第7話 ヤツの考えていた魔法は世界一ぃぃぃ!!

 ほんの数分で酔っ払い共の鎮圧は終了した。

 酔っていてもハンターの攻撃は的確で、フーライの急所に向けて多数の拳が振るわれた。

 フーライが無抵抗に拳を受けると、殴った男達が崩れ落ちた。


 同じ事を何度か繰り返すうちに、酔っ払いの頭でも攻撃はまずいと気が付いた。

 攻撃を躊躇して進むに進めない酔っ払い達は。鞘に入れられたままのキリカの刀で、刺突を鳩尾に受けて。吐くことも出来ずに崩れ落ちた。

 フーライは寝ている男達から金の入った袋を奪うと、全てを宿の主人に渡した。


「アイツ等が今夜の宿代と食事代、それと迷惑料だと言ってましたよ」

「ああ、聞こえていたぜ」


 フーライは宿に迷惑料を払わずにすみ。

 宿はあぶく銭が手に入った。


「オメーとは仲良くやっていけそうだな」

「俺もそう思いますよ」


 互いに笑みを交わすと、主人はフーライに鍵を2つ渡して去っていった。


「んじゃ、行こうか」

「先に某が借りていた部屋に向かい、置いていた荷物の回収をしましょう」


 204

 302


 鍵の部屋番号を覚えてからキリカに渡す。

 204でキリカの荷物を回収したら、その部屋の鍵を持ってフーライが、1階カウンターに返しに向かう。

 キリカは302の部屋に向かい、荷物を置いてフーライを待った。

 フーライが部屋に入ると2台あるベッドにそれぞれ座り。

 向かい合って今後についての話し合いを始める。


「今後フーライ殿は人前では収納と反射のみを使う事にしましょう。それならば空間魔法で説明が出来なくもないですから。それに鑑定能力は格上の鑑定系能力か許可を出さない限り、相手からの鑑定は不可能なはずですから。そこまで心配しなくても平気でしょう」


「わかった。俺は当然10級だがキリカは?」

「7級です」


「なら俺がキリカの下につく形でチーム登録になるな。戦闘方法はどうする?お勧めはキリカの背中に俺が必死で着いて守るだが?」


「某もそれでよいかと。ただ、移動速度には加減しますよ」

「ふっ、こいつは1本取られたな」


 その後もチームとして必要な事を確認しながら相談し、夕食までの時間を潰した。




 夕食を終えて部屋へと戻って来た。

 夕食中は料理や味の好みについてしか、話してなかったのだ。

 それぞれベッドに座り相談を再開する。


「俺なりに考えたんだけど、俺に武器はいらないかなって」

「理由を聞いても?」


「ああ。まず俺には反射がある。だから防具もそこらのハンターから絡まれない程度の物があればいい。攻撃は反射の他に魔法も使えるし、武術の能力があるから素手でも戦える。これも反射があるから、殴っても手を傷めないと思うんだよ。最後は魔法で直接殴れば強いかなって思ってね」


「いくつも穴がある理由ですが、能力を持ち成長性も見込めるのでいいかと思いますよ。それで、強奪についてですが。どうするつもりですか?」


 フーライは大きく深呼吸をしてから、真っ直ぐにキリカの目を見て話しをする。


「極悪人、敵対した悪人、魔物。基本はそれだけを対象にしようと思う。よく考えてみるとな。1番最初に反射、それから強奪って順で並んでるんだよ。つまり元々俺の能力は目覚めてなかった反射だけで。発動された強奪は反射されて、誰かから逆に強奪したんじゃないかなって。そう考えた時に怖くなった。もし俺の能力が別の一般的な能力だったら?何も知らないまま目覚める筈の能力を奪われて、初めから無能力だったと思い込んだまま死ぬまで暮らす。強奪はそいつの人生の可能性を丸々奪う、危険で最低な能力だ。だから俺は、この能力だけは自由に使ったらダメだと思ったんだ」


「フーライ殿。そこまで真剣に考えていたのですね。某はそこまで掘り下げて、考えはしませんでしたから」


「いや。これは俺が被害者になる可能性に思い至ったから、偶然考えられただけだよ」


「そう……ですか……」






「話しは変わるが、試してみたい魔法があるんだが。使って構わないか?まずは俺達以外で試すからさ」


 フーライは重くなった空気を変えるように、キリカに問いかける。


「ええどうぞ、構いませんよ。」


 許可も出たのでと、フーライは床に視線を向けると。


「洗浄」


 キリカにも何の魔法を使ったのか分かるように、声に出して魔法を使った。

 すると指定された範囲の床が、新品同様に汚れが落ちて周囲と色違いになってしまった。

 寝る前に床全体を洗浄するしかないと、フーライは諦めた。

 次に自分に洗浄を使い、服と体の汚れを消していく。


「おお、これは凄いぞ。目茶苦茶気持ちいい。なんか、スッキリする。キリカもどうだ?」

「是非とも、某にもお願いします」


 フーライがキリカに人差し指を向けると。キリカは薄い光に包まれ、歓喜の声を守らした。


「おおっ!確かにこれは凄い気持ちいいですね。夏に湯に浸かってから、頭から水を浴びた様に気持ちがいいものです」


 その後2人のベッドも洗浄し、調子に乗って部屋全体まで洗浄してから眠りについた。

 日中の疲れもあり、朝までぐっすり眠る事が出来た。

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