第6話 下から上に変われば勘違いしても仕方ないよね

「んっ、ここは。某は一体……はっ、そうだフーライ殿!?」

「ここに居るよ」

「よかった。1人で行動されては、また何か騒ぎになってしまうかと心配しました。チームを組んだ初日に、相方に居なくなられては困りますからね」


 気絶から目覚めたキリカが最初にした事は、トラブルメーカーの安否確認だった。

 キリカの言葉にフーライは反論したかったが、能力を説明下だけで相手を気絶させたのだ。

 自分の知識と常識のなさは、これでもかと自覚したばかり。

 結果、何も言えずに受け入れるしかなかった。


「それにしてもここは?宿ではないようですが……」

「外に出ればわかるよ」


 フーライは壁の一部を脆くして、蹴り飛ばすと外に出た。

 キリカもフーライに続いて外に出て、振り返ってみると。


「土のカマクラですか、はぁ……まあ、この程度なら常識の範囲内でしょうか。能力に目覚めた初日でなければ……」


 フーライはキリカの言う、土のカマクラを解除して大地に還す。

 当たり前の様に無詠唱で。


「キリカ。しばらく俺は能力を出し惜しみしながら、覚えた常識の範囲内で使っていこうと思う。だからしばらく人目のある場所では、お前に頼り切りになると思う」


 キリカは感動していた。

 さっきまであれ程、常識知らずな言動を繰り返していたのに。

 自分が気絶している間に考えて改心してくれた。

 どん底から掬い上げられた気分になり、キリカはフーライの事を見直していく。


 フーライとしては村以外の常識はなくても。良識はあるのだから長時間考えれば、辿り着く答えのはずだと思っている。

 なので背後で感動しているキリカには気付かなかった。




  

「では某と2人で各2体のウサギを背負って、ギルドに売りに行きましょう」


 フーライとキリカは山の様に収納に保存されている、ウサギの処分方法を考えた。

 答えは出たが、毎日何体かを売り続けるしかないだった。

 毎日門から出て、この場所で互いに鍛錬を続け。

 夕方を前にギルドに戻って販売する。


 フーライはチームなんだから半分貰っとけと言い。

 キリカはチームを組む前のフーライの戦果だから貰えないと断る。

 妥協案として出たのが、フーライに対しての剣の指導料として。その日売った半分の金額を受け取る事だった。


 今日は剣も何もないので。

 早々にギルドで売却し、フーライに合った武器を選ぶ予定となった。




「どれも素晴らしい切り口じゃな。これなら解体も込みで1万5千の4で、6万で買い取ろう」

「では、それでお願いします」


 ギルドの解体買い取り担当への交渉はキリカが行った。

 フーライには知識もなにもないので、これから覚えていくつもりだった。



「先に今日の宿を取りましょう。街中の野宿は、ある意味外でよりも危険ですから」


 ギルドを出て武器屋に行くのかと思ったら、予想外に宿を取ると言われる。

 フーライは何か危険なのか不明だったが、それでも先輩ハンターの言葉に従った。



 キリカの取っている宿に行くと、キリカが大柄な男に話しかける。


「主人。今借りてる部屋をツインに変更したい」

「待ちなっ!黒髪の乙女に、男が出来たなんざ認めねえ!どうしても同室に泊まりたいなら、俺を倒してからにしな!!」


 仕事が早く終わったのだろう。

 宿の食堂で酒を飲んでいたハンターらしき格好の男が、部外者なのに絡んできた。

 かなり顔を顔を赤くしているので、相当飲んでいるのだろう。

 酔っ払いに話しは通じないので、無視したかったのだが。


「そーだ、そーだ!俺達を倒してからいけ!!」


 人数が増えた事でフーライとキリカは諦め。

 酔っ払い達の対処をするかとため息をついた。

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