せいへき!

 アニメのようにひらがな四文字にすれば可愛くなると思った。間違いだった。性癖という言葉を可愛く見せようとすること自体が間違いだった。そうなると思ったことも間違いだった。

 さて、これは僕の性癖の話である。

 僕には、困った性癖がひとつある。

 それは、「好きな人に殺されたい」というものだ。


 好きな人と言っても片思いではなく両思いのほうがいい。


 はじめに断っておく。僕はこの性癖に関して人に話したことはあるが、理解を求めたことは一度もない。今も理解してもらおうと思って書いているわけではない。なんとなく、そろそろ日付が変わろうとしているので性癖の話でもしてみようと思っただけだ。それにしては題材が重いことは反省している。


 そして、反省しながらも言いたい。僕は好きな人に殺されるという展開が好きだと。好きな人に殺されるというのは裏切りを想像するかもしれない。怖い展開かもしれない。だけど、僕はこう思う。

 人のためにその当人を殺せるのは愛だ、と。

 人を殺すことは普通なかなかできない。僕には憎いと思っている人間がいる。殺したいと思っているほどだ。そういう相手がいる人間は決して少なくはないだろう。僕が特別とは思えない。それでも僕はその相手を殺さないし、殺せない。そいつのために自分の人生を台無しにしようだなんて思えないからだ。懲役何年? 10年以上は確実だ。場合によっては死刑や無期懲役もありうる。

 人を殺してしまえば自分の人生まで殺してしまうことになりかねない、ということだ。


 自分の人生を犠牲にしてでも相手のために相手を殺せるというのは、これは最上級の愛情表現だと思う。だから僕は好きな人に殺される展開がたまらなく好きだ。性癖と言えるほどに。


 ただ、この性癖の本当に困ったところは創作の世界で見るだけでは物足りないところだ。


 僕は本当に好きな人に……愛し合った人に殺されたいと願っているのだから始末に負えない。それこそが最高の人生の幕の引き方なのだと思っている。

 そうは言っても相手にとっては迷惑な話だろう。実際に叶えたいと願うものの、叶えようとは全く思わない。これは人生における願望や夢などではなく、あくまでも性癖なのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る