とあるフリーライターの1日

 毎日適当な時間に起きる。これと言って起きる時間は決まっていない。本当はアラームを7時に鳴らしているのだ。スムーズに起きられるときは7時起きまたは7時30分起き。2度寝したときは8時起き。3度寝したときは10時起き。寝る回数で起きる時間が変わる。スッと起きればいいのに2度寝3度寝してしまうのには理由がある。

 起きたくないんだもの。起きたくないんだもの! だって、起きたくないんだもの……! ああ今日も一日始まるなあ。今日はあれしてこれして、あれ食べて……。そんなことを考えていたら起きるのが面倒になる。もっと夢を見ていたーい、と言ってしまう。「あと15分」と何の根拠もない時間を一人で告げる。結果が「夢の続きを見られるくらいの睡眠」だ。15分だと夢を見ることができない。こういうときの夢は決まって心地がいいから質が悪い。くそ、現実が夢より心地よければ!


 だけど、結局は起きる。起きなければ仕事ができないからだ。それに何よりも朝が一番腹が減るのだ。食わなければ胃酸過多で胃壁が傷つけられてしまう。だから僕は絶食をしない。食うために起きる。起きてしまったからには仕事の準備をする。

 シャワーを浴びて髭を剃り、必要に応じて眉毛を整え、歯を磨き、音楽をかける。適当に踊りながら布団を畳んで押し入れにねじこむ。ここからだ。ここからが本番だ。


 一日の仕事は推敲から始まる。前日書いた記事を推敲するのだ。推敲をすると大抵数百文字単位で文字数が少なくなる。文章を消したり追記したり順番を入れ替えたりコンテンツ自体を入れ替えたり……。推敲が終わる頃には昼飯の時間だ。昼と言っても起床時刻によっては14時を回っている。

 適当に昼食を作り、食べながら動画を見る。食後すぐは頭が回らないため食休みで動画を見る。このあたりでモチベーションが下がり始める。だるい。しんどい。頭いたい。眠い。それでも執筆しなければならないため、執筆する。

 まずは情報収集からだ。1時間くらいかけてコンテンツと構成を考えるために必要な情報を集め、書類にまとめる。そうして構成を考えたら少し休憩を挟んで執筆開始だ。

 大体1記事書き終えて2記事目の構成を考えたあたりで、晩御飯の時間になる。これまた適当に作り、食べながら動画を見て過ごす。食休みもとる。あとは2記事目の執筆をして仕事は終わり。

 後は気分に応じてここでエッセイを書いたり小説を書いたりする。寝る少し前には仕事のクオリティ向上のために勉強をする。


 あとは寝るだけだ。


 これがとあるフリーライターの1日。なんだかとても寂しい1日。「今日は何があった?」と聞かれたら「何もない素晴らしい日だった」と答えるだろう。一番困るのは久しぶりに会った友人の「最近どう?」だ。どうと言われても変わらない毎日を過ごしているため答えに困る。「ぼちぼちでんなあ」と冗談めかしたり、「いつも通り呑んだくれとるで」と答えたりする。


 一番幸せなのは夢を見ているときだ。


 こんな日々に憧れる人はいないだろうが、言っておく。


 フリーライターなんかこんなもんだ! ハッハッハ! 目指そうとは思うなよ!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る