第6話 魔界到着&初めての◯◯

「何じゃこりゃ…………」


「? どうしたんですかカオス様?」


「いや、どうしたってコレ……本当に第六魔界なのか?」


 自分で転移魔法を使っておいて何を言ってるのか、と思われるだろうが、俺が住んでいた頃とまったく違うのだ。

 現在俺達は高台になっている草地から魔界のを見下ろしているのだが……、いや、この時点でおかしい。


 俺が居た頃の第六魔界と言えば、人間界でのイメージ通り、まったく手付かずの未開の地に怪物達が好き勝手に暮らしている。

 というものだったのだが今の第六魔界は、道は整備され、流れる川は澄みきっていて、田畑まである、その上綺麗な家が立ち並び、街があるではないか。


 ちなみにアイリスが俺の反応を見て不思議そうにしているのは、こいつが第一魔界しか知らないからであろう。

 別世界へゲートを繋ぐ場合は、その世界の出身者以外は強制的に第一世界、つまり天界なら第一天界、人間界なら第一人間界へと繋がる訳だ。


 よって、魔界の玄関とも呼べる第一魔界だけはかなり綺麗に整備されている。まぁ、デミゴールの意外に綺麗好きな性格のお陰でもあるが。

 先程襲ってきた幼馴染み、デミゴールは第一魔界の魔王なのだ。


 しかし、それ以外の魔界は天界や人間界に比べれば相当に遅れている、と言うか手を加えていないと言うかエコ仕様で、中でも我が第六魔界は自然そのもの、だったのだが…………。


 あ、そういえば時間…………一万年も経てば変わるに決まってるじゃん。てか、アイリスが来てから四千年経ってるんだから、人間界も様変わりしてる筈で、知り合いとかもう死んでるだろうな……いや、元々ボッチだったのか。


 いや、うん、まぁ、考えていても仕方が無い。

 とりあえずの所に行くとしよう。前と同じ場所に住んでいればいいが。


「アイリス、今から知り合いに会いに行くから、着いてきてくれる?」


「はい!」

 ギュッ!


「……あの、何で抱きつくの?」


「好きだからです!」


 うぅ、そんなキラキラした瞳で俺を見るな。


「それは嬉しいんだけど、今から会う奴はちょっとだからさ。少し離れてくれるとありがたいんだけど」


「すみません。ダメそうです」


「ダメって何故?」


「だってカオス様がするから……」

 またもや乙女顔を発動するアイリス。


 あんな事って何だ!?

 やらしい事は何もしてない筈、は!もしかしてデミゴールとの勝負を邪魔した事を怒ってるのか?


「いやごめん、つい守ってあげたくな………違う!違う違う、あれは、そう魔剣!魔剣を俺が弾いてなくしちゃったからその責任感で!」

 咄嗟に出た言い訳だけどそういえばやっちまってたな。こっちの事か!?


「そう……なんですか……」

 シュン、と俯くアイリス。


 あれ?怒ってるんじゃないのか?

「えっとアイリス? どうしたの?」


「カオス様も私の事が好きだから、助けてくれたと思ったのに……違うんですね……」


「いや、違くな、くなくなくなくなく無いよ!?」

 いや、どっちだよ俺!!!


「いいんです、気にしないで下さい。カオス様が私をどう思っていても、私はカオス様の事、大好きですから」


 うわぁ、儚い!なんて健気な笑顔なんだ!見てるだけで泣けてくる。


 しかし、どういう事だ?前だったらこんな状況、確実に殺しにくるとこだが……もしかして魔剣が無くなったから大人しくなった、とか?

 クソッ、何か確認する方法があればモヤモヤしなくて済むものを!


 ん?待てよ、何で俺は襲われ無くなったのにイラついてるんだ?

 もしかして実はドM……いやいやいや、あり得ないあり得ない!!!


「それよりも今から会いに行くお知り合いってどんな方なんですか?」

 若干しょんぼりしながらもくっついたまま聞いてくるアイリス。


「ん~一言で言えばだな、ハイエルフのマリアって奴なんだけど」


「……マリア?それってメスですか?」

 あ、ヤバい。いつものアイリスだ。柔らかな抱擁がサバ折りに切り替わって、背骨が悲鳴を上げ始めたぞ。


「違う違う!メスでもオスでも無いんだ!」


「? オカマ?」

 グギギッ!

 痛い痛い、折れるマジで!


「違う!近いけど違うから!って奴だから!」

 勿論普通のハイエルフは性別があるが、奴は特別。


 そもそもハイエルフとはエルフの上位種で色々と特徴があるのだが、とりわけ違うのが寿命。自然が有る限り生き続けると言われるハイエルフは、つまり不死者だ。


 基本的にヒッキー、森に引きこもっていてその姿を見る事自体珍しい稀少種なのだが、それゆえ数が少なく、飽きたらしい…………性的な意味で。


 そんな訳で、森を出て薬屋を営んでいたのだ。

 見返りは金では無く性交という超変態仕様、ちなみに相手は老若男女問わない。


「カオス様はふたなり好きだったんですね……」

 ベキベキベキ!!

 ヤバい逝きそう。


「俺が好きなのは巨乳で可愛い狂戦士だよ!(誰とは言ってないからな!)」


「それじゃ分かりません。名前で呼んでください」


 おっと締めつけが若干緩んだぞ。

 ……さっきから心の声が卑猥になっている気がするな。

「アイリスが好き……です」


「はぅ……エヘヘ、き、聞こえなかたからもう一回言って欲しいです」

 顔を赤くしながら言うアイリス。


 だらしなくニヤけやがって、今絶対聞こえてただろ。

「アイリスが好き!」


「ハァハァ、カオス様!私も好き!!」

 ギュッ!

 よしサバ折りは回避成功だ。


 か、勘違いするなよ!痛いのが嫌だから仕方なく言っただけで、本当に惚れてる訳じゃないんだからな!(今はまだ)


 くっ、脳内とはいえ何か屈辱的な台詞を吐いてしまった気がするぜ。恐るべき恋する乙女バーサーカーだ。


「そう言えば、キスの途中でしたね」

 思い出したように言うアイリス。


 そういえばデミゴールのせいで忘れていたが、確かにそうだったな。

 だが、今の俺にはこれも回避する口実がある。


「そうだな、でもごめん。後にしてもらえるか?」


「…………?」

 無機質な人形のようにコテンと首を傾げるアイリス。

 怖えぇぇぇよ。


「いや、ほらさっきデミゴールに邪魔された時唇を切られてさ。傷が塞がってからじゃないと血を飲ませる事になるから」

 だから後でね、と言おうとしたが、それより早くアイリスが恍惚とした表情で口を開く。


「そんな事気にしません!ウフフ、むしろ嬉しいです。カオス様の血……ハァハァ」


 何で興奮してるんだコイツは!?

 いや、近い近い近い!


「飲ませて下さい、カオス様の血……体液……ハァハァ、私の中で一つに……ハァハァ」


「ちょっ!マジで落ちつけ、って、うわぁ!?」


 ズッテ――――ン!!!

 抱きつかれた状態で頭を引けば倒れるに決まってるじゃないか、何やってるんだ俺は。


「ハァハァ、カオス様」


 ていうか状況悪化してるぞコレ!?

 地面に倒れた俺の上には依然として抱きついたままのアイリスが覆い被さり、色々と柔らかいモノが当たってるよぉ!?


 しかし、そんなToLOVEるトラブルも気にせずアイリスは顔を近づけて、

「カオス様……いただきまぁす……」

「ちょっ!待っ!?」


「はむ……ん、ちゅっ……」

「むぐぅ…………!…………!?………」


 柔らかく暖かい唇が重ね合わさり、ねっとりとした動きで舌を這わせるアイリス。


「ん……あむ…………はぁん………」

「…………」


 くっ!さすがにここまでされて黙っている程俺はチキンな魔王じゃないぜ!久方ぶりに見せてやる、俺の超絶舌技を!!!


「……ん……あ……ふあ……」

「…………」


 その後はカオスの方が積極的に唇を貪るようにキスをして、アイリスは望み通り受け身だった訳だが………。


「っ…………あ………ウフフ、カオス様ごちそうさまでした……」


 結果はこうなる→魔王は恋する乙女バーサーカーに唇を奪われた。

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魔王ですが元女勇者に好かれすぎて死にそうです。 五味葛粉 @m6397414

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