第2話 ハコスカO/H

 俺はANTOJET's兼俺の自宅が近くにある塩浜入り口から首都高9号から湾岸線へ向かっていた。

 湾岸線に入ると同時に、空気が変わる。あ、またあのR34走ってる。

「ケンカ売られなきゃいいけど」

 つい先日、ケンカを売ってきたS2000がレインボーブリッジのコーナーでケツが流れていって事故った事があった。原因はノーブレーキのアクセルを抜かずに突っ込んだのだ。

「ん?」

ブォォーーン!

 と通りすぎていく86トレノ。見たことあるトレノ。

「あれが噂の……?」

 突然現れるそのトレノには誰も勝てない。速さ故に事故も多いため、サターントレノと呼ばれている。

「よし、サターンを抜く!」

 なんて思い、アクセルを踏み込んだ。

 強めの加速Gと共にタコメーターとBoostメーターが跳ね上がるが、リミッターがかかった。

 リミッターは一定の速度に入ると燃料バルブが閉まる区域。

「次会ったら、追い抜いてやる」

 一言呟き、アクセルを抜いた。


 木場出口と塩浜入口近くの住宅街にRS-Xはあった。

 助手席側のダッシュボードにあるコネクターを引っ張り出してパソコンに挿す。

 カチカチとスライドパットでポインターを動かしてリミッターを外した。

 ふと、閉まっているシャッターの向こう側から心地よい低音が聞こえる。音で分かる。直6のあのL20を極限まで引っ張った首都高仕様。

「よっ、庵野」

「おう、森。どうした? パワー落ちか?」

 森は同じ仕事場の同志である。そしてこいつはハコスカ。

「そんなとこ。お、リミッター外したんか?」

「あぁ。パワー落ちってプラグ死んだんじゃねぇの? 入れてみ」

 シャッターをガラガラガラと開け放つ。

 森がセルを回してブォォォン!と唸りをあげてガレージにあるリフトラインの中にハコスカを停めた。

「よろしくな」

 そう一言残し、森は帰っていった。

 ボンネットをガコンと開けるとキレイなエンジンルームが現れた。

 両側のボルトを外し、タワーバーを外す。

 プラグキャップを外して1本づつ抜いて確認した。問題なし。

 続いてエンジンカバーを外してタイミングチェーンを外す。コンロットも確認した。

 一通り見て大丈夫そうなので元にキッチリ戻す。まぁ、ピストンリングは替えた。

 クランクを回して印に合わせてカムシャフトとのタイミングチェーンを咬まして戻した。そしてオイルを入れ、エンジンをかけた。バッチリだ。

 森に電話した。

「やっといたぜ。今夜走っか?」

「おう、サンキュ。行こうぜ」

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