花火が打ち上がるとき、

あの日と同じ、私とカナタくんが初めて会った日のような夕日に魔法をかけられているかのようだった。


私は"はい"と言う代わりに

「カナタくんも私の隣でいつになっても、いくつになっても、その笑顔見せてくれませんか?」

と言った。

彼はくしゃっと笑い

「もちろんです!」

と言ったと思ったら、私を抱きしめた。

「美海、大好きだよ」

「ん、私も」

こう言った時、夕日は水平線に沈んだ。



「あ、」

しばらく時間がたって、彼は急に話し始めた。

「花火、何時からだっけ、?」

「えーっと、19時?」

私は近くにあった時計で今の時間を確認すると、

「え!もう18時じゃん!始まっちゃう」

「せっかく花火大会にきたんだから、花火見なくちゃな。 俺、人少なくて綺麗に見える場所知ってるから、夜ご飯買ってそこで見よ!」

そういうと、彼は立ち上がり、左手を差し出した。

「じゃあ、行こっか、?」

私は彼の左手に、自分の右手を重ね、歩き出した。


海沿いを歩きながら、彼は手をブンブン振った。

「ね、カナタくん痛い」

「わりぃわりぃ 嬉しくってさ笑」

無邪気に喜んでいる姿は、小学生みたいで。

「あ、美海さ?」

「ん?なに?」

「そのーカナタくんじゃなくて、、呼び捨てで呼んでほしいんだけど、」

「え、恥ずかしい」

「1回言ってみて!」

「か、カナタ ?」

「あー自分で言わせといてやばい、、」

と日は沈んでいるのにもかかわらず、頬を赤らめる彼がいた。ドキドキしてるのは私だけなのかな?とか思っていたけど、彼もしていたみたいで嬉しかった。

「ねぇ、カ、ナタ? 私、恥ずかしくて言えなかったんだけど、今日の浴衣姿すごいかっこいいよ、? その、髪も 」

「ほんと?!!」

また、少し頬を赤らめ、嬉しそうにしてくれる彼をみて、私も嬉しくなった。そして、さらに握る手は強くなり、大きく振りはじめた。


私達は、また屋台がある会場に到着し、夜ご飯を探しに人混みの中に入った。花火が始まる時間に近くなってきたので、さらに人が増えた気がする。

「俺、すっごい美味しい焼きそばんとこ知ってるからそこ行ってもいい?」

と彼が言ったので、そこを目指して歩いた。

人混みに紛れてしまいそうになったが、彼が強く手を握っていてくれたので、なんとか迷子にならずに到着することができた。

「あ、ママ!パパ!」

え?ママ?パパ?

「お!カナタ!あれ?その子が美海ちゃん?」

「そうそうそう!見て!」

と彼は繋いでる手をカナタくんのパパらしき人に、嬉しそうに見せた。

「おぉ!!よかったな!カナタ!」

「家で可愛い可愛いって大変だったんだよねー??」

「ちょママ!!それは言うなって!!」

「ねぇ、カナタ、誰?」

「あ!言い忘れてた笑 こっちがうちのパパで、あっちがうちのママ!」

彼がママパパ呼びと言うことが意外だった。あ!挨拶してなかった!でもこんなに親に挨拶って早くするものなのか?と思いながら

「あ、髙橋美海です。カナタくんにお世話になってます。」

と自己紹介をした。

「いやいやこちらこそお世話になってます!カナタたぶん色々大変だと思うけど仲良くしてやって!」

「ねぇパパ!どういうことだよ!笑」

私は勝手に彼はクールでカッコいい人なのかと思っていたけど、意外に可愛いところが沢山あってお茶目なところもあるんだなと思った。

「あ、ママ。焼きそば1つ大盛りちょうだい!」

"はいよー"という声が聞こえると、ジュージューと焼きそばを作る音が聞こえた。

「カナタって家族と仲いいんだね!」

「うん!田中家近所で仲良いって評判なのよ笑」

そんなうちにもう焼きそばが出来上がったみたいで

「カナターできたよー!」

「お!サンキュー」

「カナタ、お金、何円?」

「あいいから!これ家族でやってるやつだから大丈夫!」

「ほんとに?ありがと、!」

「焼きそばだけじゃあれだから、他になんか食べたいのある?」

「んーとじゃあお好み焼き!」

「おっけ!じゃパパママバイバイー」

彼の両親に挨拶して、お好み焼きの屋台に向かった。

お好み焼きを買うとき、彼が、

「お好み焼き、2つ」

と頼んで、お金も払ってくれた。

「カナタ!お金払うよ、悪いし、!」

「だめーこういうのは男が払うんですー」

「で、でも!」

「じゃああとで俺のお願い聞いてもらっていい?」

彼がお願いを聞いて欲しそうに言うので、彼に甘えて払ってもらった。


すると"バーン "と花火の音がした。時間を見てみると、もう19時になっていた。

「やっべもう始まっちゃった、もう行くか!」

焼きそばとお好み焼きを持ち、彼の家の近くの公園に行った。空を見てみると、本当に花火が綺麗に見えて、

「ほら、俺の言った通りだべ?昔からの俺の特等席なんだよ!ここ座ろ!」

と言われ彼が座っている隣に少し間を空けて座った。

そしたら、腰に手が回ってきて

「ねぇもっとこっち!」

と、彼との距離が1センチもないくらいのところまで引き寄せられた。ちょっと近いな、と思ったけど、買ったものを食べ始めた。

「カナタの家の焼きそば美味しい!」

「だべ?毎年評判なんだよ!」

こう話してる間も花火が次々打ちあがっていた。

そういえば今日22時前には帰ってきてって言われてたっけ、何時だろうと思うとまだ21時にもなっていなかった。でも花火は21時までで、

「花火もうすぐ終わっちゃうね、」

「美海?」

彼はまた、海の時みたいに口を開いた。ん?と聞くと、

「俺、さっきカッコつけちゃってはっきり言えなかったからもう一回言うね。俺美海のことが好きです、付き合ってくれませんか、?」

「こんな私でよければ、よろしくお願いします、!」

と私が言うと、

"美海、好きだよ"と呟き、彼の唇を私の唇に落とした。そのとき最後の花火が打ち上げられた。


嫌いだった夏を大好きな季節に変えてくれた、彼と私の一夏の話。

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夕日に染まる、君と。 @six__t____

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