第10話 熊野(くまの)の脛巾(はばき)
ジンが
これらの山地に入るには、けもの道に
山々の
「
「アカと言ったな、よろしく
アカは、にやりと笑みを含んで
周りの者は
「アカの
「ハバキは
燃え盛る松明が「バキッ」と音を立てて倒ると、火の粉が舞い上がり、夜空を焦がした。再び、
「わしらは、山に入って
「アカは、一人でやるのか。」
「日ごろは、一人で山を駆けているが、大物が出た時には、何人かで組んでやる。狙った
「ならば、情けが移るであろう。」
「情けはあるさ。だがな、やるときはやらねばならない。悲しみも涙もない、
「アツミの矢じりは、神の力が宿っている。山神にお願いをするのか。」
「
アカの話に、みな、聞き入っていたが、隊長の亘(わたり)が途中でさえぎった。
「さて、アカよ、輝々星神(かがほしのかみ)のことだが、どこにおいでか
「それは、山の
アカは、左右の掌を合わせると、それを頭上に伸ばして、祈りの姿を示した。
「こうして、わしらの
「猪(しし)のアカよ、ありがとう。よくわかった。明日からはアカのいう通りに進もう。みな、良いか。」
パチパチと音を立てて
五日目の
隊長の
「急がねばならない。このまま
たちまちに、強い雨が降り出した。
「危ないところであった。
玉置の
「蛇(かか)さあ、おねげぇします。」
「体が冷え込んじまったよ、蛇(かか)様。」
「ほれ、今日の山の恵みじゃ、蛇(かか)さあ。」
と次々に祠に入ってくる。見上げるほど体の大きな男が、縮こまって入ってきた。
「おや、今日は、みなれねぇごジンがいっぱいじゃねえか、どうした。シシのつれか」
アカは静かに首を縦に振った。祝詞が終わると
「年々、
アカは
「
「そうか、そうか、よくここまでおいでなさったの。いきなりの雨でお
「ならば、話ははやい。
「このあたりは、
キノキ神は、周りのハバキ衆に問いかけるように、目を走らせたが、誰もも返事がなかった。
「
そこに一人のハバキが
「
前に出たのは、ボロボロの
「
誰かに話さずにはおれないと、あふれ出るように話し出した。
「あの恐ろしいとがり山の
ハバキは、自分の里のことを言ったのか、声を詰まらせて咳き込んでしまった。涙を流しながらさらに続けて言った。
「ひと月まえのことよ。
「やはりそうか、
「そのうち
また、別の
「わしの祠にも、とがり山のハバキがきたぞ。奴らは高い山での息と寒さには慣れているが、近頃の冬の暖かさにはかなわず、体をやられて猟に出れないものが多いという。
思いもしない事態が、
「なるほど、ハバキの言う通りだ。
「
亘の顔色がさっと変わった。
「キノキ神に感謝いたします。もはや、
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