ロイと吸血鬼【8】
「で、何だ?」
ニーナと二人だけの密室。
こんな状況、ニーナじゃなきな、喜べるのにな……。
美少女と二人きり。こんな状況を喜ばない男がいるだろうか?アレンならニーナで喜べただろうが、コイツの怖さを知っている俺からすると……
ーー地獄だ!
早くこの場から逃げ出したいと言う気持ちでいっぱいだった。
ちなみに、エレナとアレンには外に出てもらっている。そして部屋全体には結界魔法が貼られているので声が漏れる心配もない。
この状況から察するに……
これからのことについてだろう。そう、吸血鬼の。
「これから……」
ほら、きた。
「ここは私が指揮をとるわ」
「は?」
何を言っているんだ?この基地には教官や副官がいるはず、なのに彼女が指揮をとるとなると、
「教官達は死んだのか?」
「えぇ」
「殺されたのか?敵に……」
その質問にニーナは首を振ると、
「私が殺した」
「……」
おい、どう言うことだよ。教官を殺した?何馬鹿なことを。
どうせ何かの冗談に決まってると思い、ニーナを見ると真剣な目つき。
「そうか」
しばらく俯いた後、俺は笑顔でニーナに近づくと銃を額に突きつけた。
「お前は何をしたのか分かってるのか?」
ニーナは突きつけられた銃を手で払いのけて、
「お前こそ分かってるの?この状況がーー」
バン!
俺の乾いた銃声の音が室内に鳴り響く。幸い、結界魔法が貼られているので音は漏れない。
「黙れ。吸血鬼の件と言い、この件と言い、どうもお前は信用できない」
「ハァ?見たでしょ?あの回復力を。あれをお前たちごときの人間ができるって言うの?」
撃たれた箇所を修復しつつ、喋る銀髪の少女。
無論、吸血鬼と言う存在は理解した。だが、俺を誰が吸血鬼にしたのか?答えは1つ。
「お前はどうやって俺を吸血鬼にした?」
そして、もう1つの疑問。「私の64式」とはどう言うことなのか。
「お前を吸血鬼にした方法なんて簡単よ。あなたを殺して私の魔力を流し込んだだけ」
「もう1つ。この『64式』は知っているのか?」
「知ってるも何も元々私のーー」
バン!
乾いた音。ほんのり香る火薬の匂い。本日二度目の銃声。
「嘘をつくな。これは俺があの人から譲り受けたものだ」
「あぁー!もう!!」
苛立った様子を見せ、銀色に輝く髪をくしゃくしゃにする。
「いい加減に立場をわきまえなさいよ」
ニーナがそう言った瞬間、景色が逆転した。
……こかされた?
戸惑っていると銃を突きつけられて、
「私の見た世界を知れば分かるわ」
ニーナが引き金を引いた刹那、世界が暗転した。
殺戮に染まる戦場で戦慄よ響け リルもち @Riru0124
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