Ⅶ 屋しきの外で 一つ目の昼 ワンロ
そして、ミリモンたちはワンロのいる場所へ行った。
正直、こんなにすぐに一人見つかるとは思っていなかった。早くて10年、下手したら一生かかっても一人も見つけられないんじゃないかと思っていた。なにしろフェーバ国は広いのだ。(地球のやく150万倍)
ミリモンは、何だか命をかけて宝さがしのたびに出たのにその宝が家にあったような、そんな気分だった。
そして、ミリモンは、もう一つ想ぞうをふくらませた。
それは、ワンロにおどろいてもらうこと。
そして、心から「すごいね」と言ってくれること。
確かにワンロはミリモンにやさしい。でも――ワンロがミリモンを子どもあつかいしていることに、ミリモンはうすうすかんづいていた。
ワンロとミリモンの年の差は10さいもあるし、当ぜんといえば当ぜんなのかもしれない。でも、ミリモンは何故かワンロに一人前だとみとめてもらいたかった。それは、ワンロをとてもそんけいしていたからかもしれない。
ワンロは無口で、色々なことを知っている博士みたいな人で、でもとってもやさしくて、えがおはとっても清らかで――まさにミリモンのあこがれだったのだ。
「ついたわよ~」
ミリモンはワンナの声でハッとした。どうやら想ぞうをしながらワンロがいる場所に向かって歩いていたらしい。
ミリモンは大きく息をすって、そしてはいた。
これからミリモンががっかりするかよろこぶかは、神とワンロのみ知る――。
「じゃぁ、ノックするわよぉ~」
ワンナはいたってのんきだ。
(ぼくの気も知らないで……)
でも、よーせーくんは気づいていた。
かのじょの瞳に、なんとも言えない表情がうかんでいたからだ。悲しみとさびしさと不安と、そしてまよいと希望とが。
(なんでだろ~?)
でも、よーせーくんはそういうのをふかく考えない方なのでそのぎもんをそのままにしてしまった。
「ふぅ……」
ワンナは何故かため息をついてドアをノックした。
コンコン。
ガチャリ。
見慣れた人が出てきた。
――まちがいない、ワンロだ!
そんなミリモンのわくわくドキドキ感とはちがい、ワンロは落ちついた声で言った。
「あぁ、ワンナさん。こんにちは……」
しかしワンロのことばはとちゅうで止まり、しせんはミリモンにくぎづけになった。
「……ミリ……」
ワンロは呆然としたかおでミリモンを見つめた。ミリモンは内心大まんぞくだった。これをきたいしていたのだ。
それからワンロの目は、よーせーくんの方にもいった。もう何が何だかわからない、というかおだった。
「……とにかく、あがって下さい」
ワンロの声はいつもと同じで、でも色々な感情が混ざっていた。
(どうしたんだろう)
以前の、ミリモンの知ってるワンロは、感情をあまり表に出さなかった。なのに、今のワンロは、ころころくるくる感情が変わるばかりか、それを平然と表に出していた。
(ワンロ、変わっちゃった……)
でもここまで考えてミリモンは一つのことに気づいた。
(こうして、全てが変わっていく)
(そうだ、ぼくもよーせーくんもワンナも村も街も国も――みんな)
「ミリモーン、ぼけーてしてたー」
よーせーくんの無じゃきな声だ。ミリモンは作りわらいで返した。よーせくんはちょっぴり不安そうだった。
「ね、みんなぁ、上がろぅ~」
ワンナがそう言った。
そして、ミリモンは何とも言えない気分のまま、ワンロの家に入った。
だれかがこっそりとかくれているのも気づかずに……
夢見た小学生の断片集 柳なつき @natsuki0710
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