転生時会った神、ハズレだった

第1話

「こ、ここは…?」


俺は仕事中視界が暗転し、気がつくとこの真っ白な空間に立っていた。

そして一体何が起きた、ここは何処だと辺りを見回していると、いつの間にか目の前に手に書類を持った男が立っていた。男は緩慢な動きでこちらを一瞥だけすると、書類へ目線を戻しいきなりこう告げた。


「コノタビハ、こちらの不手際により貴様を殺してしまったこと、誠にモウシワケナカッタ。お詫びにチート能力を授け、異世界に転移させてやる。感謝しろ」


なんと高慢な。

頭をピクリとも下げない謝罪だった。

俺はその態度と言葉に大きな衝撃を受け、しばらく思考が停止してしまった。

再起動に数十秒かかったが、成功した。

ラノベやWeb小説で慣れ親しみ、自分自身も憧れたこのシチュエーションだが、喜ぶには現世に思い残したことや未練が多すぎた。


「…ど、どういうことだ!? 俺は死んだのか? 不手際ってなんだ、転移ってなんだ!

そんなことより生き返らせろよ!」


「貴様が知る必要もなく、我が説明する必要も無いことだ。生き返ることは規則により不可能だ。諦めたまえ」


「ハアアア?! なんだよそれ、こっちはお前のせいで死んだんだろうが!! それが謝る時の態度か、いい加減にしろ!!」


「態度を改めるべきは貴様の方だ。貴様は白髪を抜こうとした時、誤って隣の黒髪を抜いてしまった場合、その黒髪に謝罪するのか? そして抜いてしまったお詫びに美容院に行き、わざわざツヤツヤにして体の他のワキやらウデやらに移植するのか? しないだろ。だが、我はしてやった。規則だからな。全く天界のヤツらは何を考えている、なぜ我がこの様に謝罪をせねばならん」


「なっ、は、はぁぁあああ?!」


あまりの言い分に、激昂して叫び散らす。

しかし、男には暖簾に腕押し。

俺はこのままでは本当に死に、意識も消えてましまうと思い必死だった。

脅してでも生き返ろうと、男に掴みかかろうとしたが、何かに阻まれ弾き飛ばされてしまった。


「イッテ?!」


「なんだ貴様は。神である我に触れようなど不敬がすぎるぞ」


俺はまた大きな衝撃を受けた。

まさかこんな奴が神だとは思いもしなかった。こんな奴が神だと知って、とめどない不安が心の底から湧いてきた。


「か、神…様。お、俺はこれからどうなるのでしょうか」


「何だ急にしおらしくなって。安心しろ、我は規則を破らない。対談し、本人にマッチした世界に転移させることが規則となっている。対談は既に十分にした。貴様は我に掴みかかろうとするようなクソな野郎だ。クソな貴様にお似合いなケツのような世界に移植をしてやる。感謝して祈りを捧げるがよい」


「ケツ?! ま、待てやコラァァア!」


「向こうで立派なケツ毛になりたまえ」


その声を最後に視界は再び暗転し、俺はクソで拭かれてねぇケツのような、F〇CKな世界に強制転移されたのであった。


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転生時会った神、ハズレだった @Muchan10

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