あのとき〜後編〜
「ところで、雇っていただいたのは嬉しいんですけど…何をすれば…?」
ヒカリさんは首を傾げて悩みながら
「う〜ん、正直お客さんは滅多に来ないんだよねぇ…あ、お店の掃除かな?」
ヒカリさんはぱっとひらめいたという顔をしているが心配だ…。
「あの、それでお金は入ってるんですか…?」
「お金のことは気にしないで!この店は趣味みたいなもんだから、本業でちゃんと稼いでるよ。副業ってやつ?」
副業…ほんとうはなんの仕事をしてるんだろうと疑問を持ちながらも聞くことは出来なかった。
「そういえば君の名前を聞いてなかったね」
「あ、ムクロっていい…ます」
「ムクロちゃん!改めてうちでよろしくね!」
「よ、よろしくおねがいます…」
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働いてしばらくたった頃、急に初歩的な質問を私はヒカリさんにした。
「そういえば、この店の宝石はどこから仕入れているんですか?」
ぽかんとしながらもヒカリさんは
「え?言ってなかったか〜!これはね、ぜーんぶ僕が魔法で作ってるんだ。」
あの透き通る青色の宝石も、濁りのない透明な宝石も、全部ヒカリさんが作っていた。
魔法を得るにはなにかを代償にしなければいけない。ということは…
「多少ね、命を削っているんだ。」
やっぱり、そうだった…。ヒカリさんは宝石を作る代わりに自分の命をすり減らしていた。
「それは…あまり作らない方が…」
「んーや!僕は作るね!僕はキラキラ光っているのが大好きなんだ。物、ヒト限らずにね。」
ニコニコといつもの笑顔で。
そんな他愛のない会話が続けばよかったがそんな訳もなく、ヒカリさんと私を襲った。
なんだか外が騒がしい。私は二階の厨房をおりて様子をみた。
見ると目の前の商店から次々へと燃えていた。
「え…な、なんで…?」
唖然としていると、外へ出ていたヒカリさんが走ってきたは私の肩を掴んだ。
「ムクロちゃん!ここはもう危険だから、君は家へ帰った方がいい!」
「あ、え…?どういう、ことですか…?」
「…まぁ、良くない輩がここらに来てるんだよ。だから…」
「そ、それってこの店は…?ヒカリ…さんは
…?」
震える声で質問を持ちかけた。ヒカリさんはうつむいて、首を横に振った。
「…そうだ、ムクロちゃん、これら貰ってくれる?」
そう言ってニコッとしたヒカリさんは私にリボンと首にかけていた物をくれた。
「このネックレスはね、僕の魔法で作った宝石なんだ。…これで忘れないよね!」
「…うん…」
ヒカリさんとはそれ以上言葉は交わさずに私は施設に泣いて走った。ヒカリさん…。
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「本業の時間だね。覚悟しなよ、良くない輩共!」
焔の旅〜ムクロ〜 しゃけ @Shakenoko
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