焔の旅〜ムクロ〜

しゃけ

〜ムクロの過去編〜


ーー私は幸せだった。両親の優しい手に包まれていた


ーはずだった。


あの日から私は絶望を与えられた。


地べたに座って人差し指で本の文字を追う。ゆっくり、ゆっくり人差し指を右に動かしていると、白く大きな羽根があった。それの正体を確認するかのように私は上を向いた。

ーそこには翼のある女がいた。


私は様子を伺う。

「あなたはだぁれ?」

「…」

女は私の質問の回答はしなかった。

「私の左腕と交換して」

ーなんだか、良くない気がする。

その瞬間女は私の左腕をギリギリと掴んだ。

「やめて、やめて!!」

そう叫んだ時には女はもういなかった。

「あ、あれ…」

部屋を見渡していると突然酷い痛みに襲われた。

「?!いたっいたい!!!!うぁっうぅっ!」

息を切らし泣きながら左腕を抱えてズルズルと倒れ込む。

抱えた手のひらを見ると抜けた羽根だらけだった。


左腕を見ると翼になっていた


「な、なん、で…?わたしの、ては…」

悲痛の声を聞きつけた父が私のいる部屋へ飛んできた。どうしたと言う前に父は私の左腕を見た。

「なんだその腕は?!」

私が事情を説明しようとした瞬間、家に来ていた父の知人が数人私の元へやって来た。

「どうした…って、なんだその腕?!」

「こいつは悪魔の子だ!!」

そう言われた私は必死に抵抗の言葉を言った

「ち、ちがうの!これはっ…」

父の知人に取り押さえられた私は助けを求めた。


父は連れていかれる私を見るだけだった。

これが最後に見た親の顔だった。

児童施設に放り込まれた私はここでも周りから「気味が悪い」「噂の悪魔だ」と。

捨てられ失い、感情と私の魂は徐々になくなり始めた。


孤独のまま20歳になった私は施設を出られることになった。名残はない。悲しみもない。


独りでいい。


ーそう思ってたけど。

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