中学の友人と冒険色した景色のなかのトロッコみたいな電車に乗って、語るけど、景色については言及しなくて、でもそんなの言わなきゃわからなかったなあとしみじみ思った、つるんと灰味がかった琥珀色の、ゆめ。

 お世話になっている、いわゆる作家仲間さんたちと会っているときだった。

 マクドナルドみたいなかたちの店内で、でもファーストフード店っぽいのはほんとうに店のかたちだけで、壁は茶色くてふかふかだし、床もくすんだ赤色でふわふわだし、狭めの構造という点を除けばなんだかリッチな感じさえもする店内だった。

 なにを頼んで食べていたのかはぼやけている。

 店の外には秋葉原のあの通りが見えたから、つまり場所は秋葉原だったんだと思う、……いつもの。


 いつも通りにいろいろと小説談議に花を咲かせたり剣を交わしたりしていると、

 中学の友人があらわれた。たまたま偶然出会ったのだった。

 えーっ、なんでいるのー、まじでー、みたいにはしゃぎまくり、なにかいろんなことをしゃべった。

 彼女とは現実でもいつもそうなんだけど、とても盛り上がり、意味も価値もある会話をたくさん交わすわりに、あとで残るのはその内容よりもずっと、話しているときの頬の火照りだ。

 お世話になってる作家さまに注意をされてしまった。「身内だけで盛り上がるな」、と。素直に謝る私と彼女は、それでもやっぱり共犯な気がした。


 そのあと店を出て、私は作家仲間さんたちとは別れた。早抜けしたのだ。そのときには、中学の友人はいなかった。

 現実ではそのようなことはほとんどないけど、きょうの夢では、そうしていた。

 私が抜けて残ったのはおふたりだけで、彼らが次に移動する喫茶店の相談をしながら秋葉原の通りを行くのを横目で眺めながら、私は、ダッシュした。


 そして私は彼女とおなじ高崎行きの電車に乗った。


 電車といってもなんだかおかしい。じっさいには乗ったことすらないけど、汽車のようだ。

 上のデッキのようなところに出ると、彼女がいて、にいっと静かに笑った。

 私も静かに苦笑などしながらデッキの上に出た。


 また、なにかを話した。

 でも、また、内容を覚えてはいない。

 ただ、なにかを話したという事実だけを、覚えている。


 汽車のような電車は、トロッコ電車のように線路をゆく。

 灰色がかった緑色、というか琥珀色のつるりとした質感のみずうみ。生い茂る濃厚なジャングル。そして、すべてを淡くぼんやりとさせる霧。

 グンマグンマーとある種秘境的な感じでネタにされがちな群馬県ではある。だが、さすがに、じっさいにはこうではない。

 じっさいの高崎線の景色も、もちろん情緒はあるけれど、こんなにも冒険のような道はゆかない。


 そんな景色のことにはたぶんなにも言及せず、かすかに覚えていることが、ゲームデザインとレベルデザインのことなどを、ゲームはやらない彼女としゃべっていたことで、私はたぶんポケモンの赤のヒトカゲのことを例として、なにかをわかってもらいたくてめちゃくちゃがんばってしゃべっていたけれど、

 でもそんな景色のことにはたぶんなにも言及せず、

 私はまくしたてるようにしゃべりつつもその景色のことずっと見てて、


 こんな、冒険色した、なにかがはじまる景色でも、

 どうでもいいくらい、彼女は馴染んでいるのかなって思って――


 でも起きてからほんのちょっとだけ思ったけど、ああ、なるほど、――私のほうだってあの景色が「きれいだね」とかたとえばひとつも言いやしなかったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゆめ日記 そのまどのそとをみたい 柳なつき @natsuki0710

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ