第15話 彼は有能な職人だけど睡眠はとったのかな?

(あれ?昨日、防具にブーツを脱いだ覚えがないんだが?……あー、キリカか?)


 フーライは目覚めてから、自分の装いが昨夜と違っている事に気付き。

 それが隣のベッドで眠る相方が、世話を焼いてくれたのだと考る。

 自分に洗浄してから、昨夜の礼に寝ているキリカにも洗浄しようとして…止めた。


 寝ている所にあの爽快感を送り込む。

 どう考えても、イタズラとしか受け止められないだろう。

 朝から鞘に入ったままの刀で、顔面か頭部をぶん殴られるのは勘弁と。

 フーライは自分の仕度に戻る。



 目覚めたキリカに許可を取り洗浄すると、目がシャッキリと開いて仕度を始めた。

 別行動する必要もないが、着替えを見られない方がキリカも助かるだろう。

 フーライは先に下の食堂で2人分の朝食を注文しておく。




 朝食後はダンケルの店に行き、防具の完成予想日時を聞きに行く。

 店のドアノッカーを叩きしばらく待つと、伝声管からダンケルの声がする。


「なんじゃ」

「キリカです、防具の完成予定日時を聞きに来ました」

「むっ、伝えておらなんだか。まぁ、調度よい。入ってこい」


 鍵の開いていたドアを潜り、奥を目指す。

 鍛冶場の前を通り工房を覗くと、ダンケルが手招きしている。

 工房に入りダンケルの親指が示す先を見ると。

 そこには既に完成したのか、その直前か。

 オーガ素材で作られたと思われる鎧が2セット、作業台に乗せられていた。


「ダンケル殿、もう完成させたのですか!?」

「ワシにかかればこの程度、当然だ。と言いたいが。この鎧には肝心な部分で問題があってな。それは装着可能かどうかだ」


「そもそもサイズを測っていないのでは?」

「ワシくらいの職人になると、服どころか、鎧の上からでも体付きの計測が可能になる」

(能力か経験からくる技術か?服が透けて見えないなら、欲しいとは思わないけど)


 フーライはキリカとダンケルの会話を他所に、完成した鎧一式に触れたり持ち上げてみたりしている。

 そして完成しているのだから、自分に合うかと試し始めた。


「でしたら、サイズは丁度なのでは?」

「サイズの問題ではなく、鎧自体が漠然とした意識や感情のような物を持ってしまってな。装着者を選ぶ様になってしもうたのだ」


 ガチャガチャ。


「それは、少々危険ですね……」

「うむ、最悪装着して意識を乗っ取られる可能性まである」


 ガチャガチャ。


「ええい、さっきからなんだ!うるさ……なっ!」


 2人が振り向くと。全身に問題の鎧を装着し終えたフーライが、平気な顔をして立っていた。


「いやー、ダンケルさん。この鎧凄いですね。胸鎧に体を通したら、自動で他のパーツが飛んできて装着されるなんて」


「おヌシ、平気なのか?」

「何がです?大して重くないですし、動きが阻害させている感じも余りしませんよ?」


 ダンケルは、フーライの意識が鎧に干渉されていないか心配しての発言だが。

 肝心のフーライは鎧の着心地について返している。

 2人の会話が噛み合っていないのに、キリカだけは気付いていたが。

 会話に集中していて、目を離すんじゃなかったと頭を抱えていてそれどころではなかった。


 カッ!


「うおっ!?」

「なんだ!」

「何事ですか!?」


 フーライとダンケルがあーだこーだと言っいると、突然フーライが装着している鎧が眩い閃光を発した。

 腕で光を遮ってなお、まぶたを強く閉じなければならない程の光。

 だが強過ぎた為なのか、ほんの一瞬で光は収まった。


「あー、まぶし」


 光が収まりキリカとダンケルが原因を見ると、そこには。


「なんだとっ!!」

「こんな事が」

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