第5話 美少女解説キャラが常識知らずに振り回されるのは常識

「キリカ。アンタは俺が不利になる様な事や嘘を教えず、利用しようともしなかった。そんなアンタだからこそ、頼みがある。俺とハンターのチームを組んでくれないか?あっ、いや。その前に、キリカはハンターなのか?」


 慌てて考え込むフーライを前に、キリカは久しく感じていなかった喜びを思いだしていた。

 旅に出てから外見ではなく、人として求められたのは初めての経験だったからだ。


「某もハンターですよ。フーライ殿の申し出、受けましょう。貴方はどこか、放ってはおけませんから」

「ああ、ありがとう。改めてよろしく頼むよ、俺のパートナーさん」


 そう言ってフーライは、キリカに向けて右手を差し出した。

 キリカもその手を握り返しながら答える。


「キリカ・ヨウコウ。こちらこそ、よろしくお願いします」



 手を離したフーライは、早速キリカにウサギの山を収納する様に言われていた。

 首のないウサギの後ろ足を持ち上げながら、収納収納と念じる。

 すると手の中から握っていたウサギの感触が消えた。


「よっし、成功した!」

「なっ!フーライ殿。一体何をしたのですか!?」

「ん?何って……なんじゃこりゃー!」


 キリカに遅れて、事態の異常性に気付いたフーライ。

 手にしていたウサギを収納するはずが、周囲のウサギの山全てを消し去っていた。

 慌てて収納と念じながら収納内部を確認する。


「あっ、大丈夫。ウサギは全部、収納の中にあるから」

「そうではありません!離れた場所の物の収納も、収納した量も。一般的に知られている収納の能力ではありえません。これだけで強力過ぎて、誰からも狙われる原因になりえるのですよ!!」


 キリカは一般的な収納は手持ちのみが収納で。その重さも自分の体重前後までだと、懇切丁寧に説明した。

 それを聞いてフーライは気不味そうに謝罪し、余計な一言を放った。


「すまん、教えてくれて助かる。それと俺の収納はな、容量無限で中身はそのまま保存されるらしい」


 異常な能力だと思っていた収納なのに、更に上の異常があった。

 キリカは目眩を起こして転倒しかけ、両手と片膝をついてなんとか耐えた。


「おいっ、キリカ。大丈夫か?」

「某。もう何を聞いても、驚きはしない自信がありますよ」

「そっ、そうか?なら、他の能力も説明するか?」


 フーライは一度ウサギを収納した事で、能力がより自分に馴染み。感覚でその本質を理解していたのだ。

 そして収納との繋がりが強くなった事で、他の能力も理解し始めていた。


「お願いできますか。本当は、ほんとーうは。聞きたくないのですが。今ここで聞いておいて、フーライ殿の認識を正しておかなければ。後々のちのちとんでもない事態に、確実に陥りますから」

「なんか、すまんな」


 そう前置きしてから自分の能力について、キリカに説明を始める。


 反射。

 自分に対する全てのマイナス干渉を跳ね返す。


 強奪。

 相手の能力を奪える。


 鑑定。

 全ての情報を確認できる。


 武術。

 無手や全ての武器の扱いで達人を超えられる。


 魔法。

 全ての魔法が使える。独自魔法も作れる。




 心身共に鍛えてはいても、キリカはまだ16の少女だ。

 フーライの全ての能力を聞いて、その出鱈目さに圧倒され気疲れして……意識を失った。


「キリカッーーー!!」


 フーライは気絶したキリカを防壁にもたれさせると。

 各種回復魔法を使い、気絶と判断出来たので気を落ち着かせた。

 空気穴しかないトーチカを作ると。キリカを寝かせて、天井に魔法で明かりを灯して休憩する事にした。

 怒涛の展開にフーライも疲れていたからだ。

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