

 多少の質の違い――それに伴う“耐久性”の違い――はあれど、Bladブラドと同等の素材で作られていた標的。

 それが一撃で、断面が鏡面と見まがうくらい綺麗に、両断されていたのだ。


「これで教えられる事は教えたかな。それじゃ、撤収するよ。アレス、手伝いお願い」

「了解、しました。しかしながら、シュランメルト殿」

「何だ?」


 アレスは笑みを深めると、期待に満ちた声でこう告げた。




「自分と決闘して、いただけますでしょうか」




 一陣の風が、砂場を走り抜けたのであった。



       ――解説欄――



●強化されたAsrionアズリオンの概要



「射撃能力」

 大出力の光線ビームを発射する機能。

 機体を駆動させる魔力を消費して発射する。


 しかしAsrionアズリオンの魔力は、何らかの要因により無尽蔵である。

 そのため、射撃に関する制限が無い。



「刀身強化」

 “アズリオン・シュヴェルト”の刀身全長と幅が強化される。

 これに付随して、攻撃可能範囲も同様に強化される。


全長

14.0m ⇒ 17.5m


1.5m ⇒ 2.5m

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