第一章十一節 密談

 フィーレがリラを部屋に招き入れると、リラはフィーレの承諾を得た上で、ベッドに腰掛ける。

 フィーレもその隣に座り、話し始めた。


「リラ師匠が見た、あの漆黒の騎士です。外見については、説明を省かせていただきます」

「そうですね。一瞬ではありますが、確かにこの目で見ました」


 二人の密談は、さらに奥深く進む。


「時に、フィーレ姫。おそらく貴女は同乗していたのでしょうが……。内装は、どうなっておりましたか?」

「とても異様なものでした。私の魔導騎士ベルムバンツェであるViolett Zaubererinヴィオレット・ツァオバレーリンにも、これまでに見た他のベルグリーズの量産機にも、存在しえない特殊なもので……。例えば、、など」


「操縦桿が、無い……」


 基本的に魔導騎士ベルムバンツェは、どんな機体であろうとも操縦桿を標準で搭載している。

 それこそ、先ほどフィーレを襲った旧型のBladブラドでさえも、だ。


 その操縦桿が無いと言う事は、「張りぼての魔導騎士ベルムバンツェを作った」と思われても文句は言えないくらいの異様さなのである。


 フィーレは感じた異様さを、そのままリラに話し続けた。


「異様な点は、まだあります。操縦桿が無いという点はその通りですが、代わりに……。何やら、半球状の物体があり、彼……シュランメルトは、その上に手を置いていたようで」

「半球の上に手を置いて? どうやって動かしていたのかしら……?」

「そこまでは、分かりませんでした……」


 フィーレが残念そうに言うが、対照的にリラは興味を強く抱いていた。


「ますます異様ね……。フィーレ姫、済まないけれど、今日はしばらく話してもらうわ」

「はい、リラ師匠」


 その後もフィーレは、シュランメルトの魔導騎士ベルムバンツェの説明を続け、リラはそれを熱心にメモしていた。

 結局話が終わるのは、翌朝を迎えてからであった。

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