「スクライド」人生観と、それを実践するということ。
僕は気に入った作品を繰り返し鑑賞することが多い。
「スクライド」もそのひとつだ。
僕は「スクライド」を年に何回も見る。最終話だけ見ることもある。どうしてこれだけ見返すのかと言うと、僕は「スクライド」の登場人物たちの生き方が好きなのだ。
「スクライド」は生き方と死に方の物語だと、僕は思っている。アニメ版の登場人物はかなりの人数が壮絶な死を迎える。カズマの親友・君島はカズマを助ける道中で射殺され、カズマと共に敵を退けた後、カズマの背中で息を引き取る。撃たれた後には己の死に納得しているかのように、「見せつけてくれ、お前の強さを!」と心の中で叫ぶ。
君島自身は常に「カズマのように自分で道を選び、切り拓き、逃げずに生きられれば」と、カズマの生き方に憧れていた。それは次のセリフに良く表れている。
「時折よ、お前が羨ましくてしょうがねえんだ。何でそんなに決められる。何で迷わない。期待しちまうだろ。俺もお前のようになれるかもしれないって。」
最後には、自身の命を省みずにカズマの元に駆け付ける。撃たれるシーンでは、君島が銃を撃つ。
「アルター能力もないくせに、一体なにやってんだろうな、俺はよ! けどよ、俺、あいつと出会っちまったんだよな。ああ、出会っちまった。だったら、やるしかねえだろうが! それにな、こんなちんけな俺にも、すぐに諦めちまう俺にも、燻ってるもんがあるのさ! 意地があんだろ! 男の子には!」
強大な能力を持つカズマと、持たない自分。常に両者を比べてきた君島は、最後の最後にカズマのように選び、戦う道を進み、死んだ。
そして、もう一人の主人公「劉鳳」を健気に想い続けるシェリス・アジャーニの死も印象的だ。彼女の人生は自身を救い出してくれた劉鳳に対する想いに溢れている。作中、視聴者は常にそのことを実感させられてきた。
そんな彼女は、敵の本拠地で瀕死になっている劉鳳を自身の能力で助ける。ただ、シェリスの能力は少し使うだけでも体力の消耗が激しい。人ひとりを生き返らせるには自身の命を懸けるしかなかった。
最後、シェリスは「この人(劉鳳)さえいればいい。命さえ要らない」と決意し、死ぬ。
命がけの生き方を実践する登場人物たち。彼ら彼女らは何かを強く願いながら、想いながら生き、それらを叶えようとして死を選ぶ。生きること自体に意味があるのではなく、どう生きてどう死ぬかが大切であり、それを「決定する」「選ぶ」ことが人間の生きる意味なのではないか。そんな問いかけが「スクライド」にはあるように思う。
また、「スクライド」と言えば最終回が印象的なことで有名な作品だ。最終回は丸々一話を使って、カズマと劉鳳の喧嘩が描かれている。
二人は喧嘩をする中で、夢を見る。
カズマが見たのは、君島ら仲間たちと楽しく笑い合う「以前までの日常」の夢。
劉鳳が見たのは、シェリスら仲間たちと任務に明け暮れる「以前までの日常」の夢。
二人はこの夢に心地よさを感じた。
しかし、二人はこの夢を否定する。
否定した直後、二人はこう叫びながら再び喧嘩と向き合う。
カズマ「突き進む!」
劉鳳「切り拓く!」
二人は心地よい夢を否定して、前に進むことを選んだ。二人が見た夢は以前まではあり得たことだが、現在ではあり得ないものだ。その夢に浸ることは過去に浸ることであり、前に進むことにはならない。むしろ後退でしかない。
二人は責任を持って、目の前にある壁を乗り越えようとする覚悟を背負い生きている。さまざまな人の死を見、死んだ仲間が全員生きている夢を見、彼らは「自分自身に責任と覚悟を持ち、前を向いて生きる」ことを決める。
また、「スクライド」は作中で何度も主人公たちが「そう思うだろ? あんたも!」と問いかける。これは作中人物への問いかけなんだけど、僕としては自分自身に問いかけられている気もする。
二人の覚悟に満ちた生き方を見せられ、登場人物の美しい死に方を見せられ、「そう思うだろ?」と問われる。自分自身はどんな生き方をしているのか、自分自身はどう死んでいくのかを「スクライド」を見る度に、自問自答させられるのだ。
僕は二人の生き方に憧れる。
辛いことがあったとき、他の何かの所為にして諦めるのは簡単だ。挫けるのは楽だ。僕は「先輩方に愛想が尽きた」と高校演劇部の退部理由を付け、「面白くないから」と大学を辞めた。
だけど、結局のところ自分自身に起きることの原因は自分にある。大学の勉強が低レベルで面白くなく感じたのも、低レベルな大学にしか入れなかった自分の責任だ。元をただせば、大学進学という未来を捨てて受験科目を全く選択していなかった高校一年の自分の責任と言える。
現在、仕事が大変なのも、「求められなかったから」という理由で勉強をしてこなかった自分に原因がある。
結局、自分に巻き起こる不幸も幸福も原因は自分自身にある。責任を取ることができる人物は、ほかでもない自分自身しかいない。
自分自身に起きた現実をしっかり受け入れ、背負い、覚悟を持って責任を取る。
それが生きることなんだ、と僕は思う。
とはいえ、僕は自身の人生観すらも実践できていない。だからこそ「スクライド」登場人物に憧れを抱いてしまう。
そして、自身の人生観を再確認し「そう思うだろ?」と自問自答するために、僕は何度も何度も「スクライド」を見てしまうのだ。
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