第二章四節 連戦
「むっ?」
「これは今の武器で斬り飛ばすには硬過ぎるな……。何て強さだ」
落下と重量のエネルギーを全て斬撃に転換してもなお、ドームは健在だった。
「リラ。どういう仕掛けだ、それは?」
『私の魔術です。“
呼吸の荒いリラの声が響く。
「おい、大丈夫か? 体調が悪いなら……」
『平気です。
『これ以上の戦いは無用です。“貴方の力を見る”、その目的は達成しました』
そして機体の右膝を地に着けた状態で、跪いた。
『グスタフ、判定を』
『う、うんししょー! 勝者、シュランメルト!』
グスタフの
*
「終わったのか。では、
シュランメルトがそう告げると、機体から外に出る。
言われた通り、
「お疲れ、リラ」
「お疲れ様でした。やはり直接対峙すると、強さがよくわかるというものですね」
「ところで、シュランメルト」
「何だ?」
「貴方、魔力は持っているようですけれど……。魔術というのは、使えるのですか?」
「何だそれは? ちょっと待ってくれ。魔力とか魔術とか、さっぱりわからないぞ」
全く心当たりを持たないシュランメルトは、戸惑う他無い。
「ごめんなさい……。これは焦っても、どうにもなりませんね。分かりました、この話はいずれまたするとしましょう」
『『ししょー(リラ師匠)!』』
と、拡声機越しに二人の声が響いた。
「何かしら、二人とも?」
『ししょー、僕たちもあの
『グスタフに同じく、ですわ!』
二人は
もちろん模擬戦ではあるのだが、二人の闘志はメラメラと燃えている。
その証明であるかのように、二人の
「それは構いませんが……シュランメルト、貴方は?」
「乗るさ。それに、共に過ごす者の力は気になるしな」
「二人とも、承諾したようです。ですがシュランメルト、一度休憩にしては?」
「いや、いい。やるならこのまま続けたい。感覚が残っている内にな」
「分かりました。では私は、
少し用事を片付けて参ります」
「二人とも、待たせたな。……ところで、どちらが戦うんだ?」
『それはもちろん、一番弟子のわたくしですわ!』
『いやいや姫様、僕に譲ってよ!』
『不満でもあるのですか!?』
『
シュランメルトと、そして
(どうやら、よほど
そうだ)
何やら案を思い付いたシュランメルトは、拡声機で二人に呼びかける。
「おい。
弾かれたように、2台の
「同時にかかってこい。それならば、順番決めで揉めずに済むだろう」
『あなた、正気ですの!?』
『言っておくけど、僕たちけっこう強いよ?』
解決策を提案したシュランメルトだが、二人に驚愕される。
無理も無い。先程の模擬戦はシュランメルトが勝利していたが、もしもリラが全力で、しかも実戦用の武装を遠慮会釈無く使ってきた場合、
十分な実力を有するリラの、弟子二人。体術を、魔術を、
そんな二人から見て、シュランメルトの発言は、とうていまともなものだとは思われていなかった。
……だが。
「気にするな。
きっぱりと言い切るシュランメルトを見て、二人はそれぞれの武器を構えた。
『そこまで言うなら、手加減いたしませんわ』
『全力で戦うよ』
闘志を剥き出しにする二人を見て、シュランメルトはわずかに笑みを浮かべた。
「その意気だ」
*
一方。
「王都からの手紙ですね……。魔術師同士の組合の話はいつも通りお断りするとして……おや」
金で装飾された封筒を手に取るリラ。
差出人を確かめると、ペーパーナイフを取って切り開けた。
「国王陛下から、ですか……。『翌日、一度フィーレを引き取らせていただく』。そう言えば、前回の期日から一月経ったのですね。後で連絡しなくては」
手紙を読み終えたリラは、机の上を片付けて紙束を取り出した。
「いろいろとシュランメルトに教える事もありますが、まずはこちらを進めるとしましょう。謎の
笑みを浮かべたままのリラは、紙束の中身に目を通し始めたのであった。
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