第97話 1万円くらいのギターってどうなの?

 よう、古城ろっくだ。今日はMAD P.O.Pのディストピアでも聴きながら語るか。

 このベース担当のMutsumiって人、もうテクに振りすぎてベースなのか何なのか分からない音出してるよな。スラップってこんな感じの音だっけ?

 いや、念のため言うけど、褒めてるつもりだよ。




 さて、今日はベースじゃなくてギターの話。……これどっかで語った気がするので、もし重複していたらゴメンって事で。

 この業界でよく言われるのが、「1万円のエレキギターってどうなの?」って話。

 昔からギターって安くても10万くらいするとか、せいぜい5万からとか言われてきたけどさ。

 それと裏腹に1万円台で買えるエレキが増えたり、そもそも1万円しない個体が出来たり、ついにはアンプやチューナーなどがセットになって1万円なんてセットまでネットで出回ったよな。

 さて、その『安くできる絡繰り』と、『ぶっちゃけそういうのって買っていいの?』って話を、僕の経験などを交えながら語ろう。

 ちなみに当然だけど、ここで語るのは僕の持論だ。なので反論も何でもお待ちしている。


 僕は高校に入った時、初めてギターを買った。ショップブランドのSTタイプで、ソフトケース付き16,800円だった記憶がある。ちなみにチューナーやストラップを付けたら2万超えた。アンプは学校のを借りてたなぁ。

 このギターなんだが、のちに調整と改造、そして度重なる修理を繰り返しながら、なんだかんだで6年も使った。

 ……と聞くと、「おお、6年も使えるんなら良いものじゃないか」と思うかもしれないが、だからと言ってこの価格帯に手を出すのは一旦待ってくれ。

 何しろ、その6年のうちに何度も修理を繰り返したあげく、結局は使い物にならなくなっているのだ。これはもう、音質がどーのこーのって次元の話じゃない。




 結論から言うと、この価格帯のギターは初心者に自信をもってお勧めすることはできない。

 理由は二つ。


 一つ目は、とても当たり外れが大きいって事。最悪の場合、最初からどうやったって調整不可能な不良品を掴まされる。

 ……というか、ここに安くする絡繰りがあるのさ。

 人件費を削減しながら生産数を増やすため、検品や調整に必要なスタッフを工程ごと削減している。そりゃ不良品も混ざるわ。

 僕の場合は、ショップ店員が自主的に検品した個体を運よく手に入れることが出来た。そしてギターに詳しい友人に再調整してもらうこともできた。

 だが、初心者には無理だ。そもそも不良品かどうかの見極めも出来ないだろう。


 最悪の場合、せっかくギターに興味を持ってくれた君を無駄に挫折させる。――この『無駄に挫折させる』ってワード、なかなか強烈だよな。

 本当はネックの歪みや回線の接触不良から引き起こされる出力不足を、多くの初心者は「自分の弾き方が悪いから」「才能がないから」と誤解するんだ。

 そんなことで諦めてほしくない。

 つーか、そりゃ弦とフレットが何ミリも離れている状態でFコードなんか押さえられるわけねーんだわ。

 ナットが1ミリでもズレた状態でピッチなんか合わないし、それで耳コピとか出来るわけねーんだわ。

 ……え?「古城ろっくの言ってることが専門的過ぎて分からない」って?

 うん。今の話について来られない人は、この価格帯のギターに手を出したり、ネットで買ったりしないほうがいいと思う。

 逆に言えば、分かる人なら『当たり個体』を選んで調整し、長持ちさせることが出来る。でもそれ、誰にでも出来るわけじゃないんだ。


 さて、二つ目の理由なんだが、普通に維持費がかかる。

 僕はさっき『安物でも修理を繰り返せば使える』と言ったけど、それって結局『修理し続けることになる』って問題とセットなんだよね。

 そのたびに部品代も修理費用もかかるんだから、いっそ高いギターを分割払いで買った方が経済的だったまである。

 まあ、高いギターにも修理費の問題は付きまとうんだけどな。普通に使っていれば滅多に壊れない反面、たまに事故って壊れると高額な修理費がかかるとかさ。




 まあ、世の中には訊ねてもいないのにいきなり表れて、初心者にマウントをとっていくおじさん(僕を含むかもしれない)がいるわけだけどさ。

 その根底にあるのは、本当はマウント取りではなく、単純に粗悪品を避けるようにとのアドバイスだったりするかもしれない。

 みんなだって、盲目の人が白杖つきながら、がけっぷちに向かって歩いていたら止めるだろ?

 僕らからしたら、ギター初心者こそが白杖ついた全盲の人に見えるわけだよ。


 さて、ところで僕は以前、こんな話もしたよな?

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890890844/episodes/1177354054893551471

 まあ、ざっくり内容をおさらいすると、「上級者に出来るのは『やっちゃだめなこと』を教えるのではなく、『やってもいいこと』を教えることじゃね?」って話だったんだが、今回の僕の話と真っ向から矛盾する。

 ――そうだよな。たしかにそうだ。

 まあ、なので失敗してもいいと思える人は、後悔の無い失敗をするためにも、やりたいようにやってみてくれ。実際それで失敗した僕が未だにこうしてギターを楽しんでいるんだから、案外これもダメではない選択肢なのかもしれない。

 ちょっと運任せだけどな。

 何があっても責任をとらない僕から言えるのはこのくらいだ。


 あ、あと安物でも当たり個体を引く方法もあってな。

 ギターに詳しい友人を連れていけ。そんでディスプレイ品を試奏させて、そのままディスプレイ品を買うんだ。「同モデルの備品をお持ちしますよ」と言われても断れ。そっちはどんな個体なのか分からん。

 え?「そんな友達いない」って?

 いやいや。誰か一人くらい、ギターに詳しい友人いるだろ?いないのか?

 ……僕?

 え、いや、僕はあんまり詳しくないから、僕より分かっている人に相談した方が――えっと、僕でいいの?

 あ、いや、えっと……不束者ですが、よ、よろです。

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