第一章二節 覚醒

「………………………ん」


 雨の降る、街並みの一角で。

 一人の青年が、パチリと目を覚ました。


「ここは、どこだ?」


 青年はキョロキョロと辺りを見回す。

 が、それも束の間、彼は自らの両手を見た。


「……?」


 彼は、おのれの両手を、両足を、胴体を、見た。

 やがて、一つの疑問を口にする。




おれは…………誰、なんだ?」




 自分自身の素性すら、彼は知らなかったのである。


「キャァッ!? ちょっと、やめてくださいませ!」


 と。

 若い女性の声が、街と彼の耳に響いた。


「……考えるのは、後にするか」


 彼はゆっくりと立ち上がると、悲鳴が発された場所まで向かって行く。


「嫌っ、触らないでくださいませ!」


 と、さらなる悲鳴が響いた。

 それを聞いた彼は直感的に察する。


「これはまずいな……!」


 彼はわき目もふらず、一目散に駆け出す。




 そこには――一人の少女、そして少女を取り囲んでいる七人の男達がいた。

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