第17話 みんな今どんな気持ち?

 フーライが精神疲労を感じ、重いため息を吐くと。

 多進化成長密着生体鎧・ドライガーは霞の様に消え、ダンケルの店に来た時の服装のフーライへと戻っていた。


「なんとっ!これは凄い。して、消えた鎧はどこに行ったんだ?速く答えんか!」

「ダンケル殿。もうそのくらいで、終わりにして下さい。某達にも、予定と仕事があるのです」


 背後からキリカにかなり強く肩を掴まれ、ダンケルはようやく正気に戻った。


「すまん……黒髪の。おヌシの鎧もあの光を浴びたからか、発生していた意思の様なものは消え去っていた。装着して帰っても大丈夫だろう。残りの素材はまだ売れておらん。金になったらギルドに伝言を残しておく。ワシは頭を冷やしてくる。帰りは自由にしてくれ、声をかけんでもいい」


 興奮して相手に迷惑をかけていた事に落ち込んだダンケルは、キリカに言うだけ言って工房を出て行った。


「ダンケル殿……」




 本来は鎧について装着前に直接、肌の上に着用するボディスーツが2着。用意してあった。

 しかしフーライはそれが何の為にあるかわからず、直接鎧を着用してドライガーへと変化させた。

 余ったボディスーツは、さほど体格が変わらないキリカの予備用として保管しておく事になった。


 キリカはフーライに後ろを向かせると、下着姿になりボディスーツを着用していく。

 黒。

 ボディスーツは伸縮性に富み、首の部分に足からすっぽり入り着る事が出来た。

 次に腰から下へと鎧を装着し、胴から腕を経て兜と面頬を装着していく。

 フーライのドライガー程ではないが、流石にワンオフの作品。

 動いた時のズレもほぼなく、妨げにもならない。


 キリカが技で戦うサムライだと知っているからだろう。

 動きの阻害については、とても良く考えられていた。

 キリカはこの鎧をとても気に入り、早足でダンケルに感想を言いに行った。

 フーライが工房で待つ間、店の奥の住居スペースからは時々大きな声が聞こえてきていた。




 キリカにベタ褒めされて復調したダンケルと分かれ、店から出ると昼と夕方の間くらいの時間だった。

 飲食店は軒並み夕方の仕込みに入っていて、食べられる店はなさそうだった。

 2人は街から出ると防壁を東へ回り込み、2度もフーライがウサギに襲われた場所を目指した。


 あれだけの数を倒したので、ウサギが居たとしても少数だろうとの判断だ。

 それにキリカと離れなければ、襲ってこないのも確認出来ている。

 遅くなった昼食を作るのには、なんの問題もない場所だった。



 キリカが用意をしている間に、フーライは渡された木刀を使って素振りをしていた。

 目的はウサギより強い男になる、ではなく。

 武術の動きを体に覚えさせる為である。

 一朝一夕で身に着くものではないからこそ、時間を作っては素振りをする様に言われている。

 この木刀もダンケルの作品でキリカの物だ。

 姉妹品に中に金属を入れて重くした木刀もある。

 ギルドの貸し倉庫に預けてあったが、今回解約してフーライの収納に入れた。


 複数の乾燥野菜の粉末を小麦粉で焼き固めた携行食を、ウサギ肉のスープに入れて塩で味付けした粥。

 不味い携行食入でも普通の味になった昼食を終えると、キリカは素振りを。

 そしてフーライはドライガーの能力を調べ始めた。

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