第三章五節 再会

「あら。貴方は……」

「シュランメルトだ。シュランメルト・バッハシュタイン。それが今のおれの名だ」

「シュランメルト。再びお逢い出来て何よりですわ」

「言葉に気を付けよ、シャインハイル。このお方は“守護神の御子みこ”にあらせられるぞ」

「ッ! それは失礼いたしました……」


 言葉遣いを訂正するシャインハイルを、しかしシュランメルトは慌てて止めた。


「いや、いい。気にするな。おれが“御子”とやらだったとしても、おれとお前が過ごした夢は変わるものではない」

「よろしいのですか?」

「いいのさ、グロスレーベ。シャインハイルとは、昔からの知り合いでな。もっとも、こうして直接対面するのはいつ以来か……いや、もしかしたら初めてかもしれないな」

「そうですわね、シュランメルト。こうして直接お逢いするのは、初めてですわね……」


 しばしシュランメルトと談笑するシャインハイル。

 ひとしきり話した後、玉座へ続く階段に空いた空間を見て、思い出したように言った。


「そう言えば。お父様、ついに神殿への道を開かれたのですね?」

「うむ。シャインハイルよ、御子様やフィーレと共に来てもらうぞ」

「ええ」


 そしてグロスレーベは、三人に向き直る。


「では、御子様。神殿へ行きましょう」

「ああ」


 グロスレーベを先頭に、シュランメルトが、そしてシャインハイルとフィーレが横に並び、階段を降りる。

 ややあって、開いたとき同様にけたたましい音を立てながら、扉が閉まったのであった。


     *


 1000段にもわたる階段を降り、蝋燭の光だけが頼りになる暗い通路を歩く。

 慣れない通路に、そしてひしひしとにじみ出る雰囲気に、フィーレは呑まれかけていた。


「うぅっ、お姉様……」

「大丈夫ですわ。わたし達がおります」


 そんなフィーレの手を取って、シャインハイルがなだめる。

 と、シュランメルトが呟いた。


「長いな……。どこまで続いているんだ?」

「隠し通路も兼ねておりますので、今しばらく」

「承知した」


 さらに3分ほど歩き、ようやく光が見えた。

 その光を抜けると、シュランメルトの視界にあるものが飛び込んだ。


「お待たせ致しました、シュランメルト様。ここが、“神殿”にございます。我らが守護神様は、こちらでお待ちしております」

「これは……」


 シュランメルトの視界に映ったもの。


「これは、魔導騎士ベルムバンツェ、か? しかし……」


 それは、神殿の奥に座す。


「なんという、大きさだ……!?」




 Asrionアズリオンよりも遥かに巨大な、青色の魔導騎士ベルムバンツェであった。

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