第16話 これはどう見ても生体パワードスーツですねー
閃光が収まり、フーライが無事かと確認するキリカとダンケル。
2人の視線の先には、全く別物になったフーライの姿があった。
体格がひと回り大きくなり、肌は暗い青灰色に。
全裸の様にも見えるが、全身に密着する服を纏っているかの様にも見える。
なのに履いていたはずのブーツもなく、足には五指が確認出来る。
何より変化したのは頭部で、同じ形の別物になっている。
頭髪はなく、肌と思われる全身と同じくく暗い青灰色。
目の上、額の左右からはオーガの様で違う角が生えている。
瞳も涙型の無色の宝石に見える物へと代わり、斜めに張り付いている。
鼻は布を巻いた時の様な形だけが残っている。
口は銀色の蛇腹になっていて、とても食事が可能には思えない。
1番の特徴は腹部にある球体で。
石でも金属でもない、不思議な物質で作られている。
基本色は白なのだろうが、今は7色や黒に所々染まって変わり続けている。
呆然としていた2人だったが。
キリカはハッと気付き、気を取り直す。
ダンケルの背中の服を掴み後方へ跳躍。
ダンケルを降ろすと自分は前に出て、刀に手を添え腰を落とし。
いつでも抜ける体勢へと移った。
だが。
「ダンケルさん。この鎧、凄いよ。光ったと思ったらさっきより軽くなったし。動きも何も着けてないみたいで、さっきより快適に動かせる様になったよ」
「フーライ殿、なのですか?」
「へっ?やだなあー。俺、そんなに見違えるほど格好良くなっちゃったか?」
その反応にキリカは刀から手を離し、落としていた腰も上げ普通に立つ姿勢へと変えた。
(常識知らずなのは知っていましたけど。まさか、街の鎧は全て光るとか思ってないでしょうね?)
姿を変えたフーライからは危険を感じなかったので、キリカは彼が常識知らずだったと思い出していた。
そしてそれが、常識外れの行動を引き起こす事も思い出していた。
「ダンケル殿。何かわかりますか?某には、さっぱりでして」
「いや、全く予想も出来んわい。ただ見た目の大半は、人間サイズのオーガの様にも見える」
「はっ、そうです!フーライ殿、自分に鑑定をして下さい。そうすれば、今の状況がわかるはずです!」
「なんと!ボウズは鑑定まで持っておるのか!」
(鑑定を使っても、能力だけしか見れないんじゃ?まあ使ってみるけど)
反射。
強奪。
鑑定。
収納。
武術。
魔法。
跳躍。
斬撃。
刺突。
剛力。
再生。
多進化成長密着生体鎧・ドライガー。
「ダンケル殿、今はそんな事を言っている場合ではありません」
「あっ、そうだな。すまん」
「おーいキリカ、鑑定終わったぞ」
「あっ、はい。お願いします」
「多進化成長密着生体鎧ってのが増えてる」
「なんだと!」
「はぁ……また、ですか」
その後。
フーライはダンケルに、鎧についてわかる事を言えと質問攻めにされ。
キリカはフーライの常識外れっぷりに気が重くなり、近くにあったのイスに座り作業台に突っ伏した。
そして2人は同じ事を思った。
(疲れた、もう帰りたい)
(疲れました、宿に帰って休みたいです)
だが2人はまだまだ、帰れそうにもなかった。
あとがき。
フーライは鎧からの精神と肉体を操り、自分の物にしようとする干渉を反射。
そして鎧を自分の物にしてしまった。
その時反射に繋がっていた魔法から浄化の光が放出され、キリカの鎧まで纏めて浄化された。
他にも繋がった能力があり……
腰の球体は教職装甲な重力制御でも、覆面ライダー黒の王の石でもない。
しっかり別の考えはあります。
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