第4話

 六月のある日。

 わたしは入院した。

 病気の病状が悪化してしまったのだ。

 突然、発作が起きて倒れて……気がついたら、病院のベッドにいた。

「ここは……病院?」

「咲悠良! 起きた?」

「うん……ここ」

 お姉ちゃんが来ていた。

 わたしは先生からいますぐ治療を開始することを聞いた。

「いまから、病状の悪化を緩和させないと、発作が再び起きたときには助かりません……ここ数年の症状は、平均的な症状を上回るスピードで悪化しています」

 病状が悪化していて、なかなか難しい問題に直面していることはわかっていた。

 そのまま緊急入院して、治療を受けることになった。

 いままで受けた治療のなかでもつらい方だったと思う。

 でもまた学校に通いたいという思いは変わらなかったけど、治療薬の副作用にいままでの数倍も反応した。

 吐き気がすごくて、食欲も全くなくなっていた。

 それでも、少しずつだけど、だんだんと食べられるようになった。

 入院して治療して、三ヶ月。体調もよくなってきた。

 たまに病院の屋上に行ったり、近くのプレイルームで小さな子と遊んだりもしていた。高校は突然休学をしてしまい、体調が良くなってきたときに先生に連絡して、クラスメイトにもお見舞いに来てもらっていた。

咲悠良さゆら! 元気にしてた?」

「ありがとうね。まだ全然体調もよくないし、今日はいい方なの」

「咲悠良。痩せたね、突然休学したから、びっくりしたよ。まだ龍樹にも話は届いている」

「そうなの!?」

「うん、明日には来るよ」

 ドキドキしてしまう。

 たぶん龍樹は病気のことは知ってる。でもまだ話していないこともある。



 龍樹がやって来たのは、翌日の面会時間ギリギリのときで、数十分しかなかったの。

「咲悠良、大丈夫か? 病気だって、先生に聞いた」

「うん……いま、治療している。まだ学校にいたときよりも体調も悪くて、余命宣告されちゃってね」

「え……、余命宣告?」

「高校卒業できるか、できないかってくらいだって……こんな自分でも、ありがとうね」

「咲悠良、ごめん。突然こんなことを言ってもいい?」

 わたしは龍樹と向かい合う。

「好きだった。俺は野球で勝つから、咲悠良は病気に勝ってほしい」

「うちも、好きだった。ありがとう、話してくれて」

 龍樹にそっとキスをされた。

 とてもびっくりしたけど、嬉しかった。


 入院して半年が経った。

 龍樹とも順調で、わたしは少しずつ体調が悪化していた。

 そして年末。

 わたしの病状とても悪くなり、高校卒業することができないかもしれないと、話していたのを聞いてしまった。

 やっぱり、ダメなんだ……もう。

「そうだ」

 わたしは最期になるかもしれないから、手紙と年賀状を書いた。

 それを郵便ポストに看護師さんにお願いして、投函してもらうことにした。

「わかったよ、咲悠良ちゃん」

「お願いします」

 病室から看護師さんが出ると、ホッとしていた。

 そのままだんだんと眠くなって、ベッドで横になる。

 目を閉じた。
























 そのまま、わたしは十七年の人生に幕をおろした。

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