【短編】不倫妻と間男の姉妹を引き取ることになりました。
MrR
妻と不倫相手の父親のご両親もそうとうアレである。
不倫相手の妻と夫は蒸発したらしい。
らしいと言うのは一人暮らしには広すぎる我が家でだらけてすごしてたら急に不倫した夫側と妻側の親族が頭を下げたからだ。
そして妻が産んだ中学生二人姉妹を引き連れてきた。
DNA鑑定では自分との血の繋がりはなく、不倫した相手の子供だと言う。
まあともかく縁も縁もない自分に押しつけてくるとは随分と勝手な話である。
思わず「子が子なら親も親だな」と呆れて呟いてしまった。
そう言うと相手側の親族一同は慌てて色々言ったが、要約すると「裁判沙汰だけは勘弁してくれ」、「自分達では面倒みたくないので娘達を引きとってください」と言うエグい官能小説のプロローグ(もしくは昼ドラ)を披露したのでとりあえず刑務所に入る覚悟で全員ぶん殴った。
☆
家中の物が散乱し、リビングの窓ガラスをぶち破る程の大乱闘(一方的な暴行とも言う)を繰り広げた後、近隣住民の通報で警察が来た。
相手も俺も怪我をしたが相手側が「警察沙汰は勘弁してください」と泣きを入れたので特例ながら厳重注意処分で終わった。
まあこんな理由で警察沙汰や裁判沙汰になっても社会的に死ぬのはあいつらだからな。
もうどうでもいいので慰謝料とか家の大乱闘の弁償とかは頼まず帰って引っ越しの準備を始めた。
「で、君達も本当にくんの?」
「うん――」
「行く場所ないですし・・・・・・」
姉妹の容姿は似通っていた。
ギャルと眼鏡女子だ。
どうやら育ての親の元にも親戚の元にも帰りたくないらしい。
まあ気持ちは分かる。
実質、自分のような奴に孫を売り飛ばすような連中だ。
神経いかれてるとしかおもえない。
俺は溜息をついて、義理の娘になる子たちに「回転寿司でもいこうか」と問題を先送りにした。
☆
回転寿司の帰りに警察に職質されてイライラしたので真実を明かしたら派出所に連行されたがすぐに上司の手で慌てて解放された。
どうやらもう警察内部でも有名になっていたらしい。
そんなこともあって引っ越しは諦めた。
引っ越し先でもこう言うトラブルはごめんだ。
近所付き合い?
もともとあんまりしてませんが?
噂するなら勝手にしてろ。
それよりも問題だったのは血の繋がってない娘二人だ。
低価格ギャルゲーみたいな状況であるが、手を出したくないとか、どう接すればいいのか、とかでもなく本音は面倒見んのめんどくさいけど面倒みなきゃいけないんだろうなぁとかそんなんだった。
高校にも大学にも通わせなきゃいけない。
いくらかかるっけ?
などと思っていたが――
とにかく手続きが面倒でそれどころではなかった。
衣食住はとうぜんのこと。
法律な手続きや学校への手続きとか問題が次々と湧いてくる。
なんかもうこの状況で小説にでもしたら自費出版したら実写映画化狙えそうだなとか思いながらも俺は仕事そっちのけで頑張った。
問題は不良債権の義理の娘二人だ。
とにかく一から家事、掃除、食事の方法を教える必要があった。
言っちゃ悪いが義理で血の繋がりのない他人だ。
愛したいと言う気持ちは湧かなかった。
いや、うつろヘタに愛そうと思えば逆に気色悪がられるだろうし今の子供はネットの申し子で変に知識はあるので妙に優しく接するとかえって怪しまれるのでここは突き放すようにして使用人を合法的にタダで雇ったぐらいの感覚で接するようにした。
☆
中学生姉妹との生活は変に上手く行った。
前の親の教育が厳しかったのか?
それとも自分の立場を理解しているのだろうか家事はキチンとする。
部活なども遊びもせずにまっすぐ家に帰ってくる。まあ無理に家族なりたいとも思わないし、本人達もかえって警戒するだろうからこの辺は何もいわないでおいた。
勉強は家事などをしっかりしているので多少は多めに見た。
小遣いに関しては正直どれぐらいがいいか分からないが。家事をこなした量などで決めることにした。
まあ病気とかになったら特例認めるつもりだけどな。
そうして月日は経過していくウチに――流石に情が湧いてきたのか段々と罪悪感の様な物を感じてきた。
それにどうやって接すればいいのか分からない。
相手もこのワケの分からん悪夢のような日々から脱出したいと思っている筈だ。
そんなある時だった。
姉妹のウチ、ギャルの方がイジメを受けているらしいと聞いたのは。
俺は即座に姉妹の学校行かせるのをやめておいた。
こう言う時、学校は役に立たないケースは多い。今の時代は100万円以上カツアゲされても犯罪どころかイジメとしても認定してもらえないからだ。
原因は俺達家族の関係ことだ。
こちらから乗り込んでやろうと思ったが相手側から乗り込んできて「イジメの事実はない」、「学校に通わせて欲しい」と言ってきたので遠回しに「寝言を言ってんじゃねえ」と言ったら「自分にも生活があるんですよ」とか言ってきたので思わず水をぶっかけてしまった。
あの教師たぶん「就職難だから楽になれる教師と言う名の公務員である先生になった」口だろうな。
教師とか言う超ブラック職業によく進んでなるもんだ。
とりあえずSNSでやり取りとかそう言うの全部拡散しておいた。
こうなってしまったらやるか、やられるかだ。
俺にも義理の娘にも人生があるんだよ。
☆
ごめん、やりすぎた。
まさかSNSで物凄く反響があって、ニュースに載るとは思わなかった。
学校の実名も載せてしまったのでもう学校内部はメチャクチャだろうな。
進学とか控えた三年生かわいそう(棒)。
それはそうとギャル姉だがギャルを卒業して普通の姉になった。
そして涙ながらに「どうしてそこまでしてくれるんですか?」と言ってきた。
俺は正直に「さあな。自分でもよー分からん。長く過ごしているウチに情が湧いたかもな」と返しておいた。
「それだけ?」
うん、それだけ。
「最初は面倒見るのイヤだったよ。だけど面倒行くウチに、今の突き放した関係でも、なんだかんだいいながら一生懸命過ごして・・・・・・それで子供は子供なりに必死に頑張ってるんだ。くさっても大人で保護者の自分がこんぐらいしても構わないだろ?」
などとクサい台詞をはいた。
元ギャル姉は言うと。
「その・・・・・・私達の事をどう思ってるの?」
「正直分からない。会社の社長と従業員とか家主と居候の――とにかく突き放した関係でいようと思った。下手に親しく接すると警戒されると思ったからな。それが正解なのか間違いなのかは知らん――」
「つまり、親しく接したかったの?」
「それも分からん」
そう。分からん。
人生は数学のように答えは用意されてない。
何が正解なんて分からない。
このやり取りだってそうだ。
ラノベの主人公とかならもっと上手い台詞はけるんだろうが、現実はラノベじゃないし、脚本用意されたドラマでもない。
現実なのだ。
☆
家の雰囲気は変わった。
とりあえず中学にはいかせず、家庭内学習に変わった。
元ギャル姉はオタクの妹を引っ張るようにしてよく遊びに絡んでくるようになった。
一緒にゲームやらゲームプレイ実況動画配信やら、映画観に行ったりするようになった。
外食はテストの打ち上げとかなどで定期でいくようになった。
まあ家事も勉強も頑張っているのだ。
ちゃんと貯金もしているしこれぐらいしても罰が当たらないだろう。
本当にこれがよい家族関係なのかは分からない。
ただ以前よりも義理の娘達を愛せるようになった。
娘達もよく笑うようになった。
それだけは確かだ。
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