第5話

『コウキ、今は暇?』


 歴史の教師(ロボット)が黒板に文字を書き始めたその隙に、パソコンでコウキへとメッセージを飛ばす。

 歴史なんて習わなくてもと僕は思うけど、これが案外大事らしい。人形作りをするには歴史に強くなければ行けないらしい。

 なんとなくコウキの方に視線を向ける。あいつ寝てるな、うん。

 僕はメモ用紙に『コウキを起こして(コウキの近くまで回して)』と書いて、後ろで熱心に授業に取り組んでいる女子にその紙を渡す。

 僕から紙を受け取った女子は紙を数秒ほど眺めて、後ろの人へと紙を回した。

 パソコンがあるおかげで手紙が回しやすくていいね。そもそもコウキが居眠りなんてしなかったらこんなことしてないんだけど。


 そうして二分ほど経った頃、コウキからの返信が来た。


『暇じゃないぞ。寝てるの知ってただろ。まったく、で、何なんだ? 俺を起こさなきゃいけないような重要な用事なのか?』


 ちらっとコウキの方をみてみると、コウキはあからさまに不機嫌そうな表情でこちらを睨んでいた。恐ろしい。


『コウキにAIの組み込み方と、プログラミングのやり方を教えてもらおうと思ってさ。頼める?』


 僕は音を立てずにキーボードを素早く叩き、メッセージを送る。

 数秒ほど待つとすぐに返事が返ってきた。きっとコウキの眠気が覚めたんだろう。


『ああいいぜ。何処から教えればいいんだ? 基本か? 応用か?』


 一応基本となる知識は持っているけれど、その知識が本当にあっているのかなんて自信はない。

 せっかくだし”作る”側の人であるコウキに習っておこう。


『ごめん、読んだだけじゃよくわからないとこが多くて……。 教えてもらえると助かる。』


『俺とお前の仲だし特別に教えてやるよ。もう眠気も飛んじゃってるしな。』


『ありがとう。

 僕が分かってることは、プログラミングのアプリとメモリーカードの作り方くらい。それ以外はなんにもわからない。』


 数十秒ほど待つと返事が返ってきた。


『ほとんど何も分かってねえんだな……優等生でもわからないことってあるんだな』


 コウキ、優等生だからって何でも知ってるとは限らないんだよ。僕にだってわからないことはある。大人にだってあるよ。ただしロボットは別。


『プログラミングはな、お前みたいな素人がやると何ヶ月もかかるけどいいのか? 俺がやってやろうか?』


 ぜひとも頼みたい。が、僕はあの人形を自分で作りたいと決めたのだ。どうすれば……。


 頭をフル回転させ、なにかいい案が無いかと考える。痛い、頭痛が痛い。

 数分ほどして僕の頭は一つの回答を叩き出した。

 途中で歴史の教師(ロボット)が「ここはテストに出やすいからな」と言っていたような気がしたが気のせいだ。

 僕は思いついた案を忘れてしまわないうちにパソコンに叩き、メッセージとしてコウキへと飛ばす。


『じゃあコウキ、僕の隣でどうやったらいいのか教えてくれないか? それなら僕がプログラミングしたことになるし』


『オッケー。で、何処でやるんだ?』


 何処で、と言われても……。まあ公園とかでいいだろう。僕の家には呼びたくないし。

 と僕が考えた瞬間、コウキからメセージが飛んできた。


『場所はお前ん家でいいよな。お前一人暮らしだし寂しいだろうからさ。』


 余計なお世話だ。一人にはなれてるんだ。

 でもまあ断る理由も無いしいいだろう。


『わかった、僕の家だね。』


『おやすみ』


 コウキの方を見ると、すでにコウキは顔を伏せて眠っていた。早いよ……。

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機巧都市で出会った君は あいれ @wahhuru

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