第二章二節 準備
「ししょー」
「何でしょうか、グスタフ。これは決定事項ですよ」
口を挟むグスタフをたしなめるリラ。
それを受けて、グスタフが訂正する。
「ううん、そういう事じゃないよししょー。ただ……」
「ただ?」
「これって、“僕がししょーと、最初に
その言葉を受けたリラは、しばし黙考する。
ややあって、ニコリと笑顔を見せてから、グスタフに話した。
「そうですね。その通りです。私はシュランメルトと、互いの
その言葉を受けたシュランメルトが、皿を取り落としそうになる。
「わっ!」
慌ててグスタフが、皿をキャッチする。
滑った手ではうまく捕まえられなかったが、割れる事だけは防いだ。
「気を付けて、お兄さん」
「済まない、グスタフ。呆然としていた」
シュランメルトが謝りながら、残りの皿を洗う。
「ところでししょー、どうして手合わせを?」
「簡単な話です。シュランメルトの用いる
「何のためにだ、リラ?」
「王国の
「承知した。
「ありがとうございます」
リラはさらにペースアップし、あっという間に皿洗いを終えたのである。
そしてフィーレにも手合わせの話を伝えると、支度を整えて工房に向かったのであった。
*
それからというもの、フィーレとグスタフ、そしてリラは格納庫へと向かっていた。
言うまでもなく、
残されたシュランメルトは、広場で自らの
「あの時はすんなりと
シュランメルトは空に向かって手を伸ばし、叫ぶ。
「来いッ! アズリオンッ!」
その言葉の後に、突風が吹き荒れる。
(
安心と疑問を同時に抱えながら、シュランメルトは“
---
その様子を、シュランメルト以外の三人は遠くから見ていた。
「フィーレ姫、グスタフ。今のを見ましたね?」
「はい。以前見たのと、全く同じです」
「はい、ししょー! 何あの
それぞれの
しばしその光景の余韻に浸っていたが、やがてリラが切り出した。
「私は彼の
「わかりました、ししょー!」
「はい!」
フィーレの
そのまま
*
「その武器は、金属で出来ています。
リラが
「貴方に渡した武器も同様です。準備はよろしいでしょうか?」
「既に整っている。他に留意するべき事はあるか?」
「“胸部への攻撃は控える事”。これだけは厳守して下さい。あくまでも、今回はお互いの実力を確かめるためです」
リラはあくまでも穏やかに、しかしはっきりと聞こえる声で、シュランメルトに告げる。
それを聞き届けたシュランメルトは、すぐに承諾した。
「了解した。胸は狙わないよう加減する」
「お願いします。グスタフ、開始の合図を」
「では……始め!」
こうして、“お手合わせ”が始まったのである。
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