第一章八節 突破
胸と腹部を切り裂かれた
膝から崩れ落ちて前のめりに倒れる。その過程で、切り裂かれた頭部付近と胸部周辺が分離した。
やがて全身が地面に吸い寄せられると、結晶片が辺りに舞い散る。
『…………』
仲間のうちの1台が倒されるのを目の当たりにして、
その間に漆黒の
『……ひっ!』
この攻撃で、ようやく現在の状況を正確に理解しだした
漆黒の
『来るな、来るなぁっ!』
『頼む、消えてくれ……!』
残った2台の
それは真っ直ぐ漆黒の
「悪あがきか、なるほど。大したことは無いな」
漆黒の
何発光弾が命中しても、結果は変わらなかった。
「このまま、一気にけりを付ける」
残った2台の距離を確認した青年は、全速力で漆黒の
「終わりだ」
青年がそう呟いた後、2台の
そして胸より上の部分が、遅れて胸から下の部分が倒れ、やはり結晶をまき散らして機能を停止した。
*
「終わったか。おい、正気は保っているか?」
全ての
「え、ええ……。それにしても、何て性能の
少女は後部座席で青年の戦いぶりを見ていたが、未だ、何もかもに驚いていた。
と、別の重厚な足音が響く。
「敵か……?」
青年がモニター越しに見たものは、黒と銀のカラーリングを有する、ずんぐりとした人型物体であった。
「あれは、リラ師匠の
「“降りる”と言われてもな……。仕方がない、
「へっ?」
「早く!」
青年に急かされ、少女は慌てて青年の肩に触れる。
次の瞬間、二人は草原の上に立っていた。
「あ、あら? あなたの
「元の場所に戻っただけだ。それよりも、あの黒銀の
「ええ。こちらです、リラ師匠!」
少女が右腕をブンブンと振ると、黒銀の
そして片膝を付けた姿勢を取ると、胸部のハッチが開き、一人の女性が出てきた。
女性は草原に降りるや否や少女の元まで駆け寄り、少女を抱きしめる。
「無事かしら!? フィーレ姫!」
「ええ、この方に助けていただきました」
二人の抱擁を見ていた青年は、耳慣れぬ単語に疑問を抱く。
「“フィーレ姫”だと?」
「ああ、そう言えば……」
フィーレと呼ばれた少女は、女性との抱擁を一旦解くと、青年に向き直った。
「まだ、名乗る事が叶っておりませんでしたわね。
わたくしの名前は“フィーレ・ラント・ベルグリーズ”。このベルグリーズ王国の、第二王女ですわ。
そして、こちらの女性の名前は……」
「“リラ・ヴィスト・シュヴァルベ”と申します。この度は私の弟子であるフィーレ姫を助けていただき、ありがとうございました」
少女と女性は、それぞれが青年に一礼をしたのであった。
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