続かないヒーロー

苦悩の日々

庄助は苦しんでいた。悪の組織であるゴクエンに立ち向かい、その組織を抹殺することにはなったものの、それは普通の人々と見分けがつかない。これじゃあ見つけることはできないし、かといって一人一人に「あなたはゴクエンの人ですか」と聞けるわけがない。庄助は、今日何度目かわからないため息をついた。


庄助助が光の中に飲み込まれた先には、小さな小部屋だった。そして、そこには先客がいた。

そのものは、自分のことをカミエルと名乗った。そして、お茶を出してきた。

庄助は恐る恐る切り出した。

「あなたは誰ですか。後さっき何が起きたのですか?」

カミエルは話し始めた。

「私は地球を見守る神です。今地球は危機に陥っています。先日、無人島に謎の飛行船が落ちたこと、その後次々人がいなくなったことは知ってますか?」

「はい、でもそれとこれとなんの関係がー」

「それを伝えに私はきたのです。」

「あれは、宇宙からやってきた組織、ゴクエン、噂によると地球を侵略しにきたの」

「え、それってけっ」

「そう、とーーっても大変なことなの!だからあなたにたくさんの人が失踪したこととこの組織があるのか、ということを調べて、ついでにその組織のやつを殺して欲しいの」

ずいぶんさっぱりと言い切るな。しかもそんな危険なことに俺が手を出し、しかもその敵を殺せだって???

ひとまず頭の中で整理し、質問をまとめた。

「あの、色々とわからないんですけど」

「いいわよなんでもどうぞ」

「僕にその組織について調べる力はありません。第1僕は人を殺すことはしないし、できません!」

「そんなこと言ってる暇があると思ってんの?地球の危機なのよ!」

いやでも現実的にね・・・

「その点は大丈夫、あの腕輪をつけると人の力をはるかに上回る力がつくわ。」

いや、そういう問題ではない気がするんだけど・・・

「その点はわかった。でもどうやってその組織を見つけるんですか?僕は学校もあるんですけど。」

「学校のことは大丈夫。あなたは学校に通ってないことにしたわ。後家族にもあなたがいないことにしといたわ。」

「え、」

「まあつまりあなたがいたと覚えてる人がいなくなったってこと、これで安心して活動ができるわ」

「ちょっとそんなこと勝手に決めてんじゃねえよ!」

つい言葉が乱暴になった。ただ、カミエルは平然と答えた。

「じゃああなたはこの地球が滅んでもいい、と考えているってことね、いいわ、さようなら」

「ちょっちょっと待ってください!!」

「わかりました、頑張ります・・」

カミエルが初めて笑顔を見せた。

「よかった、ありがとう、じゃ、頑張ってね!」

そして消えようとしたが、思い出したようにこちらを見て付け加えた。

「あ、そうそうゴクエンのメンバーは姿形を変えられるらしいからね。まっ頑張ってー」

「ちょっえー」

カミエルは消え、自分の部屋へと戻った。慌てて時計を見たが、時間は経っていなかったようだ。

そのまま、庄助はぼーっとしていた。何が今起きたのか全くついていけてなかったのだ。

それから数時間経っただろうか、鍵が回って「お母さん」が帰ってきた。

「あっおかえりーお母さん」

お母さんは訝るような目でこちらを見た。そしてー

「あなただれ、なんでうちにいるのよ!どうやって入ったの!」

「えっちょっ」

「出て行きなさい!出て行きなさい!」

庄助は家から追い出された。慌てていたもののしっかり腕輪は握っていた。

そして、思い出した。

自分の知り合いはすでにいなくなっていたのだ、ということを。

庄助は寂しさから泣いた。一晩中泣いた。

翌朝、周りの人々の視線が気になり、庄助は人気のない路地裏へといった。

これは夢なのではないか、という期待もなくなったが、庄助は前を向いていた。まずはそのゴクエンとやらのやつを探そう。大通りに戻り、今に至る。

庄助は困り果てた。ただ、それしか方法はない。太陽が落ちるまで探した。

不思議と腹は減らなかった。これも腕輪の力なのかな。改めて腕輪の力に感心した。

それから何日も庄助は少しでも人間離れした動きをしている人がいないかを目を凝らして探した。通りを歩いている人は以前より格段に減ったが、一人一人に「あなたはゴクエンの奴ですか?」と聞くのは阿呆らしいし、それで見つかるわけがない。そして、捜索を始めて10日ほど過ぎただろうか、庄助は明らかに人間とは考えられない行動をしたものを見つけたのだ。


ゴクエンの長であるフィブルは困りはてていた。強い魔力を持った物を探し出し自分の配下に迎える旅に出、地球に無数の生命体を感じたため降りたった近くのブラジルなる国に行ったものの、魔力を一切感じない。そこ民に洗脳した民に聞いてみたところ、魔法なるものは空想上のものである、と考えていたらしい。これでは魔力がなくて当然だ。

この星にきた意味がなくなるのは嫌だったので、様々な場所をめぐり働けそうな者を洗脳して回った。




そして一年ほど経った。地球を半周するか、というところで感じたのだ。我々をも超える強い魔力を。早速部下をそのもののところに洗脳するために向かわせた。

しかし、その部下は帰ってこなかった。あらかたそのものに殺されたのだろう。フィブルは確信した。

そしてフィブル直々に向かうことにした。鳥の姿でそのものの家の前に降り立ち、姿を変えた。

無警戒だった。それをみている人が一人いた。庄助だ。庄助が口を開いた。

「お前はゴクエンのやつか?」

無警戒だったことを悔やんだが、洗脳して部下にすればいい、と思い直し、早速洗脳呪文をかけた。










そのものには洗脳呪文が効かなかった。そもそもそのものに呪文が届かなかった。(まさかこいつがとてつもない魔力を持った?)

ここにいて話を聞かれてもまずいので、フィブルは縄となり庄助に巻きつき透明になって空へと消えた。
















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悪の組織に囚われたヒーロー 宇宙人 @Utyuuzinn

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