第5話 横浜Z31vs庵野

「どうだった?」

「路面状況は大丈夫。空いてたよ」

 偵察してくれた本田が言った。

「ありがと」

 とボンネットから降りる。

「さて、行くか」

 とRS-Xに乗った。


「やっと来たか。新人」

「新人じゃねぇよ」

「ハッ」

 2台とも、アクセルを踏み込んでスタートした。

 500m進むと山手トンネルに入る。

 2台のエキゾースト音が響き渡る。

 少しZが前に出た。

 山手トンネルに入って1km地点。最初の左カーブに入った。

 Zはインをついて、パワースライドする。続いてRS-Xもパワースライドした。

 ストレートは置いてかれている。仕掛けるは、あの有名な魔のカーブ……!

 後ろにはギリギリついてきている本田のNSXがいる。

「大丈夫か本田?」

「まだまだぁ!」

 気付首都高3号線へ行く分岐点を過ぎた。ここから優勢になるはずだ。それとタイヤがグリップすることを祈る。

 山手トンネルから出て6Kmちょっと。あと少してあの魔のカーブ――…。


 一瞬だけトンネルに入る。

 右カーブで一瞬飛ぶ。そして左。

 車線を隔てるようにある壁が見える――…。

 Zはどっちへ入る―――…?

 俺は、グリップすることに配慮で左側に入った。

 壁の向こう側。ガシャンと追突音が窓からでも伝わった。

「まさか!?」

「止まるな庵野! まだ走るぞ!」

「はぁ!?」

 ミラーを見ると、Zはすぐそこにいた。

 ジャンプで落としたギアを上げた。「Zはどういう状況!?」

「全体的に左はボロボロだ」

 またの右カーブはノンブレーキで抜けた。

 だが、Zはまた左側を削るように曲がる。しかし、スピードは落ちなかった。


 葛西Jct手前のカーブ。Zがミラーから消えた。文字通りに。代わりに現れたのは本田のNSXだった。


 辰巳PAに入ると八九寺たちがいた。

「あれ、Zは?」

 RS-Xから降りると桐天が聞いてくる。

「事故ったよ。たぶん。ハザード炊いてたから」

 代わりに本田が答えてくれた。

「ああっ……!」

 白捩が叫んだので目線の先を見ると、横浜のZが入ってきた。

 そして目の前で止まると、

「俺は西村。さっきはすまねぇ」

 いきなりの自己紹介で脳がすぐは処理できなかったが

「おう。俺は庵野だ」

 と返した。

「なんでさっきは諦めなかった?」

 聞きたいことを聞いてみた。

「諦めきれなかった。グリップしないって思ってた。そしたら……」

「突っ込んだ。か」

 俺が言い終わると八九寺が、

「しっかし、よくドライブトレインが逝かなかったな」

のワンオフパーツだからかもしれない」

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