隣でその笑顔、みせて?

この感情に気づいてからあっという間に花火大会の日になってしまった。

花火大会は夜からだが、屋台は夕方から出ているので、早めに集合にした。私はいいと言ったのだが、彼が私の家まで迎えにきてくれるといったのでそうすることにした。

家で髪と浴衣が大丈夫なことを確認してから家から出た。

すると浴衣を着たカナタくんはもうそこにいて。いつもはセットされていない髪がセットされていて、少し大人っぽく見える。

「あ、美海ちゃん!」

彼が大きく手を振っている。私も振り返して彼の元に行く。

「じゃあ行こっか」

と言う彼の顔は、少しピンク色に染まっているような気がした。

「うん」

私はこう言い、2人で歩いて花火大会の会場に向かった。


会場に着くと、すでに沢山の人がいた。

「やっべ、想像以上に人多いわ」

「そうだね、私は平気なんだけどカナタくん人多いとこ大丈夫だった?」

「全然だいじょぶ! あ、美海ちゃんなんか食べたいものとかある?」

「んー、りんご飴食べたい!」

「おっけ」

私たちはりんご飴を探して、人混みの中に入っていった。


しばらく歩いていると、前に里咲と橋本くんの姿が、!私はカナタくんが「待って!」なんて言っているのも知らずに、里咲の元に走っていった。

「あ、美海じゃん!」

「ほんとに一緒に来てたんだね!頑張って」

「ありがと。ってか美海一人で来たの?」

「え?ううん違うってあれ?はぐれちゃった!」

「ちょ早く探さないと 一緒に来た子心配してるよ?」

と里咲が言うと、橋本くんに呼ばれたらしく「じゃ!」と言って去っていってしまった。


スマホを見てみると彼から電話が。すぐに出ると

「あ、美海どこいんの?!勝手にどっか行くなよ!」

「ごめん、神社の近くにいる」

「わかった絶対そっから動くなよ?!電話繋いだままにしとくから」

そう言われ神社の前で待っていた。"美海"なんて呼び捨てにされた嬉しさなんて感じている場合ではないのに、また胸がときめいた。

こんなことを考えていたら彼が走ってきた。

「美海ちゃん!ほんと心配したんだからな?会えてよかった」

「カナタくんごめん、友達がいたからつい」

「見失っちゃった俺も悪いからもう謝んないで?」

と言い彼は左手を差し出してきた。

"ん?"と私が首をかしげると

「もうはぐれちゃったら困るから、手。」

こんなことを言われて、私は思考能力が停止してしまい、戸惑っていると、

「あ、ごめん。嫌だったよね」

「ううん、そう、じゃ、なくて、その、」

と言いかけているときに、彼は私の右手と取り、 恋人繋ぎの状態にした。

「迷子にならないようにだから、ね?行こっか」

そう言いながら、また人混みの中に2人で入っていった。


「美海ちゃんどっか行きたいとこある?」

なんて聞かれても、今のこの状態だと、手汗だいじょぶかな?とかちょっと近すぎない?とか考えるだけでいっぱいいっぱいなので、

「カナタくんが行きたいところでいいよ」

としか言えなくなっていた。

すると彼は子供のように目を輝かせながらこう言った。

「え?いいの?じゃあ射的やりたい!射的!俺得意なんだよ!」

「カナタくんほんとに銃持ってそうだもんね笑」

「それどういうこと?笑」

「え、なんか普通に家とかで打ってそうじゃん、カナタくん」

「俺のイメージ悪すぎな笑 ま、見てろって」


話しているうちに射的のところに到着した。

「よ、いらっしゃい!どれねらいやすか?!」

と屋台のおっちゃんが話しかけてきた。

「美海ちゃん、どれ欲しい?」

「んー、じゃあ、あのくまのぬいぐるみ欲しい!」

「おっけ!任せとけ!」

という彼はいつもより頼もしく見えた。そういえば、今日写真撮ってないなと思い、射的を打っている彼を撮ることにした。

「ちょ美海ちゃん撮んないで!恥ずいから!」

「やだーカナタくんが何言っても私は撮りますー」

「はいはい、わかりましたーその代わりにかっこよく撮ってね?笑」

そんなこと言われなくても、彼がぬいぐるみを必死に取ろうとしてくれる姿はかっこよくって。この姿を残しておこうと何枚もシャッターを切った。すると、彼が見事に一発でぬいぐるみを当てた。私は、当てた彼よりも喜んで、周りのことなんか気にせず、

「すごい!カナタくんすごい!」

と大きな声で言いながら彼の元へ駆け寄った。

「だから言ったべ?俺に任せろって!」

彼は手を前に出し、いえーいと言って私とハイタッチした。

「はい!おめでとね、ぬいぐるみ!いやー彼女さん良い彼氏くん持ったね!」

なんておっちゃんが言うから、どうすればいいかわかんなくて、彼の方を見ると、嬉しそうに

「いやーそうなんすよ!俺いい彼氏なんす!な?!」

と言いながら私の手を握った。あまりにも嬉しそうだったので否定できず、私は微笑んだ。彼はぬいぐるみを受け取り、私に渡した。

「はい!美海ちゃん!俺かっこよかったっしょ?!」

「うーんまぁいつもよりは?」

「おい、そこはかっこいいって言えよ笑」

ほんとはかっこいいって言いたかったけど、そんなこと恥ずかしくて言えなかった。


そのあとも屋台をいろいろ巡った。日が少し暮れ始めたころ、私が少し疲れたと言ったので、いつもの海の所まで行って休むことにした。

すると、彼は急に

「あのさ、」

と口を開き、話し始めた。

「今から話すこと、もし嫌だったら突き飛ばしていいから。」

私は何のことを話しているのか分からず首を傾げながら頷いた。

「俺、入学式の時に、美海ちゃん見つけて、俺のクラスの一個前のクラスだったから。そのときに美海ちゃんが隣の子と笑ってるのがかわいいなって、一目惚れっていうやつ?それで誰だろうって思って、よく美海ちゃんのクラス見に行って、それで名前を知れた。 だからあの海のとき、名前知ってたんだよ」

私はカナタくんの話をちゃんと聞いていたが理解が追いつかなかった。あ、彼が私のクラスに来てたから、なんか見たことあったのか。え、ひとめぼれ、?なに、?

「んで、部活終わって、帰ってたら、海ん所で寝てる子がいて、俺 美海ちゃんのこと見てたからすぐ美海ちゃんだってわかって。って気持ち悪いよな俺、チャンスだと思ったんだよ。それで話しかけた。急に知らない男が話しかけてきたら怖いと思うのに、美海ちゃん優しくて、俺の話とか笑ってくれて。これからも俺の隣で笑って欲しいな、なんて思って。今日もすっごい緊張して。浴衣姿見たらめちゃくちゃ可愛くて。んでどっか行っちゃったから俺嫌われたのかと思って、電話出てくれてほっとしたし、ほんとどうしようかと思ったよ。あと、俺、射的でかっこいいとこ見せようと思って、それで当てたとき、隣ですっごい喜んでくれて、めっちゃ嬉しかった」

ここで、彼は話をやめた。どうしたのだろうと思い、ふと私が顔を上げると、夕日が水平線の近くまで来ていた。彼は息を呑み、口を開いた。

「俺、美海ちゃんのことが好きです。


"これからもずっと、何歳になっても、俺の隣で笑っていてくれませんか、?"」



夏の終わり、夕日に染まる君は私にこう言ったんだ。

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