第4話 横浜のZ31
「リーダー、今日はミーティング?」
仕事中の昼休みにいきなりかかってきた。
「うん。どこ集合がいい?」
「庵野家でいいんじゃね?」
「じゃあ、18時に」
「了解」
と電話を切る。ちょうど、昼休みが終わる時間だ。
「みんな来るの早くない?」
「いやー、森ん家で集合してそっから飛ばしすぎちゃってさー。気づいたら一時間早く来ちゃった」
と桐天が言うと、全員えへへ…。と。
「あ、例のトレノうちで見たぞ」
いきなり思い出すように八九寺が言う。
「えっ!?」
みんな、八九寺に食い入るように見る。
「ナンバーは?」
俺はわりかし落ち着いて聞いた。
「ええっと、八潮55ふ49-721」
「それだ。なんのパーツ売った?」
「ドラシャとLSD、あとサスのコイルだ」
「コイルだけ?」
不思議に思ったことを先に白捩に言われた。
「知らねーよ。トレノ軽いから重くしようとしたんじゃね?」
「確かに。車重軽い上に派手なウィング付けれないから首都高向きじゃねぇな。八九寺のZより軽いだろ?」
本田が問う。
「でもコイルだけ変えても車重が変わるモンなの?」
桐天が率直に聞く。
「うーん。変わってもコンマじゃないかな?」
八九寺が返す。
「じゃ、八九寺は八潮のディーラーとか鈑金屋にトレノいないか聞いて。事故りまくってるはずだから。で、今日は金曜。どう言うことかわかる?」
「大黒だろ?」
「横浜のZ31を拝む」
ゴォォォォ……
「はえーなリーダー」
LINEのグループ通話で本田が言う。
「ま、チャレンジャーに負けたけどな」
「るせー森。あれは逃げたんだ」
大黒ふ頭のループに入ってPAに入った。
今日も車と人でごった返す。
「横浜らしいな。アメ車もいるじゃん?」
高速巡回仕様のデロリアン、エレノアやZ28カマロが鎮座している。
ようやく見つけた駐車スペースに止めた。70スープラの横だ。
「さて、Z31はどこだ?」
桐天が言う
「んー300ZRのフルチで純正色しか聞いたことないからなー……」
「あれ……」
ちょうど大黒PAに入ってきた一台の車に注目する。Z31だ。
ボンネットにエアスクープがないと言うことは、N/A。つまり300ZR。つまり……!?
「桐天、あれだたぶん。あれが、横浜のZ31。神出鬼没で環状線の神だ」
ちょうど、俺たちが止まっている列に入ってくる。
V6の独特の音が近づいてきて、目の前で止まった。
「てめぇ、見ねぇツラしてんな。新人か」
初対面でてめぇて。
「いえいえ。新人なんて。ベテランすよ」
「じゃあ分かってんだろ。そこは特等席だって。オラッどけよ!」
コイツ、神でもなんでもないじゃんか。なんすか。
「特等席だって。じゃあどいてやるよ」
とドアを開けて乗り込もうとした瞬間。
「ああん? なんだその口答えは!?」
ぶちぶちぶち。
「るせぇ。てめぇこそなんなんだ? 初対面でてめぇだと?」
「やめてリーダー。落ち着いて」
「この野郎、根本から叩き直すぞ」
白捩は驚いて
「えっ、バットは?」
「家」
と車に乗り込んでエンジンを吹かす。
「おい、大井スタートでC2で新木場。0時」
「あの男、何か言ってた? 頭ん中真っ白なんだが」
「私も覚えてないわよ。暴走したリーダー止めるのに必死で」
「そっかぁ……」
東京港トンネルに入る。
オレンジ色のライトがパラパラと変わり、継ぎ目がガッガッと鳴る。
「本田着いた?」
「うん。問題なし」
先に行かせた本田が答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます