あのとき 〜前編〜
まだ施設にいた17歳の頃、こんな左腕でも雇ってくれる店があった。それは大きな店でもない、小さい商店の一部だった。その店はキラキラとした鉱物や宝石を扱う店だった。
私は吸い込まれるように店へ入った。
入ると笑みを浮かべた店主は柔らかい声で言った。
「やぁ、いらっしゃい!」
輝いているのは宝石たちだけではない気がした。
雇って欲しい、と言う直前に
「おや?君、その腕はどうしたんだい?」
―あ…とその言葉に私は恐怖を感じていた時
「異形種族なの?素敵!僕と同じだね!」
私は店主の顔を見てきょとんとする。目を輝かせて私を見ていた。
「異形種族、周りにあんまりいなくてちょっぴり寂しかったんだよね!」
異形、種族…?
「…貴方も普通とは違うの?」
恐る恐る店主に聞く。
「うん、ほら見て」
店主は頭に巻いていたバンダナと服の袖をグイッとまくると、頭にはひし形の宝石が埋まり、腕には沢山のクリスタルが生えていた。
「こ、こんなことが…」
私は心底目を丸めた。異形というには美しすぎたからだ。
「最初はコンプレックスだったんだけどね!なんかもう吹っ切れたって言うか?」
にこにことする店主は私に聞いた。
「それで、何を買いに?」
「あ、えと、…今、一時的に雇って貰えるとこを探し、ていて…その…」
その瞬間店主は目を光らせて私に詰め寄った。
「うちは大歓迎だよ!どうかな?!」
突然のことに私は驚いたけど、その「大歓迎」の言葉には嬉しく思えたが私は用心深く
「…こんな左腕でも、いいんですか…?」
店主は少し怒った様子で私に言った。
「こんな、なんて言っちゃだめ!君の大事な腕なんだ!粗末な言い方は自分にしちゃだめなんだよ!」
と。このヒトのこの発言がどれだけ私を救ったか計り知れなかった。
「あ、僕ヒカリって言うんだ。よろしね!」
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