第82話 エピローグに代えて・根室重光が片山富嶽に会うこと
「ダーリン……」
忽然と俺の前に小さな人影が現れた。
「おまえ……生きていたのか⁉」
神棚のある和室で爆散したチビ女、如斎谷の側近の小さいほう。
いきなり病室のドアが開き、半六が戻ってきたのかと思いきや、幽鬼をまとわりつかせたこいつが入ってきたのだ。
「ダーリン……いや根室ォ……」
俺を呼び捨てにしやがった。まあ怒るのはわかる。自慢の猫を意識したコスチュームはボロボロだった。
爆音と煙とともに雲散霧消した体をどう再構成したものやら、そもそもこいつは一体何なのだ?
「よくも……よくもマスターを……!」
猫が威嚇するときのように頭髪を逆立て、アニメ顔が悪鬼のように歪んだ。
指先からアシャラのものに似た爪がニョキッと突き出す。
「如斎谷は成敗されて当然のことをしたんだ! 親父、幽香を呼んでくれ!」
悪魔も裸足で逃げ出す奴の妖獣変化。説得不可能なことは一目瞭然だ。
ヒトトビとナキワスレは充電中。ベッドから動けぬ現状では、月長石を通して幽香と半六に助けを求めるしか術はない。
「キシャーッ!」
怨念に燃えた山猫が飛びかかってきた──万事休すか?
が、ふいに横合いから伸びてきた太い腕が片岡杏の首根っこを捉えた。
「こんな随身を作って……如斎谷さんも困ったものですな」
大きな女だった。伝道学院の制服を着ているので、ここの生徒らしい。
如斎谷も190近い長身女だったが、この救いの手の主はそれ以上、2メートルに達することは確実。
「ニャーッ! 離せ!」
「不憫ながら処分させてもらいます」
メキッと脊髄でも折ったかのような音がして、猫娘が事切れる。
面妖なことに大女の手の中で、杏の小躯が蒸気をあげて溶け崩れていった。
「何ともありませんね?」
スフィンクスを思わせる顔で謎の助っ人が笑いかけた。
厳つい風貌にふさわしい低音ながらも粗暴さとは程遠い柔らかな声。
「え、ええ、おかげで助かりました」
「それは良かった。偶然、医務室の近くを通りかかったものですから。ええと、あなたが埜口くんのお友達ですか?」
「はい。今月から羅刹女伝道学院の二年生になる根室重光です」
「私も
「こちらこそ……ところで知っていれば説明願いたいんですけど、そいつは人間じゃないんですか?」
すでに片岡杏は半透明の骨格だけになっていた。
「私も詳しいことは知らないんですが、如斎谷さんが言うには電随身(でんずいじん)だとか言うものだそうで」
「電随身? 神電使と同じようなものか?」
「
大きな
「とりあえず安心とは思いますが、このあたりを巡回してきますね」
「待ってくれ。その前に」
ドアを開けて病室を出ていこうとした人を俺は呼び止めた。
「あんた、いやいや、あなたの名前は?」
「
三光大明神の御意向を受けて愚昧な少女に折檻します 狛夕令 @many9tails
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます