エピローグ

 咲悠良が亡くなったのを聞いたのは、新年になってからすぐだった。

「咲悠良が……嘘だろ、年賀状と手紙をくれたけど」

 机の上に置かれた手紙を開けて、再びその手紙を読み始めた。


 龍樹へ

 たぶん、この手紙を読んでる頃には、わたしはこの世にはいないかもしれません。

 わたしは原因不明の難病で、まだ画期的な治療薬はなくて、いままでは似たような薬を使っていたけれど……

 

 難しい選択をしましたが、もし死んだら献体ということをします。

 自分と同じような病気で苦しんでいる人たちのために、役に立ちたかったからです。


 見えないけれど、あなたを近くで見守っています。

 いままで、ありがとう。

               咲悠良より


 その手紙を読んで、涙が止まらなくなった。

 君が初めてだった。

 こんなに愛しいと思ったのは。

「咲悠良、ありがとう。」

 棺で眠っていた彼女はとてもきれいで、気に入っていたという着物を着ている。

 花をたくさん入れられた棺には、クラスメイトからの寄せ書きと千羽鶴も入れられていた。

「龍樹は竹邑たけむらのこと、好きだったもんな、信じられないよ」

「でも、一瞬は両想いだったけどね」

 咲悠良に甲子園の姿を見せてあげることはできなかったけど、絶対に行ってみせる。




 三年生の夏は思ったよりも長かった。

 甲子園にようやく出場することができた。

 俺たちは三回戦敗退したけど、とても嬉しかった。

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少しだけ 須川  庚 @akatuki12

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